「男の呪い」考

シングルマザー支援をしておられる辻由起子さんから親しくお話を伺う機会があった。辻さんは女性を支援することがもっぱらなのだけど、今の日本の男性が非常につらい立場に置かれていると考えているという。以後は私の理解なので、文責は私にあるが、書き連ねてみる。

昭和の価値観に引きずられ、男性は今でも「嫁さん子どもを自分の稼ぎで養って一丁前」という「呪い」がかけられている、という。しかし現実には、少なからずの男性が手取り年収200万を切り、とても自分の収入だけでは家族を十分に養えない状態を強いられている。なのに家族を養うことを求められる。

なんとか家族を養ってる男性でも、「家のことは嫁さんに任せ、お前は仕事をしろ」という「昭和の呪い」があり、家族のことで年休を取ることが許されない会社がまだまだ数多い。会社側にも同情する点は、下請け企業で十分な収益を上げられず、ギリギリの人員で回しているので欠員を許容できないこと。

今の日本は子育てに余裕がない。昔と違って地元就職が少なくなり、仕事を求めて見知らぬ街に住むことになる。地域に知人友人がおらず、住まいはただ寝るだけの場所。そういう人ばかりだから助け合いも起きない。地元から離れているから親類の助けも借りにくい。隣は何をする人ぞ、で他人。

だから子育てをご近所同士で助け合うこともできない。親類の助けも借りられない。だから子育ては夫婦だけで完結させなければならない。しかし男性は会社から様々な「呪い」をかけられて会社を休めない。会社も休ませるゆとりがない。このため女性はワンオペに陥りがち。

昭和にも賃金格差はあったが、家族を養える賃金を男性は稼げた。今は一定割合の男性が無理な状態。稼いでいても休むゆとりを与えられていない。会社もそのゆとりを持てていない。こうした構造的な問題が、子育てを窮屈にしている。これでは少子化が進んで当然。

フェアトレードは海外の農家のために使われることが多いけど、日本の下請け企業にも適用してほしい。子どもが熱を出したときに休めるくらいのゆとりがほしい。今は地縁血縁が子育て世代になく、夫婦のどちらか一人だけに任せてどうにかなる状況ではないことをもっと周知する必要がある。

収入のゆとりもなく、会社で皆勤を当然のように思われる。そんな「呪い」の中で男性も苦しめられている。その呪いを全世代的に解いていかないと、少子化なんて止まりはしないだろう。

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