新田開発と天下取り

江戸時代は享保時代に三千万人に達した後、百年以上人口が変化していないけど。実は関東で人口が大きく減り、西日本で人口増加が起きている。日本全体の総数はほとんど変化がないけど、地域別に見ると大きな人口変動がある。薩摩や長州など西日本の雄藩が明治維新を起こしたのにも理由がある。

少し時代を遡ると、戦国末期に東海地方での人口増加があった様子。実はそれまで、平野部を耕地にする技術がなかったが、この頃になって平野部を広大な耕地に変える技術が発達した。それまで広大な沼地だった平野部を田野に変え、人口が増加、織田信長はその人口増加を背景に台頭できたらしい。

戦国時代まで荘園による大規模営農が中心だった。しかし信長が広大な平野を開拓し、農地を与えると、自分の親と子どもの家族だけで独立したがる農家が増えた。意欲の低い雇われ従業員(下人)を抱えるよりも、家族だけで耕した方が生産性が高いからだ。これら独立農家は検地をしてもらいたがった。

検地をしてもらわないと、荘園主が「うちの人間だからその農地はうちの荘園のもの」と主張しかねない。検地をし、誰が耕している農地なのか登録してもらえば、家族の農地だと確定してもらえる。所有権を認めてもらえる。だから検地をしてもらいたがったらしい。太閤検地が成功したのはそんな理由。

織田信長が天下をとる足がかりを得、豊臣秀吉が天下を取ったのは、平野部を広大な農地に変える技術の発達があったかららしい。
その後、徳川家康が天下をとれたのも、不毛な沼地だった関東平野を田野に変える開拓を行い、急激な人口増加を果たせたかららしい。

人口増加って、治世がうまくいけば国の勢いになるんだな、と実感。では、人口減少時代に突入するこれからの日本はどうなるのだろう?

参考文献
・板倉聖宣『歴史の見方考え方』仮説社
・菊池勇夫『飢饉―飢えと食の日本史』集英社新書
・鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』講談社学術文庫
・鬼頭宏『2100年、人口3分の1の日本』メディアファクトリー新書
・田中圭一『百姓の江戸時代』ちくま新書
・玉城哲『稲作文化と日本人』現代評論社
・速水融『江戸の農民生活史』NHKブックス
・本間俊朗『日本の人口増加の歴史』山海堂

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