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神戸市王子公園再整備計画について

 1月16日、神戸市立王子動物園の動物園ホールで開催された市民ミーティングのフリートークの時間の最後に発言権を与えていただいたのはわたしです。

 司会の方の視線の動きから、ほかにも発言を希望されていた方がたくさんいらっしゃったと想像していました。そのような中、大阪から参加したわたしに貴重な機会を与えていただき、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。

 神戸の人のための集まりだから、と、当初は発言しないつもりでいましたが、みなさんのご意見を聞くうちに「話したい!」という欲求が湧き上がり、いてもたってもいられずに挙手するに至りました。

 ひとりあたりの持ち時間は2分、定められた時刻には集会を終えホールを退去していなければならない、ということだったので、時間内で発言が終えられるよう、急遽その場でスマートフォンにまとめたものを読み上げました。

 もとになったメモは次のとおりです。

 昨年1月の神戸新聞の記事をネットで読んで、寝耳に水どころか寝耳に熱湯でした。
 再整備コンセプトにある「グローバル貢献都市」とは誰に、なにを、どのように、貢献するのか。動物園の中の遊園地をなくして駐車場にして、となりに大学ができて、アメフトの聖地になることが、神戸市にお住まいの、誰に、なにを、どのように、貢献するつもりなのか。まったくわかりません。
 遊園地がなくなることは、京阪神沿線にお住まいの小さなお子さんがいらっしゃる世帯にまったく寄与しない。園内の遊園地は広い動物園の中を歩いたあと、保護者の方が唯一お子さんから手を放してゆっくり出来る場所ではなかったでしょうか。
 動物園動物について考えると、動物園の面積が1.1ヘクタール(11000平方メートル)狭くなることも、立体駐車場や大学ができることも、動物の福祉にはなにも寄与しない。
 動物園に来たついでに遊園地であそぶ、動物に関心がなくても遊園地があるから遊びにくる、なくすのではなく、相互の作用を強めていく努力をすべきです。
 また動物を見せることだけで集客しようとすると、珍しい動物を集める、長く人の前に出す、動物に何かさせる、など、動物に負担をかけるしかなくなります。なので、今では世界の動物園で、遊戯施設や映画館、宿泊施設を併設したり、先程の(メイントークで)おはなしにあったゾウ舎の前でカレーを食べるような園内イベントなど、手を変え品を変え、さまざまな工夫をして人々に関心を向け続けてもらう努力がずっと行われています。動物園だけポツンとあってもダメなんです。
 グローバルを目指すなら、王子動物園を世界に名だたるリーディング・ズー(日本の動物園や世界の動物園を牽引していく動物園)にすることを目指すべきです。狭くすることじゃない。敷地内の遊園地をなくして立体駐車場を作ることじゃない。
 この計画を聞いていろいろモヤモヤする一方で、新しい計画が目の前に現れたいま、これは市民のみなさんにとって、すごいチャンスではないかと思います。
 動物園や図書館はじめ公営の施設や設備は、民間でできないものを公共が負担しているのであって、公共ができないものを民間に払い下げるのは本末転倒です。
 この再整備案が、みなさんが寄せている関心によって、後の世に「あのときの神戸から日本の動物園がかわった」と評価されるような変化になっていくことを心より期待しています。

2022年1月16日   市民ミーティングでの筆者の発言

王子公園再整備基本方針(素案) 令和3年12月 神戸市

 となりに大学を誘致することや遊園地をなくすことが決定事項だったり、遊園地の跡地に立体駐車場ができることになってたり、「アメフトの聖地」なにそれ?王子公園にアメフト必要?と頭をかしげていたら、なにを思われたのか昨年11月には神戸市長が「(8年前の就任時に動物園を訪れたとき)私の関心は動物ではなく」とツイートされたりで、腹立たしいやら呆れかえるやらで、非常にモヤモヤイライラしますが、16日の市民ミーティングでの発言の最後に申し上げた通り、これは市民のみなさんにとってはチャンスです。
 公立動物園のリニューアルに、近隣に住んでいる市民が立ち会える機会が目の前にあるということは、大変なチャンスなのです。

 動物園水族館は人のため設置された、人が運営する施設です。

  一度施設や設備を作ると、数十年は同じ設備を使います。施設全体を変える計画は多額の費用と大変な労力がかかります。一度出来上がるとそれがどんなものであっても、老朽化するまで使うしかありません。動物園の中で働く人たちには完成した設備を大きく変える力はありません。またそこに置かれた動物たちは生きる場所を選ぶことはできません。 

 戦後、日本各地で自治体が「市民のために」と動物園を設置しました。当時の動物園動物は「野生で生きる動物を捕まえて、対価を支払い買う」ものでした。動物園に売るために捕まえられる動物は子どもです。たくさんの幼い動物を、親や仲間、環境から引き剥がし、人にみせるために、自分たちが楽しむために、動物にとってはまったくしあわせとはいえない状態で、長いあいだ動物園に閉じ込めてきました。

 このような歴史の上に、今の動物園があり、わたしたちがいます。

 わたしたちが望むか否かにかかわらず、動物園で生きる彼らに関わった以上、わたしたちは彼らに対して責任があります。その責任を果たすには、経験や知見を積み重ね、飼育下にいる彼らや、環境中にいる彼らの仲間に可能な限り負担をかけないよう努めなければなりません。
 彼らと、彼らの仲間が生きる環境に、これまでうけた恩義を返し続けることは、長く環境から搾取を続けてきたわたしたちに課せられた義務なのだと、わたしは考えます。

 これまで、ただただ見て楽しむだけの存在だった動物園が、リニューアルの機会を迎えた今、神戸にお住まいのみなさんが寄せた大きな感心によって少し向かう角度がかわるだけで、「あの時の神戸から日本の動物園がかわった!」と歴史に評価される変化になるのではないかと、これまでの動物園の変化を見守り続けてきた経験から、ほのかに感じています。

 王子動物園を、これからの日本の動物園を牽引する動物園に、そして国際都市・神戸にふさわしい「世界に名だたる動物園」にするために、感心をよせつづけ、知恵と力をあわせて、よい動物園(Good Zoo)にしましょう。

 わたしは、神戸のみなさんの「誇り高さ」を信じています。

王子公園、王子動物園のこれからをみんなで考えるため力を貸してください!!

最後に、筆者に対して「あなた、いったいだれ?」な気持ちのみなさまへ、自己紹介として著書を紹介します。「立ち読み」できます。

どうぶつえんにいこう」 福武忍著 村田浩一監修 文溪堂


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