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【詩】朝の手紙

(はじめに)

 令和 5年度に募集が行われました『第32回
岐阜県文芸祭・詩部門』にて入選をいただき
ました作品になります。こちらは去る3月2日
に表彰式が開催され、それまでは SNSを含め
作品の発表を控えていただきたいとの連絡を
受けておりました。ちなみに、入選と言いま
しても賞の順番では、文芸大賞、優秀賞、U-
30優秀賞、秀作賞、佳作、入選となっており
まして、かろうじて最後に引っ掛かってくれ
たかなと思っております。

………・………・………・………・………・………・………


 朝の手紙

窓から差し込む
朝の陽光を含ませ巻いた
卵焼きが冷めるのを待つあいだ
(ご飯を食べる)
食べる人の笑顔を浮かべながら作る
弁当に
特別手当てなどない
限られた時間の中での手作業から
伝えられるものは何だろう
白米に込めた思いは
永遠に
思いのまま
特別ではないけれど
あなたのこころに残って欲しい

物言わぬ
弁当箱のスペースに詰めるのは
あなたの好きな
ほんのり甘い卵焼き
少しずつ色を変える副菜は
からだのバランスを考えての配置
持っていってください
あなたが家を出る際に
持っていってください
あなたの胸裏を温め続けてくれる人の
名字に変わろうとするときに
わたしが小さな弁当箱に託している言葉を
すべてそのまま



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    イラストお借りいたしました
 あたたかい色合いをありがとうございます

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(ちょっとだけ解説)

 弁当をつくる作業は普通と思う方もいらっ
しゃるかも知れません。ですが、朝のいろい
ろな感情を抱えながら献立を考え、つくり続
けるのは大変です。継続することは、あんが
い大変なのです。 3月は旅立ちの季節です、
弁当づくりから卒業された方もおられます。
「ほんとうに、お疲れさまでした!」
 この作品は、娘のためにつくるという設定
で書かせてもらいました。「朝の手紙」と題
をつけましたのは、手紙はこころの分身です。
大概はおくる相手の幸せな顔を浮かべながら
書くと思いますが、出す側も、どこか救われ
たい気持ちを含んでいるのだと思います。

 おや、娘から返信が届きました。

……・……・……・……・……・……・……・……・……

  どこまでも 透明な
  母のやさしさに触れたから
  3月1日 弥生の空を
  わたしはきっと忘れない 

……・……・……・……・……・……・……・……・……
      


 お読みくださいまして、ありがとうござい
ました。


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