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フラムとノリッジ+プレミアリーグ1のエレベータークラブを決めたい(2本立て)

 フラムはイングランドのサッカークラブの一つだ。今期(2021ー2022)はEFLチャンピオンシップ(イングランドのプロサッカーリーグの2部相当)に所属しているが、既に2位以内が確定しており、来期は1部のプレミアリーグに昇格することが決まっている。

 ノリッジもイングランドのサッカークラブの一つだ。今期はプレミアリーグで戦っていたが、残念ながら降格が決まってしまった。来期はチャンピオンシップに所属することとなる。

 気づけばこの二つのクラブはプレミアリーグを代表するエレベータークラブとなっていた。

 フラムのここ最近の成績は

2017ー2018 チャンピオンシップ3位(昇格)

2018ー2019 プレミアリーグ19位(降格)

2019ー2020 チャンピオンシップ4位(昇格)

2020ー2021 プレミアリーグ18位(降格)

2021ー2022 チャンピオンシップ暫定1位(昇格確定)

2022ー2023 プレミアリーグ予定

と毎年昇降を繰り返している。

 一方のノリッジは

2017ー2018 チャンピオンシップ14位(残留)

2018ー2019 チャンピオンシップ1位(昇格)

2019ー2020 プレミアリーグ20位(降格)

2020ー2021 チャンピオンシップ1位(昇格)

2021ー2022 プレミアリーグ20位(降格)

2022ー2023 チャンピオンシップ予定

と毎年昇降を繰り返している。

 興味深いのはプレミアリーグに隔年で所属している両チームだが、すべて入れ違いになっており、同じリーグに所属している年を探すと2017ー2018チャンピオンシップのシーズンまで遡らなければならないということだ。(また最後にプレミアリーグで一緒だったのは2013-2014シーズンでのことであり、その年に両チームとも降格している。)

 そしてフラムとノリッジが最後に対戦したのは2018年3月30日のリーグ戦であり(結果は2-0でフラム勝利)、それから4年以上対戦していないのだ(FAカップなどのリーグ戦以外の公式戦もない)(U23や女子サッカーリーグは除く)。

 さて、第一に問題となるのは、この両チームはエレベータークラブを脱却し、プレミアリーグに定着することができるのか、ということである。

 そもそもフラムが最初にプレミアリーグに昇格したのは2001ー2002シーズンのことであり、先述した2013-2014まで残留し、それからしばらくはチャンピオンシップにいたチームである。つまりフラムのエレベータークラブとしての歴史はここ5年ほどのものである(昇格4回降格3回)。

 これに対してノリッジは1992年のプレミアリーグ創設以降、5回の昇格と6回の降格をしており、プレミアに4シーズン以上いたことはない。

 別に過去の順位が今後のクラブの予測に直結する、とはいえないものの参考になる資料ではある。

 また、ノリッジは健全経営に心がけておりプレミアリーグのクラブにしてはお金をかけないことで知られている。

2019‐2020シーズンでは1億ポンド費やしたフラムに対してノリッジは予算は2000万ポンドであるとされている。

2021‐2022シーズンでは6400万ユーロもかけたというが、やはり2018‐2019シーズンのフラムより少ない。

昇格にあたって多くのお金を使い、新しい選手を獲得しても必ずしもハマるとは限らないところが難しいところである。ノリッジは2019‐2020も2021‐2022もチャンピオンシップで優勝してプレミアリーグに臨んだ。前者は優勝メンバーで戦ったが降格、今期は前回よりも補強したが降格。

 ノリッジは健全経営ゆえに今回降格したからといってどんどん弱くなるようにはならず、定期的に昇格と降格を繰り返すと考えられるが、プレミアリーグに定着するには何かが変わらないといけないのかもしれない。

