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源氏物語を楽む「紙芝居×地歌」地歌Mirai主宰

地歌を盛り上げるため新設された「地歌Mirai」が初めてのイベントを開催するということでお邪魔してきました。
「紙芝居×地歌」の斬新な組合わせで新しい風を吹きこみます。

地歌Mirai

地歌Miraiはプロボクサーである藤井貴博さんが代表を務め、お父様の藤井泰和(銀名会会長)と共に2022年に立ち上げました。なかなか聴く機会が減ってきてしまった地歌筝曲ですが、幼い頃から親しんできた藤井貴博さんの感性で老若男女楽しめる場がこれから増えていくことに胸が弾みます。

紙芝居×地歌

今回のイベントは源氏物語の中の1つの物語である「夕顔」という題材を「紙芝居」と「地歌筝曲」という全く違う2つの手法で楽しめる新しい体験でした。


源氏物語と聞くと固いイメージがありますが、紙芝居と音楽でお子様でも安心して足を運べる賑やかな雰囲気。なおかつ新しい源氏物語への触れ合い方を知ることが出来る素敵な空間でした。


舞台は聴き手と演者が分かれていない1つのお座敷で、お座敷音楽であった三味線と箏の臨場感を最大限に感じられました。コンサートホールとはまた違う味わいがあります。
最後には箏や三味線に実際に触ることの出来る体験の時間も設けられ、演奏者と直接お話が出来る貴重な時間も魅力の1つです。主宰である藤井貴博さんが大事にされている「お座敷音楽」としての地歌箏曲が身近に楽しめるイベントがこれからも楽しみです。

出演者

今回のイベント「紙芝居×地歌」は出演者の方々のアイディアと想いが重なり出来上がったイベントです。出演者の方々の邦楽に対する想いや日々の活動にも注目です。

~一部~

紙芝居+地歌筝曲+ワークショップ

皆川みゆき(箏)

古典音楽を大切に演奏活動をされている皆川さん。今回の題材は皆川さんを中心に意見を出し合い、子供でも楽しめる題材をと提案されたそうです。今回の題材「夕顔」は歴史ものと分類され、色恋の要素は少なくお子様でも楽しめる内容となっています。
古典と一括りにしてもたくさんの題材があり、それがすべて失われてしまうということに危機感やさみしさを感じている皆川さん。古典音楽と現代の日本人が距離を感じてしまう理由に「意味が理解しにくい」という部分が大きいと考えているそうです。その中で、紙芝居と地歌筝曲という組み合せを日頃から考えていました。ついにその構想が今回実現されました。
皆川さんの演奏活動には「子供」、「未来」というキーワードがあります。古文や漢文などの言い回しによるハードルを乗り越えて、意味として未来へ古典を伝える1つのきっかけになるでしょう。古典音楽をこれからも後世に残していきたいという想いが地歌Miraiと重なったのではないでしょうか。

instagram.com/miyukikotohiki/


三谷夏香(三味線)

幼いころから地歌筝曲を習い始め、生活の一部であった邦楽。幼いころからお箏を習っていることに珍しいと声をかけられることが多いと言います。ずっと心に留めていたその言葉に違和感があり、「邦楽(古典楽器)が日本でもっと普及していて良いのに」、「邦楽は日本人に馴染むものなはず」そんな気持ちが大きくなりました。その考えから一般の家庭でピアノを習う子供達がいるように、日本の楽器が一般に普及することを思い描き普及活動に取り組んでいます。
取り組みの中には保育園での演奏活動や取手市の学童プロジェクトなど子供へ向けての演奏を大切にされています。今回のイベントでも紙芝居との組み合わせということもあり、子供達に楽しんでもらうことを特に意識して演奏されたそうです。
三谷さんは箏、三味線の演奏活動のほかにもライターや服飾など幅広い分野で活動されています。大学を卒業され、これからさらに活動の幅を広げていかれる活動に注目です。

instagram.com/99summer25/

あんぢ(紙芝居師)

