見出し画像

読書記録『成瀬は信じた道をいく』②(みんなズレててみんないい!)

昨日に引き続きまして、内容の詳細を。


5篇の短篇集で、タイトルと内容、感想は以下の通り。(ちょいネタバレあり)


『ときめきっ子タイム』

成瀬と島﨑のお笑いコンビ『ゼゼカラ』ファンの小学生北川みらい視点のお話。

小学校の授業で、グループごとに地域で活躍している人を取材する課題が出て、ゼゼカラの成瀬あかりを取材することを決意。どこに行けば成瀬に会えるのかもわからないまま、まずは成瀬に遭遇できそうな場所を探すことにするが・・・。


続篇の第1篇目ということで、挨拶がてらの素晴らしいエピソード。

成瀬初登場シーンの「いかにも私が成瀬あかりだ」が成瀬すぎて最高。


小学生も人間関係に悩んだりすることがあり、そこでもしっかり自分の道を進むことの大切さを教えてくれる。




『成瀬慶彦の憂鬱』

成瀬の父親・慶彦視点のお話。娘あかりの京都大学の受験が迫り、あかりはこの春から一人暮らしをしようとしているのでは?という疑問が浮かぶ。

モヤモヤしながら受験日を迎えるが、相変わらず成瀬の受験は一筋縄ではいかない。受験当日、キャンパス内で野宿しようとするユーチューバーを拾って帰ることになる。



初めての成瀬家の身内視点からのお話。野宿しているユーチューバーを連れて帰るという、相変わらずの謎展開と、お父さん視点で見た成瀬のほっこりエピソード。

このシリーズ特有の、終わり方の圧倒的ハッピーさ、この章が一番でした。



『やめたいクレーマー』

毎日通うスーパーで、どうしても嫌なところが目についてしまい「お客様の声」にクレームを投書してしまう(でもそれを止めたい)主婦・呉間好実視点のお話。

この入り組んだ設定の登場人物に、成瀬がどう絡んでくるのかと思っていたら、まさかのこのスーパーで成瀬がアルバイトをしていた。


ある日好実は店員である成瀬から、「万引き犯を捕まえる協力をしてほしい」と持ちかけられますが・・。



設定もさることながら、展開も最高に面白かった。自分自身の嫌いな部分や、止めたくても止めれないこと、実は視点を変えればそれも世の中のために使うことができるということ。


『コンビーフはうまい』

このエピソードが一番良かった!

滋賀の観光大使になることを、幼い頃から家族に言われ続けてきた女子大生・篠原かれん視点のお話。

待望の観光大使になれたものの、パートナーを組むのが摩訶不思議な成瀬という女子だった。


観光大使の活動で、篠原は成瀬にペースを崩されつつも、次第に成瀬のすごさを知っていき、自分自身のやりたいことも見つけていく。


このエピソードが一番素晴らしくて、全く自分と属性は違うけど篠原に共感する部分多々ありで、その上で成瀬に学ぶことが非常に多かったです。
他人の目とか、周囲の期待とか、そんなものは脱ぎ捨てて自分は自分でいるということ。

ちなみにタイトルにもなっている「コンビーフはうまい」はかなり序盤で出てくるフレーズですが、ここが本作で一番笑いました。



『探さないでください』

前作から満を持して再登場、幼馴染の島﨑みゆき視点。

大晦日に島﨑が大津に帰ると、成瀬が「探さないでください」という置き手紙を残して失踪していた。

心配になった島﨑は、成瀬の父と、ゼゼカラファンの小学生みらいと、観光大使の篠原と共に成瀬捜索を開始する。

物語後半で、成瀬の居場所と、失踪した理由(スケールのでかい目的)が明らかになります。


いやあこの章も笑いました。圧倒的安定の島﨑視点。やはり成瀬あかり史は島﨑視点が一番しっくりくる。


でかい目標をたくさん掲げ、それを全力で見つめていたら、たくさんのうちのどれかが叶うことがある。本当にパワーを貰えました。


ここまで散々いろんな視点で成瀬のキャラを堪能してきて、最終章で「成瀬失踪」。

笑いとパワーと多幸感が素晴らしかったです。




ここまで読んできて、この作品は「成瀬」という変人と、それを見守る「周囲の普通の人たち」という構図を念頭に読んでいました。

でも読み進めていくうち、周囲の人たちもちょっとずつズレてることに気づいていきます。

ズレてても全然OK。

そもそも「ズレてる」って表現もおかしいですよね。なぜ「世間」とか「平均」が基準になっているのかと。
ズレてるんじゃなくて、自分の道を進んでる。


登場人物がみんなズレてて、みんなそれぞれのハッピーに向かっていく本作。自分もちゃんとズレながら、自分の道を進んでいこうと強く思いました。



読み終わってしまったのが本当に寂しい。続篇出てほしいけど、やっぱり今回で綺麗に終わったままで良い気も。


なにせ本作は絶対に実写化してほしくないです。成瀬は誰にも演じれません。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?