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藁にもすがる思いってのもありまして

うつになって苦痛ながらも働いてた時期は、やはり「うつ病に関するエッセイ」が気になって、本屋に足を運んでいた時期があった。
何かの参考になれば、何かの転機になれば、それこそ藁にもすがる思いで探したのだが、元々読書家なだけあって、まんがエッセイはちょっとなあ、という今持ってどうすんねんというプライドがあった。
私がうつになった時期、たまたま有名なタレント(あえてぼかす)がうつ体験記を出版しており、それが人気書として本屋に表紙がずらりと並べてあった。キャリーバックにバカンス楽しんできました風のワンピースの女性が表紙、と言えば、大体の人が分かると思う。正直に言うと、表紙とタイトルで、「これ、合わない」と察したが、もしかしたらと思い数ページ立ち読みして、やっぱり合わない、と本を戻した。

まず、大半の成人のうつ患者は、簡単に仕事を休めない。何か月もがっつり休養を取れる予算がないのだ。これが父親という立場なら尚更。就職氷河期直撃世代の我々の周りには、結婚したいけど子供は産めないかも、とか、共働きは当たり前だから、という、常に働いてないとやっていけないというのが現状であった。しんどい体に鞭打って、増薬しながら日々の小銭を稼ぐのがやっとこさ、である。ただでさえひねくれた性格な上に、うつでぼろぼろの精神を持った私にとってこの本は死ぬほど相性が悪かった。この上流市民が、と吐き捨てるようにつぶやいて本を置いたのだが、当然、このエッセイを書いた人に罪はない。ただの貧乏人の逆恨みである。

何かないかな、と闘病記のコーナーをうろうろしていたら、好きな漫画家が表紙を書いたあるエッセイに出会った。30代前半で末期がん。想像するだけで辛いと思いつつ、表紙につられて読んだのだが、これがめちゃくちゃ面白かった。

30代でがんを宣告され、病室の中でPCを打ちながら書いた内容は、主に好きな音楽、好きな漫画、好きなカルチャー等、自分の趣味を軽快につらつらとぎっしり書きまとめたものであった。

「趣味の話しかしとらんやんけ!!」

衝撃を受けた。闘病記でこのノリありなんや、と知った。文才もあり、読みものとしてめちゃくちゃ面白かったのだが、後半、病が重くなるにつれ軽快さが無くなり、すぐ先の死への不安を綴られており、やっぱそうだよな…と悲しい気持ちで本を戻した。うつがひどい時期の私には耐えられない辛さであった。

しかしその時思った。私が自分の病気について文を書く機会があれば、この本のスタイルを参考にしたいと。病人は病気のことしか書くな、なんて決まりはないし、何より、読んで「面白い!」と感じたものが私は好きなのだ。

このnoteに文を書こうと思うにあたり、久々にその本の存在を思い出したのだが、残念ながら手元にない。買ったかどうかも覚えてない。そして肝心のタイトルが全く思い出せない。いろいろ検索してみたが、10年以上前の本なのでヒットすることが出来ない。(がん闘病記で検索しても種類が多いし、ブログなどで日々更新されてるのもあるから古い情報が見つからない)

今ならあの本を最後まで読める覚悟がある。しかし入手する情報がまるでない。根気よく古本屋で探すしかなさそうだ。不甲斐ない。

分からん本なら紹介すんなよ、ということで、実際に購入したうつ体験記の本を紹介しようと思う。

田中圭一 『うつヌケ』Amazon.co.jp: うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち : 田中 圭一: 本

例の大御所漫画家の絵のパロディの方である。かなり昔に劇画調の画風でブラックな下ネタ漫画を描いていた漫画家で名前だけは知っていた。最近見ないな、と思ったら、まさかのこんな形で出会うとは思わなかった。対談式で、え、あの代々木監督も?と興味を持ち購入して読んだ。

一言でいうと、タメになるし、面白い。当事者一人称のみの病状だけでなく、対談ということで様々な症状を紹介してくれる。プロの漫画家なので、漫画が上手い。あのパロディの絵柄でいろんな著名人を描くっていうのもなかなか見ごたえがあるし、コマのテンポもよく、ただただ、面白ーい、分かる-、と楽しみながら読めた。

先にも言ったが私は「読んで面白い本」が好きだ。興味を持った方はぜひ。

P.S 前回もリンクを貼らせてもらったが、決してAmazonの回し者ではない。
個人の判断で勝手にアドレスコピペして貼ってます。Amazonからなんか貰ってんのか、とかは一切ないです。


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