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EMBAでペルーに行く

私が現在やっているスイスのビジネススクールIMDのExecutive MBAプログラムには全部で9週間のFace to faceのプログラムがある。スイスでは3週間のプログラムが1回と、1週間のプログラムが3回組まれている。合計6週間スイスで授業を受けることになる。それとは別に1週間のプログラムを3つ、世界のいくつかの都市で行われるプログラムから選んで参加しなければならない。私の場合はシリコンバレー、深セン、そしてペルーになった。

世界を知るという目的のもと、IMDの教授が世界の各地でプログラムを企画している。この他にもイスラエル、ケニア、ブラジル、ベトナム、インドのプログラムがあった。本当はイスラエルのプログラムに参加する予定だったのだが、別途書いているように足を骨折してしまい、イスラエルのプログラムには参加できなかった。このままじゃ卒業できないということで、急遽ペルーのプログラムに参加することになった。

というわけで、最初からモチベーションはそこまで高くなったのだが、それでもIMDのプログラムなので、行く前から課題やグループワークが容赦なくふりかかってくる。そして一緒にペルーに行くクラスメートは何でそこまでというくらいやる気があって、まぶしい。今回ペルーにいって学んだことを簡単にまとめておこうと思う。

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Social entrepreneurship、Social investorというのがメインテーマであった。明確に社会問題に取り組みつつ、ビジネスとしてのリターンを追求するというのが定義だろうか。社会問題への取り組みは単なる「こんなこともやっています」という程度のものではなくて、ビジネスのコアになければならない。例えば、アマゾンの森林を焼き畑などから守るために林業をサステイナブルに運営するとか、麻薬を栽培していた農家にトレーニングを施して麻薬の代わりにカカオを収穫してもらい、それを麻薬よりも高い値段で買い取るとかですね。こういうビジネスとSocial impactを両立しているビジネスを興したい人、そういうビジネスに投資をしたい人の間に立ってコンサルティングをするのがプログラムの目的であった。

まず、このテーマが面白かった。Social impactを単なる慈善事業のように考えていたけれど、Social impactをしっかりと事業のコアに据えると目的が明確になり、ビジネスの勢いが増すというのが印象だ。Social impactをきちんと定義して、どのくらいの成果を出しているのかを測っているいるビジネスは投資も呼び込めるし、人材も呼び込める。理念に求心力があるので、働いている人のエネルギーレベルも高いし、投資家のサポートもお金だけでなく、アドバイスやコネクションを紹介するなど、熱心なものになる。ビジネスなんて儲かればいいじゃんというのではなく、これからビジネスで儲けるためにはSocial impactを中心に持っていなくては人も投資も集まらない時代がくると思った。例えば、おいしいものは、もはや十分ではない。おいしくて健康によいが求められている。もっといえば、おいしくて、健康に良くて、さらに(例えば)環境保護にも貢献しているものがより求められていくだろう。

次にペルーという国だ。ペルーは南米の中では最も経済成長しており、また多くの起業家が生まれている。なぜペルーで?という疑問にこたえるべく、プログラムではペルーのリーダーたちと議論を重ねていく。私なりの答えはペルーの下記の要素が引き起こしていると思う。

まず、多様性だ。ペルーには日本人が多くいるし、ヨーロッパ、南米、アジアの要素が混ざっている。料理などはその典型で、Nikkeiと呼ばれる料理はクリエイティブでおいしい。次に政策としての新自由主義がある。伝統的に小さな政府を政権が変わっても推進してきた。よって政府の助けが少ないので、企業がやるしかないケースが多いのである。政府に頼れないので自分でやるという風土が企業のチャレンジを生んでいると感じた。最後に汚職時代の記憶である。1990年代ころまでが汚職がひどく、みんな本当につらい思いをしたようで、「もうあのころには戻りたくない」「あの頃に戻るくらいならマフィアに殺されてもいい」という覚悟ある。これが改革のエネルギーになっているように思う。

また、人生の学びとしても多くをペルーで得られた。InkaterraというホテルグループのFounderの話を聴いた時のこと。彼はとてもエネルギッシュで、いい雰囲気をまとっていた。クラスメートが「あなたのそのエネルギーはどこから来るんですか?」ときいたところ、「君のエネルギーはどこからくるんだ?チャレンジしているからだろ?チャレンジがエネルギーを生むんだ」と断定的に、そしてにこやかに言っていた。アメリカに移住して、40歳過ぎてEMBAにチャレンジしているわたしにとってこれ以上刺さる言葉はなく、「ああ、これからもチャレンジしよう」と決心した。

次にIMDの教授がプログラムの最後に使ったスライドの言葉が良かった。「人生の喜びや成功に最も寄与するのは愛だ。愛の次に寄与するのはチャレンジする精神だ。40歳を過ぎたらIQはあまり意味をなさない。愛の積み重ねこそが人生の喜びだ。愛を無駄にしてはいけない。」家族の協力(愛)があって初めてEMBAにチャレンジできている。当たり前なことだけど、1週間のペルーのプログラムをこの言葉で締める教授の人間性に感銘を受けた。

ペルーの滞在はリマだけで、マチュピチュといった遺跡も見ることができなかった。いつかは家族で訪れてみたい。そして大きな学びの場となったペルーでこの日のことを思い出し、チャレンジするエネルギーを培うのだ。



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