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細胞魚

わがままはすてきだ。

夫婦仲が良い。
シュッとわたしが仕事から帰ってくると、在宅の夫とともに近所のスーパーに買い物にゆく。

そのときの話題は多岐にわたるのだが、
その日の話題はなにがそうなったのだったか、
「猫の美点は、思い通りにならないところにある」
とわたしが言ったことにはじまった。

ああそうだった、歩いていると自転車の前かごにかわいい柴犬をちょこんと乗せて、おじさんがわたしたちの横を走り抜けていったからだった。

「いつもふしぎに思うのだけれど、犬ってよくあんなにカゴやカートの中でじっとしてるよなあ。猫だったらああはいかない。さっさと飛び出してしまう。そこが猫のいいところなんだけど」
からはじまったのだ。

「美点はひとによっては欠点にもなる。
なにごとにも裏表はあり、ある角度からみると欠点が、ある角度からみると長所になる」
と夫。哲学者のようですが、まるきり理系です。

「猫のそれは美点だ!」
といきりたつわたし。

「きみは、もしかして猫好きですね」

「・・・はい。」

「猫が好きではないひとにとっては、それは欠点です」

そうなんだよなあ。

もう25年いじょうまえになるが、
当時アメリカ人の男とつきあっていて、
その彼は「相性があわない」という日本人の奥さんと別居状態だった。

なんとか「アメリカ人として」理性的でいようと努力していて
(いや、理性じゃなくて人間て感情、感性でドライブされてる部分あるのにさ)
非の打ちどころのない奥さんと納得の上で別れようとしていて
傍からみると、奥さんは絶対別れそうにないのに
いつまでも平行線たどっていて。

悪者にならなきゃ絶対別れられないよ、
そもそも、間違えてつきあいはじめちゃって
別れようとしたのに奥さんが絶対納得しない、
「努力すればなんとかなる」
と信じてるひとだから逃げられなかったんだと。

理性的になろうとして、あれこれリクツつけようとしてたけど
このひとは、生理的、感情的に奥さん好きじゃないんだなーと感じてた。
責任とか理性とかにこだわってて。
ま、結局煮え切らん男に愛想つかして、
またわたしやわたしの子どもへの態度みて
かれはわたしと一緒になったら幸せになれる気がする、と言ってたけど
わたしは「彼と一緒になっても、わたしもわたしの子どもも幸せになれんだろなー」と思ってたところに彗星のごとくいまの夫が現れたわけで。

それは兎も角、
その彼とつきあってる当時に
「あんたはワガママだからいい」
と言われたことがある。

かれの非の打ちどころのない奥さんは
かれの好きな食べ物を用意するし、
常にかれをたて、一緒にいるときに友人から電話がかかってくると彼への配慮から、そうそうに電話を切るという。

「それが気づまりだ」
とかれは言う。

かれは料理もするし、独立した人間同士として、お互い好きなことをするのが当たり前。変に気を使われるのがむしろ疲れる、と。

ちょっと~、それって日本人にとっては妻の鑑みたいなひとなんだけど~、とわたしは思った。

でも、国や文化によるけど、自分の主張、好き嫌いがハッキリしている女性のほうが魅力的ってとこあるよねえ。

日本が好きでやってくる外国人は、日本女性らしい女性が好きなひとも多いが、うちの夫は「自分の主張がないからおもしろくない」らしい。

日本人にとっては個性や主張が強すぎるわたしはあかんやろけど、そこは救う神ありですね。

て、またノロケになってしまった。

で、題はなんだって?

「わがまま」=Selfish= Cell fish=細胞魚、になりました。

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