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私が体験した奇妙な事。其二

小学生の僕が語る。『夜の足音』

 我が家は僕が小学三年生の時に建てられた。今でこそ住宅街の真ん中だけど、建てられた当時はの中の一軒家だった。二階建てで、二階はこども部屋だった。
 もともとは、廃線になった電車の操車場だったとか。その前は田んぼだったようだ。父ちゃんが、サルが楽しく遊ぶ田んぼだったのかなぁと話していたのを覚えている。「猿楽田」とでも書いたのだろうか。小さな山も近く、猿が出てもおかしくはないのだけれど。
 
 二階は姉たちが占領していたせいで、僕の部屋は階下の小さな洋室だった。押し入れなどないために、夜は二階の姉たちの部屋で寝ることになっていた。冬には、電気こたつを挟んで寝ていた。

 それはある夜の事だった。風の音が遠くでしていた。強く、弱く。
父ちゃんと母ちゃんが話していることが時々聞こえる。二階に続く階段の下は台所の横にあり、ときどき話し声が聞こえるのだ。
 僕はいつものように安心して暖かな布団なのかで眠りに落ちた。

 目が覚めたのは何時だったかはわからない。
 階段を誰かが登ってくる。
 とん とん とん とん とん
 父ちゃんだなと思う。やがて足音は二階の廊下につくと、しばらくして降りていく足音が聞こえた。
 とん とん とん とん とん
 階下を誰かが歩く足音がする。何の用だったのか、あるいは子供たちが寝ているのを確認しに来たのか。雨戸でも見に来たのかなと思う。
 まどろんでいると、ふたたび足音がした。
 とん とん とん とん
 先ほどよりも早く登ってくる。
 今度は二階の廊下を歩く足音がした。すっ すっ すっ
 階段とは違う音がする。
 そんなことが数回。父ちゃんは廊下まで来てまた下へ降りていく。何度も、何度も。
 「姉ちゃん、誰かが登ってくる」
 姉をなんとか起こしてそういった。
 「風の音でしょ」
 うるさそうに姉はいってそのまま寝てしまう。
 部屋は暗くて、遠くで風の音がしていた。
 そして、下からとん とん とんと誰かが上がってくる。
 廊下をすっ すっ すっと歩いてしばらくすると戻っていく。
 僕は眠れず震えていた。
 そのうち、とんでもないことに気が付く。階段の音が短い。
 二段飛ばし、三段飛ばしのようだ。
 とん  とん  とん
 すぐに廊下を歩く。すっ すっ
 そして、とん とん とんと降りて階下を歩く音がする。
 父ちゃんではない。それどころか人ではない。
 
 二階の子供部屋は障子だった。畳のある和室だ。
 足音は三歩で二階に上がってくると、廊下を歩き、障子を開ける。すうっっっっと音がする。こちらをうかがっているのか。
 そしてまた下へ降りていく。それが何度か繰り返されたころには、僕は氷のようになっていた。
 やがて、障子を開ける音がすると、今度は畳を歩く音がする。
 じゃり じゃり じゃり
 素足で歩く音。
 もどってき、すうっっっと障子を閉めて、すっと廊下を進み、とんとんとんと階下へ消えていく。

 僕は、どきどきしながら布団に潜り込む。
 電気こたつの赤いランプが見えてホッとする。姉の足が見える。
 僕は息を凝らし、足音を聞いていた。
 とん とん とん
 すっ すっ すっ 
 すうっっっと障子が開き、じゃり じゃり じゃり
 すぐ近くにいる。
 横にいる。
 そう思った時、どんと音がした。
 毛むくじゃらの足がぬっとこたつの中に入ってきた。
 僕の叫び声は凍り、記憶はそこで途切れている。

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スカイフィッシュ

 怪異に会うことは一生に一度きりだと思っていたのだが、10年ほど前に近くの公園の中、舗装されていない山道のような遊歩道がありそこで妙なものを見た。
 対になった葉っぱのようなものがいくつも連なって、くるくる回るものがいくつか垂れ下がっている。最初はクモの巣に葉っぱが絡みつきくるくる待っているのだと思った。
 なんだろうと思い、写真を数枚撮ってしばらく眺めていた。
 下に葉っぱか何かが落ちているわけではないのに、数は少しずつ減っていく。
 なにか羽のあるものが孵化しているのかなと思ったが、飛んでいく姿もない。
 しばらくして数も減ってきたのでその場を後にした。以前にも見たような気もしていたし。

 後で思い出したのがスカイフィッシュ。あんな感じです。スカイフィッシュそのものは正体はハエなどがカメラの前などにいて、羽ばたきの残像だといわれている。だけど、見たのは飛んでいるんじゃなく垂れ下がっているんだよなぁ。
 県の自然史博物館の学芸員さんに写真を送ってみてもらったけれど、正体不明。
 また別の自然関係の施設の学芸員さんにも写真を送ったけれど、説明してみると正体不明。山の中なら同じようなものを見ていると思ったのだけれど。
 後で動画も撮っておけば良かったと後悔しました。
 一体何なんだろう。
 意外と誰でもそんなものには遭遇しているけれど、気にもしていないのかもしれませんね。

※写真はこの記事のタイトル画像になってます。

 

 

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