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【展覧会レポ】#15 「デザインすること」が「生きる工夫と知恵」 | 魔除け展 @文化学園服飾博物館 | 2023.12.9-2024.2.14

こんにちは!Webデザイナーのしいのきです。

訪問した展覧会の感想をnoteにまとめている「展覧会レポート」

今回は第15回目、
2024年1月20日に見に行きました、新宿西口方面にある「文化学園服飾博物館」の「魔除け展」についての感想をレポしていきます。

当初は思っても見なかったのですが、
意外にも物凄くデザインについて考えさせられることが多く、
ぜひ言語化しておきたいと思ったので今回は長くなりそうです。。😂

写真がNGだったので、
Xのポストで雰囲気を想像していただければと思います。


チラシはこちら



| 01 「魔除け」ってなに?


私はUFOとかは信じる方なのですが、
怖いものが苦手で・・
こういうオカルトチックなものからは遠ざかってまして、

「魔除け」って何。「魔」って何?
からのスタートでした。

要するに、科学の知識がない時代は「病」や「死」などの目に見えない厄いは全て「邪悪なもののせいだ」と信じられ、厳しい環境で暮らす人々にとって厄いを退けて身を守ることは即ち「生きること」だったようです。

今回の展示は南アジア、西アジアなどの風習が多かったのですが、どの国でも根底にあるのは「不安」や「恐れ」

そして目に見えないものから自分と家族を守る為の強い想いが
装飾に表現されていると感じられました。

今だからこそ猛威をふるったあのウイルスの厄災のことを私たちは理解できますが、当初訳がわからないうちは皆怖がっていたと思います。

それがもう何百年も前だと思うとそりゃあ「何か悪いものの仕業だ」と思うだろうなぁと容易に想像できました。



| 02 意味のないデザインがない


面白いと思ったのは「意味の無いデザインがない」こと。

ぼーっと見ているとただの幾何学模様の寄せ集めに見えますが、
よく考えると

生きることが死に近い古の人々が思いつきで直観的なデザインをするかな?

と疑問がよぎり、

時代が古ければ古いほど、厄災が即「死」を意味し、それは抗う事のできない恐ろしい呪いのようにも感じられ、不安の中で生きていた人々にとって「デザインすること」は「生きる工夫と知恵」だったのだと感じました。

逆に言えば「意味のないデザイン」が許される今の時代は
「死」から遠い平和な時代だといえるのかもと。

全てのモチーフに「意味がある」と気づくととても面白くなってきたので、
次からはそのモチーフについて考察していきます。



| 03 モチーフの考察


目に見えない「邪悪」なものに怯える当時の人々にとっては「獰猛な動物」も避けるべき対象でした。

そのためキラキラ光るものは動物が嫌がるため、
邪悪なものも光るものが苦手とされていたようです。

インドの装飾には鏡が縫い付けられた衣装が多く、光る物や音のなるもの、匂いがきついもの(にんにくなど)を身につけることで災いをもたらす邪悪を退けると信じられていました。

そのように色々な国の装飾を見ていると、
共通しているものが見えてきました。

「三角」
「威圧的な柄」
「赤いもの」
「線」

「三角」


三角
などの「先の尖ったもの」を悪が嫌うとされていて、
様々な国で三角が並んだモチーフの刺繍を見ることができました。

基本的に「丸」「四角」の柄はなく、三角がほとんどでした。


「威圧的な柄」

雲のようなものが襲いかかってくるなどの「威圧感のあるデザイン」ですが、そういう柄を死角である背中や首元に用いて後ろからの驚異に備えていたようです。


「赤いもの」

「赤」という色が「太陽」や「炎」といった自然界の強いものをイメージする色ということで、様々な国で「赤」は魔除けの色や縁起の良い色として扱われていました。

「線」

櫛などの歯が多い(尖ったものが多い)ものは魔を避けるとされていて、櫛をモチーフにした線のデザインやあしらいがよく見られました。


民族衣装はこれらの「魔を避けるとされているモチーフの集合」で、
ただの柄の寄せ集めではないということが自分としては凄く大きな発見でした。

最初に思った疑問に戻るのですが、生きることが死に近い時代の人たちがそんな意味のない柄の寄せ集めなんか作る訳がないですよね。
そんな暇ないですもんね。。

誰かのためを思って何かを作るときに、
少しでもその人の身を案じてお守りのような気持ちで魔除けのモチーフを入れていたのだと想像すると、とても心が温かい気持ちになりました。




