精神科の新しい治療「リカバリーを目指す認知療法」って知ってますか?
「認知行動療法」は、精神科の治療だけでなく、最近では一般にも広まりつつありますね。
最近、精神科の領域では、「リカバリーを目指す認知療法」というスタイルも提唱されています。この記事ではこの新しいスタイルについて解説していきます。
そもそも、認知行動療法とは?
「認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy;CBT)」とは、心理的な問題や精神障害を治療するためのアプローチの一つです。
認知行動療法は、思考(認知)と行動の関係に焦点を当て、思考(認知)と行動を修正する治療方法です。
具体的にいうと、まず、患者さんは自分自身への評価や状況についての解釈や認識を見直すことから始めます。
人間であれば、多かれ少なかれ、自分自身についてなかなか客観的になれないものです。特に、心が病気になっている患者さんは自分自身についての評価や状況を歪んで捉えていることが多く、その歪みを見直します。これが認知療法です。
そしてその上で、望ましくない行動を理解し、代わりにもっと有益な行動を身につけるための技術を学びます。また、自分の感情を理解し、それを適切に調整するための技術を学びます。これが行動療法です。
この行動療法と上の認知療法を合わせると、認知行動療法となります。症状を改善し、問題を解決し、ストレス/不安/抑うつなどのネガティブな感情に対応するスキルが向上します。
では「リカバリー」って?
では「リカバリーを目指す認知療法」とは何なのでしょうか?「リカバリー」って何? 専門領域の文献の解説には以下のように書いてあります。
「リカバリーを目指す認知療法」の基本的な考え方や特徴
上記をもう少し具体的に。リカバリーを目指す認知療法の基本的な考え方を洗い出すと、以下のような特徴があります。
リカバリーを目指す認知療法の特徴
症状を治すだけの単純な治療ではない。
日常生活で直面する障害や課題に対処しつつも、症状の背景にある「思い」に焦点をあてる。
患者さんの中にあるポジティブな要素を引き出し、それを強める。逆にネガティブな要素を起こりにくくする。
患者さんにとって意味のある夢や希望を重視し、患者が大切にしていること(人間関係、趣味、仕事など)をサポートする
患者さんの全人的な視点を重視する。
少しわかってきましたね。
つまり、心の病気だけでなく、そのほかの要素(特に患者さんの良いところ)をもっとよく見てそこを引き出してポジティブな人生に変えていきましょう、と。
しかし、なぜこうした方法論が生み出されたのでしょうか? それまでの方法では何がいけないのでしょうか?
「リカバリーを目指す認知療法」の生みの親であるアーロン・T・ベック博士の翻訳書には以下のように書いてあります。
なるほど。
アメリカは日本のように皆保険制度ではありません。そうなると、個人の経済状況と心身の健康状況がより強固に結びついてしまうのです。心の病気で入院した患者さんが病院から退院したあとも心の治療を続けることは、裕福な人以外は難しいようです。
経済的に苦しい状況の人は、健康面でも苦しくなりがちです。
心の病気に対する偏見というのは、日本でも同様ですね。偏見や差別という意味の「スティグマ」という言葉も最近は一般的になりつつあります。
患者さんは治療に支配されたくはない
心の苦しみから解放されたいだけ
従来の精神医学では、全ての中で中心に据えられ重要とされているのは、「心の病気そのもの」と「それに対する専門的な治療」でした。もちろん、心の病気を治すためのアプローチですので、それが重要視されてきたのはごく当然に感じます。
しかし、実際にこうしたバランスで治療していった時、心に病気をもった患者さん本人はどのように感じるでしょうか?
心の病気と治療にばかり向き合わなくてはならず、日常生活のほかのことは置き去りになります。自分の人生が心の病気と治療に埋め尽くされてしまったら?家族や仕事、自分の好きな趣味は置き去りです。そのような状況で心の病気は治るのでしょうか?
患者さんの人生は、心の病気だけではありません。そして患者さんは「自分の心の病気に興味や好奇心があってもっと知りたい」とかじゃないわけです。今の心の苦しみから解放されたいだけでなんです。
その意味で、リカバリーを目指す認知療法というのは、患者さんが本来望んでいた状態に近づくことができるのかもしれません。
では、具体的にどうするの? それは別の記事で解説していきます。こうご期待!
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