 一方のフラムにとって肝となるのは補強の成功もあるだろうがストライカーのアレクサンダル ミトロヴィッチの活躍だろう。今季チャンピオンシップで43得点を取り、セルビア代表でも活躍しているFWは2018‐2019でこそ2桁の得点を挙げたものの2020‐2021では振るわなかった。ミトロヴィチさえ活躍できればプレミアリーグに定着できるわけではないが彼の活躍が鍵になることは間違いない。

 ここまでフラムとノリッジがエレベータークラブを脱却する方法について検討した。

プレミアリーグ1のエレベータークラブを決めたい


 私が次にこの記事で取り上げたいのはプレミア1のエレベータークラブを決めたい、ということである。しかし、何人かは後半を読むのをやめた方がいいかもしれない。なぜならここから下で、私の基準でいくつかのクラブをエレベータークラブとレッテルを張り、一番エレベータークラブらしいチームを決めよう、という当該クラブのサポーターを怒らせてしまうかもしれない企画をするからである。

 さて、本題である。エレベータークラブとは上位リーグと下位リーグの昇降格を頻繁に繰り返すクラブのことを言う。そのため、①昇格の回数、②降格の回数、③同じリーグに短期間しかいない、の3つの条件を満たすことが重要である。そこで、今回はプレミアリーグができた1992年を基準としてこの3つの軸を中心に判断し、「プレミアリーグエレベータークラブランキング」を作りたいと思う。

  前提としてプレミアリーグができてから44チームのクラブがプレミアリーグとチャンピオンシップないしディヴィジョン1を行き来してきた。今回はその中で計5回以上のを繰り返した18チームに絞る。なお、回数が同じ場合はリーグ定着度が低い方を上にする。

18位 ニューカッスル・ユナイテッドFC

2回の降格と3回の昇格を経験。チャンピオンシップに2年以上連続していたことがないがプレミアリーグに15年以上定着した経験あり。日本人にとっては武藤嘉紀が所属していたことでおなじみ。プレミア準優勝の経験もあり、ランキング入りは少し意外かもしれない。

17位 ウェストハム・ユナイテッドFC

2回の降格と3回の昇格を経験。チャンピオンシップに2年以上連続していたことがあるため、プレミアに10年以上定着しているもののニューカッスルより上位となった。残留が目標の中堅のイメージがあるが、近年はヨーロッパリーグに出場するなどビッグ6を脅かす存在に。

16位 ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFC

2回の降格と3回の昇格を経験。2022-2023はプレミア5年目と、定着しつつある。近年は中国資本と代理人のポルトガルコネクションでインパクトを残している。1992年以降は1度だけ3部落ちを経験したがすぐに昇格した。

15位 シェフィールド・ユナイテッドFC

3回の降格と2回の昇格を経験。10年間2部に定着していた他、6年間3部に所属していた時期もあったがプレミアでは2年目残留を達成したことはない。現存する「ユナイテッド」を冠する最古のチーム。

14位 クイーンズ・パーク・レンジャーズFC

3回の降格と2回の昇格を経験。10年以上同じリーグに所属したことはなく、プレミアに昇格したかと思えば3部に降格するなどしている。もっとも最後にプレミアから降格してから8年間チャンピオンシップに残留しており、定着しつつある。1992年以降は総じて7回の昇降格である。

13位 ノッティンガム・フォレストFC

3回の降格と3回の昇格を経験。チャンピオンリーグの前身である国際大会で2回優勝したこともある古豪だがプレミアに5年間定着した経験はない。また、2005‐2008は3部のフットボールリーグ1で過ごした。近年は14シーズンチャンピオンシップに鎮座しており、2部リーグの代表格だ。

しかしながら、今期はチャンピオンシップで4位になり、プレーオフでハダースフィールド・タウンに勝利したことで24シーズンぶりのプレミアリーグ復帰を果たした。来期の活躍が期待される。

なお、ノッティンガム・フォレストは過去に4回、プレーオフで破れているが、プレーオフ進出自体も2010-2011以来である。ちなみに1992年から数えて総じて8回エレベーターをしている。

