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新規就農の苦悩 〜農地編〜 #11

ここからは、私が新規就農するための準備の中で直面した問題や悩みについてお話させていただこうと思います。

まず、私が最初にぶつかったのは農地の問題でした。

幸いなことに、私は新規就農といっても祖父母が営んでいた農地があったので、そこを使用させてもらいスタートすることにしていました。

しかし、そこは元々ぶどうを栽培していた丘陵地のため、近くに沢や水路などの作物に水を与えるための水源がなく、野菜を栽培するには多少難がある場所でした。そのため、そことは別の農地も第三者からお借りしたいと考えました。

祖父母の畑の草刈りをしている様子

ところが、その農地探しが難航。なかなかすぐには畑が見つかりませんでした。というのも、私が研修をしている寒河江市と、就農を予定している山形市の蔵王地区は車でおよそ50分。普段は寒河江市で生活をしているため、蔵王地区の地域の方や農業関係者の方々との繋がりがほとんどなかったのです。

いくら地域に使われていない農地が余っていると言っても、全く知らない人に自分の土地を貸したくないと思うのは人間の常。ましてや、これから新たに始めようとしている人に対してなら、なおさらです。

「ちゃんとやれんだがやぁ?草どが、ぼうぼうにしておがねべねぇ??」

仰ることは当たり前のことですが、とにかく新規就農者はかなり警戒されてしまい、なかなか良い土地は借りられないというのが現状です。

しかも、仮に借りられる畑が出てきたとしても、ずっと放置されていたために草ばかりでなく木が生い茂っていたり、晴れていても水はけが悪くグチャグチャしていたりと、なかなか条件の良い土地に恵まれることはありません。そもそも条件の良い農地というのは、空いたとしてもすでに農業を営んでいる実績のある農家に廻っていき、借りられているというのが現状のようです。

というわけで、まずは私が蔵王地区で農業を始めようと思っていることを地域の皆さんに知ってもらうために、地元の農協に顔を出したり、地域の草刈りに参加するところから始めることにしました。

畔の草刈りをする様子

ありがたいことに、私の場合は祖父が農業を営んでいたということもあり、
「あ〜あ、二ノ戸さんどこの孫がぁ。農業すんのがぁ!?若いのに頑張れなぁ。」と会う人会う人皆さん応援して下さいました。

そんな地道な活動もあってか、農地を探し始めてからしばらく経ったある日、蔵王地区で米農家を営む相馬さんという方が農地を紹介してくれることになりました。

「私が借りようと思ってたんだけど、作業の効率的にちょっと借りられなくなったから、新太くんにどうだろう?」と2枚の田んぼ合わせて4反歩の農地を紹介して下さいました。

そこは中山間部にありながら開けた平らな場所にあって、しかも水路があるので水もとることができます。私としては、この上なくありがたい話でした。

さらに相馬さんは、その土地が何年も使われていなかった耕作放棄地であるということと、私が田んぼを畑にして野菜を育てるつもりであることを聞くと、

「んだら、最初にトラクターでうなわんなねべした。トラクター持ってだのが?もし持ってねえんだとしたら、うなってけるよ!」と最初の開墾作業を自ら買って出てくださったのです。私はトラクターを持っていなかったので、これは本当にありがたい申し出でした。

トラクターで耕盤を破壊してくれている相馬さん

通常、田んぼは水を張って稲を育てます。そのため、溜めた水が簡単に土の下に抜けていかないように、大型の機械を使って上から圧力をかけて、鋤床層すきどこそうという土が硬く締まった耕盤があります。ただ、これは畑にする場合は水はけが悪くなってしまうので、壊さなければなりません。相馬さんはこの作業をやってくれると言って下さったので、私は喜んでお願いすることにしました。

というわけで、人のご縁から新たな土地をお借りできることになり、ここから新規就農へむけて畑の土づくりがスタートしたわけですが、それはそれで困難を極めた過酷な戦いとなっていったのです。でも、この話はまた今度。

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