楽しく林業する神奈川・西湘の「担い手」たち (その2)
2021年から神奈川県で「自伐(じばつ)型」という林業がさかんに聞かれるようになりました。
それは、南足柄(みなみあしがら)市という静岡県との境にある自治体が、自伐型林業の研修会を開き、その林業を志す人々が県内外から集うようになったことがきっかけです(前回の記事参照)
本当にたくさんの人が通っています。
市内の人はもちろん、「足柄(あしがら)地域」と呼ばれる小田原市、松田町、そして横浜市、厚木市、川崎市などの神奈川県東部から、さらには東京、静岡、茨城からの参加者もいました。
新しいスタイルの「自伐型林業」
ところでこの「自伐型」という耳慣れない言葉。
じばつ、ジバツ、どう字体を崩しても違和感しかない…?
一次産業の中でもマイナーな「林業」の、さらに奥深くに行ってしまう。業界アルアル。
そんなノンフレンドリーな林業にも関わらず、素人から、都市部から、他業種から、そして地元住民も関心を寄せるこの林業はどういうものなのでしょうか。専門用語をできるだけ使わず、少し紹介したいと思います。
NHKの「ビジネス特集」というコーナーで先月(2022年3月)、特集記事が組まれ、震災から自伐型林業を志す動きとともに「自伐型林業」について、こんな紹介がされていました。
大規模な林業と比較して、「小さな林業」と言われることもあります。
記事の中では、移住してきた「素人の渡辺さん」がどうして林業を本格的に始めることができたのか、について書かれています。
記事を読むのが苦手な人向けに、3分で「自伐型林業」がわかるこんな映像もあります。
「自伐型林業」は、この通り、家族程度の「少人数のグループ」で行う林業で、「兼業も視野に入れた幅広い働き方も可能で、若い世代にも広がってい」る、これまでの林業界にはあまりなかった新しいスタイルの仕事です。
神奈川に集うメンバーに話を聞くと、もっぱら山仕事に就いている人もいますが、「自分のライフスタイルに林業を取り入れたい」「世代を超えて良い山をつくっていきたい」という、林業を自分の暮らしに近づけたいという声が多くあります。
普通の「林業」と自伐型林業
では、これまでの「林業」はどんなものなのでしょうか。
林業研修の参加者の中に、林業会社を営む経営者と、森林組合に勤めていた林業者がいました。
聞けば、任された山の仕事が終わると、すぐにその現場を離れ、また違う山に行くそうです。
「公共事業」という言い方をしていましたが、国や県などが発注した仕事を引き受けて、「森林整備」を行うもの。1年から3年程度の仕事を取ってきては、こなしていく。山を転々としていくようです。
「自分が整備した山なのに、次に入ることは一度もないんですよ」と15年目のベテラン林業者はこぼしました。質より量をこなしていかなければらないので、「良い木を残していく考え方を勉強したい」と研修に参加していました。
経営者の方は、「来年取れるかわからない公共事業のために人材を雇うのもしんどい。できれば山主さんと契約して、ずっと管理させてもらうような自伐型林業をやりたい」と言っていました。
その「自伐型林業」は、山を持つ人(山林所有者)から長い期間にわたって山の整備を任される林業で、少なくとも10年、平均的には20年は山のお世話をし続けていきます。ゆくゆくは山を引き継ぐ(売買)ような流れもあります。
桜の名所で知られる奈良県の吉野地域では、江戸時代からずっと山主さんから管理を引き受ける「山守(やまもり)」という人たちもいて(契約年数はなんと無限)、山主と山守が一緒に森林を守っています。
いずれにしても、林業をする人が山でずっと仕事できて、山を荒らさないように環境を守っていくものです。
量をたくさん出すよりも、残った木の質を高めていくような林業です。国や経済界の用語を借りれば、「サスティナブル」とか「SDGs(持続可能な開発目標)」といった話題につながるものでしょう。
神奈川県よりも先に、全国ではその小さな林業「自伐型林業」が広がり、各地のフロントランナーから学べる環境もできてきています。
一緒に活動を始めた林業の「担い手」は、大規模な面積を短期間で整備するような林業というよりも、任された山を長い目で守っていくような林業を志しているようです。それが「自伐型林業」に向かう人達のようです。
(その3に続く)
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