普段はお祭りや地域のイベントで活動をされているあんぢさん。今回は源氏物語という初めての題材で試行錯誤されたそうです。聞き手の心をつかむ工夫をたくさんちりばめお子様の心を惹きつけていました。
元々は舞台演出をされていたあんぢさんですが出産を機に引退。その後子育ての限られた時間の中で自分の技術を活かしたいと紙芝居師を始められました。活動を始められた直後にコロナ禍という逆風にも拘らず精力的に活動をされています。
あんぢさんの作る紙芝居は絵から構成まで全て手造りで、衣装までもご自身で作られています。ご自身で演奏される効果音は物語をより引き立てていました。今回のイベントでは源氏物語の語りだけではなくクイズを取り入れた構成やお子様へのプレゼントもあり、紙芝居の多様さを感じることが出来ました。

~二部~

紙芝居+地歌筝曲+ワークショップ
(三味線の演奏が三谷さんから藤井泰和さんへ代わります。)

藤井泰和(三味線)

銀明会の会長であり地歌Miraiの理事でもある藤井泰和さん。銀明会の創始者である祖母様、人間国宝であるお母様から銀明会を引き継ぎ地歌箏曲の業界を牽引されてきました。
今回のイベントでは普段では聴くことの出来ない距離で演奏を聴くことが出来ます。1音三味線の音が鳴り、声を発した瞬間に一瞬で空気が変わり演奏に引き込まれます。地歌箏曲で使われる間拍子と言われる独特の空気感と長年の修練で培った銀明会流の演奏をぜひ生で味わってみて下さい。
泰和さんが地歌箏曲を始められた頃は業界の衰退など考えられないほど盛況でした。しかし昨今の状況に危機感を覚えていると言います。かつては格闘技に精を出していたこともあったそうですが、十代で体を壊したことをきっかけに自分と地歌箏曲との立ち位置を客観的にみることが出来るようになったと言います。その事をきっかけに東京芸術大学に進学し、地歌箏曲一筋の道を歩み始めることとなりました。
息子の藤井貴博さんの活動を含め、地歌箏曲に対する新しい試みを好意的に捉えているそうです。ご自身でもラジオ出演など普及活動にも取り組んでいます。演奏者が減り、楽器やメンテナスの道具が手に入りにくくなる昨今ではより伝統音楽に触れるハードルが大きくなっています。その今だからこそ、地歌Miraiが地歌箏曲に関わるきっかけとなっていくのではないでしょうか。

主宰

藤井貴博(地歌Mirai)

初めてのイベントを終え手応えを感じている様子の貴博さん。今後の活動を見据える中で、地歌Miraiの立ち上げや今回のイベントについて話して頂きました。
格闘技の道を長年歩まれてきた貴博さんですが、心の中には地歌箏曲の世界に還元したい気持ちがかつてからあったと言います。具体的に構想をはじめてからは数年暖めていた「地歌Mirai」でしたが、ご自身の仕事との兼ね合いを考えついに立ち上げに踏み切りました。
幼いころから地歌筝曲を耳にしてきた貴博さんならではの視点で業界をより活気づけます。イベントの開催や後継者育成など多岐に渡るアイディアで地歌箏曲の普及に取り組んでいます。今回のイベントでは大事にしていきたいと考えていらっしゃる演奏との「近い距離感」に対する工夫がたくさん詰まっていました。物理的な距離感はもちろんですが、お子様は手をあげたり、声を出したり、大人の方も笑顔であふれる素敵なイベントでした。
地歌Mirai立ち上げの根底には「何か面白いことをやりたい」という気持ちがあるそうです。その心持ちが今回のイベントで節々に感じることが出来ました。藤井貴博さんが思う地歌筝曲の「面白さ」をぜひ体験してみて下さい。
初回から盛況で幕を閉じた地歌Miraiのイベント。これからの活動が楽しみです。


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