12位 ボルトン・ワンダーランズFC

3回の降格と3回の昇格を経験。かつては11年間プレミアリーグに鎮座したが、現在は3部リーグ所属で一時期は4部リーグまで降格していた。中田英寿などが所属していたため日本人にもお馴染み。プレミア・チャンピオンシップ間に絞らなければ1992年以降、12回も昇降格を繰り返しているイングランドサッカーリーグ屈指のエレベータークラブ。

11位 バーンリーFC

3回の降格と3回の昇格を経験。ここ6シーズンほどプレミアに定着していたが今季、ついに降格してしまった。イングランド代表GKのニックホープが所属している。1992年は4部リーグにいたが着々と成績を上げてプレミアに上り詰めた。そこから総じて9回の昇降格をしてきた。

10位 バーミンガム・シティFC

3回の降格と3回の昇格を経験。プレミアには4シーズン連続して所属していた。2005‐2012までの7シーズンで5回もプレミア・チャンピオンシップ間のエレベーターをしているが、それ以降はチャンピオンシップに定着している。1992年から総じて9回の昇降格をしてきた。

9位 ハル・シティFC

3回の降格と3回の昇格を経験。プレミア3年目を経験したことがない。1992年は3部リーグにおり、4部リーグに降格し、2003年から5年間で4部から1部まで昇格した、という怒涛の経験がある。1992年以降総じて11回の昇降格を経験。

8位 ミドルズブラ

4回の降格と3回の昇格を経験。10年以上プレミアリーグに定着した経験があり、近年はチャンピオンシップに定着してきている。降格してから1年で復帰したことと、昇格してから1年で降格したことが1回ずつあるだけである。何気に1992年以降3部降格をしておらず、ボルトンやハルシティよりも順位は上だがダイナミックなエレベーター活動はしていない。

7位 フラム

3回の降格と4回の昇格を経験。13年もプレミアリーグに定着していたが、ここ5年は毎年昇格と降格を繰り返す、というプレミア史上稀な記録を打ち立てており、これがミドルズブラより上位になった理由である。ただそれ以前はエレベータークラブのイメージはなかったといえる。1992年は3部、1996年は4部に所属、そこから5年ほどでプレミアまで上り詰めてそこから定着した経験がある。その時期のオーナーは高級百貨店ハロッズの経営者。1992年以降、総じて10回の昇降格を経験。

6位 レスター

3回の降格と4回の昇格を経験。レスターはプレミアリーグ中堅どころか代表的なエレベータークラブの一つ(エレベータークラブの例としてWikipediaに挙げられるほどに)であり、そんなチームがプレミアリーグ優勝したことは世界中を驚かせた(いわゆるミラクルレスター)。それ以後はビッグ6に次ぐプレミアリーグ強豪(?)の印象が強い。しかし10年連続プレミアどころかチャンピオンシップにも10年連続で所属したことがない。なお、3部降格は1992年以降1シーズンだけあり、それも含めると総合して9回の昇降格である。

5位 クリスタルパレス

4回の降格と4回の昇格を経験。1992ー99にかけて5回もの昇降格を繰り返し、エレベータークラブとしてよく名前も挙げられるが、2005年にプレミアリーグ降格から8年もチャンピオンシップに定着し、さらにそこから久しぶりに昇格するとプレミアリーグに10年以上定着するなど、21世紀に入ってからおよそエレベータークラブといえないような成績を残している。特に2013年プレミアリーグ昇格後は一貫して10位から15位までに入っており、プレミアリーグの中堅といえるだろう。なお、1992年以降で一度も3部に降格していない。現在の監督はパトリックヴィエラ。

4位 サンダーランド

4回の降格と4回の昇格を経験。1890ー1958までトップディビジョンに居続けた古豪であり、2部に所属しながらFAカップで優勝するなど目を離せない記録を持つ。プレミアリーグには10シーズン定着したことがある。2017ー2018シーズンでチャンピオンシップに降格すると、翌年はさらに3部のリーグ1に降格してしまうが、今期、チャンピオンシップに復帰した。1992年以降は総じて10回のエレベーター記録を有する。なおニューカッスルとライバルである。

