うめにうぐいす【補足+雑記】
先日、あぶくたったの会(横浜のわらべうた勉強会)でお話しした内容の補足
です☺️
「うぐいすの谷渡り」など、わらべうたに登場する言葉に関すること。春といえば、うぐいす、梅の花!というお話。
うぐいす|春を告げる鳥
鶯(うぐいす)の別名を『春告げ鳥(はるつげどり)』といいます。春を告げる、うつくしい言葉ですね。
最初から脱線した話なのですが、私は小説家の田辺聖子さんの大ファンでして……田辺聖子の短編小説にも『春告げ鳥』というタイトルの作品があり、いつも思い出します。
やさしい鳥のイメージに〝喪失感〟や〝とりかえしのつかない〟ような感覚を重ね合わせてくる、すごい小説です……。(ジャンル的には恋愛小説なので、歌と関係ないしあまり人前で話す機会もなく、ちょっとここに書いてみました。)
◼︎早春譜
春を告げるといっても、実際にうぐいすが鳴きだすのは〝立春〟よりももっと後、梅の花が咲いてしばらくしてから……の事なので、待ち遠しい感じがありますね。
『早春譜』( 吉丸一昌作詞、中田章作曲)のなかにも、その待ち遠しさが歌われています。
春の唱歌といえばこの歌!というイメージも強いのではないでしょうか。
NHK『みんなのうた』に取り上げられたことから、早春譜、夏は来ぬ、紅葉、冬の夜……などが、春夏秋冬の代表曲として人気が高いようです。
余談ですが、中田章さんといえば、同じく作曲家の中田喜直さんのお父さまです。
「中田喜直が〝春〟の歌をあまり生み出していないのは、春といえばお父さんの早春譜があるから、つい遠慮してしまうのだ……」っていう俗説を童謡やってる人間たちは昔からよく言うんですが🤔 実際のところどうなのかなぁ?
(ちなみに中田喜直の代表曲には、夏の思い出、ちいさい秋みつけた、雪の降るまちを…、などなど、あります。)
◼︎鳴き声は練習のたまもの
鶯といえば「ホーホケキョ」ですが、あれにはかなりの練習がいるみたいですね。春先の、おぼつかない鳴き声を聴いたことがありますか?
へたっぴな若い鳥だと「ホー、ホケッ?」「ホーー……ホヨホヨ」みたいな、ちょっと情けない声を出していることがあります。それも可愛らしい😊
春には遠慮がちだったさえずりが、夏にはけたたましいほどの声になる。そういった変化を見せる鳥だということも、おそらく日本人に愛される所以なのだと思います。
散歩中など、ぜひ耳をすませてみてください。
鶯に限らず、鳥にとって、さえずりには重要な意味があります。〝求愛〟であったり〝縄張り宣言〟であったり。そしてさえずりを練習するときは、上手い先輩=すぐれた個体、のマネを必死にするようです。
鳥だけでなく、猿も……?! 親から子へ、またはグループ内での鳴き声の伝授があったり、『歌』の受け渡しに独特の文化をもっている種がいるようです。
〝学習〟を重要視するのは人間だけではない、ということでしょうね。そして生命にとって、歌うことにはやはり意味があるんだなぁ~。
◼︎〝ホーホケキョ〟と〝谷渡り〟
野鳥の会・埼玉様のHPによると、うぐいすの鳴き声にもいくつかの種類があるようです。
「ホーホケキョ」に代表される鳴き声とは別に、
「コロコロコロコロコロコロ……ホ、ケ、ホ、ケ、ホ、ケ……」という感じの声がある。長~く続く、独特のさえずり。
あれを〝ウグイスの谷渡り〟と野鳥の会の方々は呼んでいるのだとか?! へ〜〜〜。
上記HPに解説と、美しいさえずりの音声ファイルも載せられていましたので、ぜひご覧ください✨
野鳥の会の方々が上げてくださっているyoutube動画も、いつも楽しませていただいています!
(youtubeで鳥の名前を検索すると、いろんな声の動画が出てきて、楽しいです。)
◼︎俳句と、曲芸
「鶯の谷渡り」という語句を辞書で調べると、
〝1 鶯が谷から谷へ、また、枝から枝へ鳴きながら渡ること。 また、そのときの声。 2 曲芸などで、物の一方から他方へ移ること。 また、物を一方から他方へ移すこと。〟
と出てきます。
2月のあぶくたったの会でも、私の下手なお手玉をお見せしましたが……!
