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アルバイトで再就職した60代、スーパーシニアの話し

普通に会社員だった、という60代のシニア、Aさんの話しです。

Aさんは、60歳の時に、それまで経験したことのない職種でアルバイトを始めたそうです。
それは、大手の人気店で家具を売ること。

「販売なんてやったこともない」
それが、ウン十万もする家具をバンバン売るスーパーシニアになりました。

そう書くと、恰幅が良くて口の上手い、ニコニコした男性を思い浮かべるかもしれませんが、全く違います。

Aさんは痩せ型で非常に物静か、地味でほとんど目立ちません。
そういう推しの弱い印象のせいか、
「こんにちは」
と話しかけても、お客さんが警戒しないんです。

ソファやベッドは安くても数万円、ダイニングセットや高額なものはウン十万。
決して安くない買い物ですから、夫婦や家族で話し合いながら商品を探す人が多く、
「押し切られて買う」のではなく「自分たちで選びたい」
なので、Aさんは少し離れた場所にじっと立っているだけ。

そのうち、
「すいません、これは…」
と質問されるのですが、その時も、
「今はどんなものを使ってらっしゃいますか?」
と積極的に相手の話を聞きます。

相手が求めているものがわかれば、こっちの説明も聞いてもらえますから。
豊富な知識で詳しく商品の説明をして、最終的にはお客さんの判断を待ちます。
その結果、
「いい店員さんに当たって、良い買い物をした」
と満足して帰っていくというわけです。

そんな控えめで謙虚なAさん。
会社の評価も高く店長も社員も大絶賛。

でも、私には疑問でした。
「タバコも吸わないAさんは、どうやってストレスを発散させているんだろう」

そしたら若手社員のM君が笑いながら、
「いやいや、Aさんて話してみたら『俺はさあ』ってめっちゃ語りますよ」

やっぱ、そうだよねえ〜

どんなに謙虚で物静かに見える人でも、長く生きてきた経験と生き抜いてきたプライドがあるはず。

高い役職についていたけど降格し、そのままずっと職場に居座れる人は別として、全く違う職場で一から仕事を始める場合は、並ならぬ忍耐も必要でしょう。

世間には歳をとると「老害」だとか
「シニアって大した仕事はできないよね」
という先入観もまだまだ根強く、特にサービス業では「雑用として雇われる」感じが強い気がします。
学歴や職歴には関係なく、リユースショップで働いていた時には、シニアの男性アルバイトは家電の掃除担当。スーパーでもカート回収をやっていたり。

そんなシニアですが、これからその数はどんどん増える一方です。
若手は減り続けますが、50代は大量に増えます。
私もその一人。
このまま5年後、10年後にはどうなっているのでしょう。

それなりに管理職についていた人たちが、20代の若手社員や古参の主婦にこき使われて黙っているとは思えませんから、問題も起こるはず。

実は、私が働いていた職場でも、60歳を過ぎて再就職した元会社員の男性が、おばちゃん達に酷くバカにされて辞めました。
傍目から見ていても気の毒だなと思ったんですけど、何も言わずに辞めて行ったのでそのまま忘れていたのですが、ある日、その人がお客としてやってきました。

張り詰めた緊張感に「何?」と思ったら、その男性が課長以下、社員までズラリと並べて怒鳴り散らしているというのです。
「訴えるぞ」と来客用のソファにふんぞりかえり、
「あんな人の雇い方はないっ」
と2時間も説教したんだとか。

やったことは必ず返ってくると言いますが、まさにその通りかもしれません。
ネットに低評価の口コミを書き込まれるのもそう、
「SNSに投稿しないこと」
と言われても辞めてしまえば関係ありません。
求人サイトで実情を訴えられれば人も集まらなくなりますから、安易に馬鹿にしたり蔑んだりはお店の損。

特にこれからの世代は、電話で直接苦情を言う、なんてことはやらないので、腹が立てばネットで拡散……
同世代の関心を集めれば圧倒的に数が多いわけで、シニアの雇用問題はどんどん表面化していくのではないでしょうか。

だからこそ、黙って実績を伸ばすスーパーシニアを見習いたい。
わかる人には分かるし、評価してくれる会社もあるはず、そう思います。


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