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認知症は、なぜ起こるの?


認知症では
脳に何が起こっているの?

認知症は脳の病気、それは知っています。では脳の中で何が起こっているのでしょうか?
認知症は、原因となる病気や状態の違いから、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、血管性認知症の4種類があります。このうち、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症の3つでは、「神経変性」が起きていると考えられています。
神経変性(英語ではNeurodegenerationといいます)というのは、「神経細胞が異常な機能や構造に変化してしまうことで、神経細胞の元々の機能を失い、最終的には細胞が死滅してしまうプロセス」です。

記憶障害などが起こる仕組み
認知症の「神経変性」

認知症の話題で「アミロイドβ(ベータ)」という用語を耳にされたことがあるのではないでしょうか。アルツハイマー型の認知症では、脳に「アミロイドβ」という物質が溜まった状態になります。これがまさに認知症によって起こる神経変性です。最近日本で承認された認知症の新薬もこれに関係しています。(新薬はまた別の記事で解説します)。
神経変性の要素は、アミロイドβのほかにもあります。アルツハイマー型認知症や前頭側頭葉変性症では、「タウ」というタンパク質が、異常なまでにリン酸化してしまいます。「リン酸化」というのは、リン酸というが分子にくっつくプロセスで、細胞の働きや成長を制御するという生物の大切な仕組みです。しかし、これが異常なレベルで起こることで障害が発生します。
また、レビー小体型認知症では「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質が神経細胞内にたまります。これも神経変性のひとつです。

脳の神経細胞が死ぬ
→脳が萎縮する

こうした神経変性が起こることで「脳の神経細胞が死滅してしまう」のです。そして、脳の神経細胞が死滅することで、脳が萎縮してしまい、その結果として記憶障害などの症状があらわれます。これが認知症の症状が起こるメカニズムと考えられています。
「認知症と糖尿病の関係」という記事では、糖尿病が認知症の原因になっていることを解説しました。2型糖尿病の方の脳では、異常なシグナルが伝達されていたり、脳血管に異常があったり、神経に炎症が見られたりします。そして、このほかに、上で説明した「タウの異常なリン酸化」やら「アミロイドβの蓄積」が起こっていることが分かってきました1)。つまり、「糖尿病になる→脳に神経変性が起こる→脳の神経細胞が死ぬ→→脳が萎縮する認知症になる」という流れが存在する可能性があります。

まだまだ奥が深い認知症

一方で、このほかにも加齢に伴って脳の動脈硬化が進むことで、脳を流れる血流量が低下しその結果として脳の萎縮に至る、という説もあります2)。認知症をはじめとした精神・神経の領域は日々研究し続けられていますが、まだ完全にはわかっていないことも多く、これから新しい知見が発表されることもおおいに期待されています。

1)Tumminia A et al. Int J Mol Sci. 2018;19(11):3306.
2)武田俊平ほか 日本老年医学会雑誌 1987;24(5): 437-443.


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