なるほど、右・左・右・左……と、玉を移してみせるから「谷渡り」なのかぁ~~~と、夜中にひとりで納得してしまいました。
ちょっとしたアハ体験をしてしまいました。めっちゃ興奮した('ω')
あの遊び方は、昔、やはり町田コダーイ音楽院で大熊進子先生から教わったと思うのですが。あれが伝承の遊び方なのか、先生のオリジナルなのか? 残念ながら今となっては確認ができないのですよね……。
(お手玉はいろいろ遊んだのですが、結構、「ささにたんざく」とか「ほおずきばあさん」とか、元はお手玉じゃない唄でも、長さとテンポ感が丁度よいものを使っていることが多かったので、確証がもてないのです。)
(当時は、まさか十数年後に自分がこんなにわらべうたにハマってると思わないから……とくに確認もせずに歌ってたんだけど……あ~~~質問しときゃよかった😨)
伝承遊びかどうか、個人的にそこまでこだわってはいませんが(遊ぶ目的とねらいに合っていれば、どんどん使うべし、と思うので……)こうして人に伝えていく際には、なるべく由来を正確にお伝えしたいな、と考えています。
あぶくたったの会・資料にも掲載しましたが、俳句に関しては以下の二句が、私のお気に入りです。
「鶯」は春の季語とのこと。(でも実は地鳴き(ヂュッという目立たない声)は春になる前からあり、それは「笹鳴」といって冬の季語らしい。)
この二句はいずれも、うぐいすが薄暗いところを好んで飛行するところや、声だけ残して姿は見せず、いつの間にか遠ざかっていってしまうところを詠んでいるのだと思います。
……歌いながらお手玉してたら、いきなり頭のなかに芭蕉の句が浮かんでさ……いや〜〜たまらん、最高……。(夜中にお手玉して興奮していたという、ヤバい話。)
梅の花|うめきらぬばか
日本の国花は……いうまでもなく「桜」なのですが。わらべうたには、意外と「梅」が多く登場します。
「うめにうぐいす」というように、鶯と合わせて出てくることが多いのには、鶯という鳥が、梅の花の蜜を吸いにくるから。梅の枝から枝へと、飛び移っている姿がよく見られ、春の象徴として語られるからだそうです。
あと、門くぐりで二手に分かれる例の遊びも、「梅と桜とどっちが好き?」と聞いて遊んでいた覚えがあります。
◻︎旧正月
梅の花といえば、旧正月のアイコンでもあります。中国をはじめとして、アジア圏では旧正月を祝う文化があります。
これは暦の関係で……今では国際標準として「1/1が新年のはじまり」というカレンダーを使っていますが、国によっては長らく違う暦で生活をしていました。日本人にとっても、いまだに感覚的に、無意識に、そういった文化を根強く継承している部分があると思います。
二月に咲くはずの梅の花を、『新春』の言葉とともに正月のイメージ画にしているのは、その一例ではないでしょうか。
◻︎願はくは 花のもとにて春死なん
そもそも、現在は桜といえば「ソメイヨシノ」が代表品種ですが、染井吉野が植木職人によってつくられたのは江戸時代……日本全国に広まったのはおそらく明治以降だろうと言われています。
それまでは、桜といえば山桜を指していました。これが咲くのは、早くても三月下旬です。また、桜見物、いわゆる〝お花見〟が流行りだしたのも江戸からです。
さきほどは芭蕉たちの俳句を出しましたが、ここでは西行法師の短歌を一首、象徴的なものとして上げたいと思います。
かっこいい……好きすぎ……。
これも私が大好きな春の歌のひとつです。
如月とは二月の異名ですので、この「花」も桜ではなく梅のことではないか?と思います。
ただこれは、吉野山(桜の名所)の花見会の際につくられた短歌であるといわれるので、定かではありません。
ここで私が言いたいのは、日本人にとって、「春といえば梅の花」である時代が長かったはずじゃないか? ということです。
今の我々が日本の伝統だと思っているものは、明治以降、新体制のもとで学校教育が編まれてからの、比較的新しい文化も多いので。
……べつにね、桜が日本の国花であってもいいんだけど。文化的には梅の花もすごく大事で、注目する価値があるんだよ、ということです。
(今、春といえばすぐ桜の画像やイラストばっかり使うけどさ🤨 伝統の文様や歌には、けっこう梅の花が多い。)
……まぁ、ひな祭りの花といえば、桃の花ですし。
春を〝雪解け後〟と捉えた場合の、桃の花を特に愛でる文化もあるんですけどね……!
それも、またの機会に、記事に書けたらなぁと思います。
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