3位 ワトフォード

4回の降格と4回の昇格を経験。1992年時は2部に所属し、一度は降格するも、数年で2部復帰し、その翌年にプレミアリーグ昇格した。その翌年は降格した。それ以後、8年間チャンピオンシップに定着すると2015年に久しぶりにプレミアリーグに復帰し、5年間定着した。なおこの5年間でFAカップを準優勝したり、リバプールの連勝記録をストップさせたりするなど伏兵的な印象がある。2019年から現在まで、3回の昇降格をしており、フラム同様、エレベータークラブとしての印象は近年のものである。1992年以降では計10回の昇降格をしているが、それ以前の記録20年ほどでは1部から4部まで幅広くエレベーターをしており、長い歴史の中では近年は安定していた方なのかもしれない。お騒がせキャラのマスコットがいる。


2位 ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンFC

 やはりプレミアリーグのエレベータークラブの代名詞(Wikipediaに書かれるほど)と言えばこのチーム、ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン、通称WBA。1878年からある、由緒正しきチームだ。

 プレミアリーグ創設以後に限れば、1992年にディヴィジョン1(現チャンピオンシップ)で2位になってから、5回のプレミアリーグ昇格と、5回の降格を経験している。そんなWBAは2010‐2018まで8シーズンもプレミアリーグに居座っており、チャンピオンシップには2シーズンまでしか連続して所属したことがない。2000年代初頭とここ数年はいわゆるエレベータークラブとして活躍しているが、プレミアリーグで定着していた時も降格ギリギリの順位である17位を2回経験しており、2004‐2005シーズンは「グレートエスケープ」と呼ばれるほどの大逆転による残留を決めている。なお、ここで注目したいのはWBAはチャンピオンシップ昇格時にはすべて自動昇格をしており、プレーオフ昇格がないことである。そして、プレミアリーグ18位やチャンピオンシップ3位など、上位下位双方から数えて3番目の順位にも縁がない他、1992年以降3部リーグに降格したこともない。

ボルトンやハルシティは3部リーグへの降格やそこからの昇格も含めてエレベーターの回数が2桁にのるのに対し、専らプレミアとチャンピオンシップの間だけで10回もの昇降格を繰り返しているのは驚異的であり、ある意味安定してしまっている。

1位 ノリッジ・シティFC

1位はやはりこのクラブ、なんと6回の降格と5回の昇格をしているのである。降格回数は単独トップ、昇格回数もWBAと並んでトップであり、ノリッジが現在のプレミアリーグ1のエレベータークラブであることに異論はないはずだ。プレミアリーグ昇格も2003、2010、2014、2018と21世紀以降満遍なく、さらに2018ー2021までで怒濤の4回の昇降格を繰り替えすなど、安定感と勢いの両方を兼ね備えている。プレミアリーグには3回までしか残留したことがない。なお2003年以前は9年ほど2部に定着していた時期がある。

クリスタルパレスが1990年代の代表的なエレベータークラブだとしたらノリッジは21世紀の代表的なエレベータークラブであり、2000年以前と以後で丁度世代交代があったように思う。

なお、ノリッジは2部で優勝して昇格した経験が三回あり、3部に降格してしまった年も、そこで優勝して2部復帰を果たしている。1992年以降では計13回の昇降格をしており、その点においてはボルトンよりも回数が多い。イングランドリーグ全体で見てもボルトンよりエレベータークラブであることがわかるだろう。

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結論

プレミアリーグ1のエレベータークラブはノリッジとなった。2位は紙一重でWBAになった。意外だったのはワトフォードが3位になったことかもしれない。私自身はここ6年ほどしかプレミアリーグを見ていないため、直近で5年以上定着されるとその印象が薄れてしまうようである。

それでは、次回は「クイズ!!アストンヴィラ?ウェストハム?バーンリー? ワインレッドと水色の戦士たち」で出会いましょう。さようなら。

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