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暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世:柔らかくて軽やかな手

カクヨムにて『歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世』を新規投稿しました。

あらすじ:各時代の歴史書に書かれている「フランス王シャルル七世」の評価が乱高下しすぎで面白かったので、歴史家たちのポジショントークの移り変わりをまとめました。

noteでは紹介を兼ねて、本日の更新分から一部引用します。

 シャルル七世は、軽薄な性格と娯楽好きな弱点の裏側に、聡明で堅実な根気強い精神を隠し持っていた……。

 彼は「勝利王(Victorieux)」という称号を得たが、この名は彼に仕えた将軍たちにこそふさわしい。もうひとつ、シャルル七世には「修理王(Réparateur、修復者、回復者)」という称号があり、こちらの栄光はあまり目立たない。

 タキトゥスの言葉にあるように、「治療は病むよりも時間がかかる」のだ。

 怠惰と享楽的な趣味(plaisirs)は、シャルル七世の生来の性質で、彼の力をさらに鈍らせたが、彼の知恵によってもたらされた連続的な利益を妨げることはなかった。

 つまり、シャルル七世の軽薄さは思慮深さと表裏一体で、役に立った。

------(中略)------

 シャルル七世の手は、柔らかくて軽やかだった。
 そのため、この王はほとんど何もしていないと考えられてきた。
 しかし、シャルル七世の手は、いたるところの傷に触れた。

19世紀初頭(3)ヴィルマン「柔らかく軽やかな手」 - 歴史家たちのポジショントーク:暗君か名君か、矛盾だらけのシャルル七世(しんの(C.Clarté)) - カクヨム


アベル=フランソワ・ヴィルマンのいう「シャルル七世の手は、柔らかくて軽やかだった」について。おそらくダブルミーニングを意図しているので、言葉のニュアンスを補足すると、こんな感じでしょうか。

  • douce:柔らかい、静か、優しい、甘い、落ち着いている

  • légère:軽い、軽やか、人当たりが良い、手先が器用

手に関する物理的な描写であると同時に、比喩的な「癒し手」を意味しているのではないかと。

シャルル七世の「手」が王国を引き裂いたあらゆる傷に触れて癒やすとしたら。
リッシュモンは、王の手を支えるために尽力するのだろうな。
少なくとも、拙作『7番目のシャルル』ではそういう世界観、そういう主従関係です。


続きはカクヨムにて。

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自著の紹介

既刊:デュマ・フィスの未邦訳小説『トリスタン・ル・ルー』

2022年10月21日、シャルル七世即位600周年記念にリリースしました。
Kindle版(電子書籍)とペーパーバック版があります。

新刊:『十九世紀の異端科学者はかく語る』

ジョン・ラボック著『The Pleasures of Life』第一部を翻訳・書籍化しました。訳者・序文で「ダーウィンとラボックの師弟関係」を書き下ろし。

web小説『7番目のシャルル』シリーズ

シャルル七世が主人公の小説(少年期編青年期編)連載中。

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