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ミニ読書記録②『ルリボシカミキリの青』

ここ2年くらいの習慣は、朝読書。

子供たちを学校や園へ見送った後の2、30分だけだけど、私にとってはリラックスして読書に没頭できる時間で、主に近所のパン屋のテラスに座って読んでいる。(パンを買うとコーヒーが1杯50円なのだ。)ほんの少しの時間でも、毎日積み重ねるとそれなりの冊数が読めたりする。好きなものに触れ、私を静かに興奮させてくれる、心の栄養となる時間。


生物学者の福岡伸一氏のエッセイ集。代表作『生物と無生物のあいだ』を読んだ時は、その「動的平衡」という概念に驚き、私の中の生命観もダイナミックに変わったものだ。

それよりもさらに、福岡ハカセの文章に、私は長らく惚れている。

この『ルリボシカミキリの青』のプロローグには、昆虫に夢中になった福岡ハカセ自身の幼少期のエピソードが綴られている。

ルリボシカミキリの美しさ、それを創り出した自然の神秘に魅せられた福岡少年は、昆虫の世界にどっぷりと浸かっていく。

大切なのは、何かひとつ好きなことがあること、そしてその好きなことがずっと好きであり続けられることの旅路が、驚くほど豊かで、君を一瞬たりとも飽きさせることがないということ。そしてそれは静かに君を励まし続ける。最後の最後まで励まし続ける。

ルリボシカミキリは福岡ハカセのセンス・オブ・ワンダー。それが生物学者への礎となったことは想像に難くない。

「好きなものがあること」の素晴らしさを教えてくれるこの一節、その表現力に痺れた。

私には博士になれるほどの熱狂や執念は無かったけれど、好きなものが、自分の時間を豊かにするのは、大人になるにつれより強く実感している気がする。

好きなものは、感動をくれる。

心を動かされる瞬間に沢山出会えるのって幸せなことだ。

シンプルに、元気が出るしね。

「励まし続ける」って、本当に素敵な表現だ。


エピローグに出てくる建築家・伊東豊雄さんの話にも似たような文脈があり、感動した。この人は何故こんなに郷愁をくすぐる文章が上手いのか。

本文自体は色々なトピックが集められているので、気軽に読んで楽しめる一冊です。

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