| 04 「邪視」という俗信


南アジア西アジア北アフリカには
邪視」という俗信があるそうです。

これがとても面白い考え方だなと思ったので備忘です。

「邪視」とは、羨望や嫉妬など人や物に向けられると災いがおこると言われている邪悪な力が備わった眼差しのことです。

自分の死角となる背中や首などから邪視を退けるために
首を隠すための長いしっぽがついた帽子や
背中部分に威圧的な柄を刺繍した服などを着ていたそうです。

今でもこういうのってあるな〜と思うのですが、
「羨望」や「嫉妬」の視線って、真っ向からじゃなくて後ろとか自分の死角から向けられる視線だと思うんです。

その視線自体が災いを起こすわけではもちろんないと思うけど、
マイナスの感情を向けられていることは確かで、なんかそれって考えただけで気が重くなりますよね😂

私が金髪にしたり青い髪にしたりしていることが、もしかしたら自分の見えないところから見られている時に「あ、この人は違う世界に生きてる人だったわ」ってマイナスな感情の外側に置いてもらえるなら、それもいわゆる邪視避け(魔除け)になっているのかもw

などと考えるとにやけました。



| 05 それぞれの吉兆


ここからは特徴的なモチーフについて見ていきたいと思います。

「百歩蛇」

百歩蛇とは、噛まれれば100歩も歩けないうちに絶命するほどの毒を持つ蛇のことです。(台湾や中国に生存)

強い動物を装飾することで、魔を退けると信じられている国もありました。

時折見られる菱形の模様は百歩蛇の背中の模様を表しているそうです。

「ひゃっぽだ」って言葉がなんか気に入って。

「青」

砂漠地帯に住む遊牧民には「水」を連想させる青が縁起のいい色とされています。

頭に水瓶を持って長い距離を移動する人々にとって、その道中の安全は死活問題なため、縁起が良いとされるブルーのターコイズ石を配した頭飾りなどが見られました。

砂漠などの厳しい環境で暮らす人々にとっては火よりも水の方が信仰する対象になるようです。



| 06 まとめ


こうして見てみると装身具は「魔よけ」や「護符」の役割を果たしており、「なんか素敵だから」という理由で配された模様やデザインではなかったことが分かりました。

三角の幾何学模様、沢山配された線、うねる蛇の柄、シャラシャラとぶつかり合う鏡の装飾、それら全てに自分と家族を守るための想いが込められていました。

目に見えない謎の現象を退け、
災厄から身を守るため、生きるために工夫されたデザイン。魔よけだけではなく、子供の無事を願った「吉兆のシンボル」を配した装飾品も沢山ありました。

古に遡れば遡るほど、
「意味のあるデザイン」という言葉がしっくりときます。


私もよく先輩に「このデザインにした意味を教えて?」と聞かれます。
(有り難いことです🙏)

生きるための装飾とまでは言いませんが、
何かしらの目的があってデザインという手段をとったはずです。
三角にした意味があるはずなんです。

それらは全然難しいことではなく必然なのだと、
とてもシンプルなことかもしれないという考えにいたることができました。




デザインに至る根底の理由は「不安」や「恐れ」で、
その力は偉大だなとも思いました。

不安や恐れから生まれるデザイン。

あらゆる方法で退けようとしていた
当時の人々の工夫と知恵は素晴らしいです。
それらを上回るデザインなど多分ないですね。

どんなデザインをしても、これほどまでに「意味を持ったデザイン」に勝るものは出来ないと思います。




当初はあまり関心のなかった分野の展覧会でしたが、
思わず色々と考える良い機会となりました。

民族衣装の柄が大好きな友人に感謝です🙏

全然関係ないのですが、当日着ていた服がはからずしも

- シルバーのキラキラしたスカート
- 豹と象が描かれたセーター
- シャラシャラと音がなるピアス

で、なんとも魔除け対策バッチリでした🫨


キラキラのスカートがお見せできなくて残念!
お腹に豹🐆、背中に象🐘がいます。




ここまでご覧いただきありがとうございました。

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それではまた、次回の展覧会でお会いしましょう〜!

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