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【感想】「学芸員しか知らない美術館が楽しくなる話」

発売するのを今か今かと
ワクワクしながら待っていた本。

美術という存在が好きな方におすすめ。

現役学芸員の視点から語られる、
美術館の仕組みや美術鑑賞についてがとにかく面白い!

展覧会をつくる側しか知らないような
ちょっと細かい話はもちろん、
美術に触れる事が楽しくなる知識や考え方が知れた。

以下、本書を読んで考えた事をまとめてみた。


なぜ美術館に行くのか考える


まず私はなぜ美術館に行くのか、その理由を考えた。

今より子供の頃は自分の好きな作品があるからとか、好きな作家だからとかそんな気持ちで美術館に行っていた。

絵を描くのが好きだったから、どうやって書いているのか直接見て学びたかったのもある。

あぁここは厚塗りしてる、
あぁここは引っ掻いてる、
この色使い良いなとか、
生で見てようやく気づくことってたくさんある。

そして単純にその絵について、その作者作品について、自分の知らなかった知識をたくさん知れる場所でもあった。

絵が好きだから美術館に行った。
今も気持ちは変わってない。
けれど…

改めて自分は何で美術館に行くんだろうと考えたとき、「好きだから」だけじゃ何か足りない気がすると思った。

「絵を描くことが好き」でなく「手を動かすのが好き」だった


話は変わるが、私は絵を描くことは好きだけど、
無から有を生み出す行為は別に好きじゃない。
むしろ、ちょっと苦手な分野。

なぜ絵を描くかというと、
手を動かすことが好きだったから。

だから、写真を用意してその絵を描く、
あるいは物を決めてそれを描く、
そういう事は好きだ。
観察する事は好きだ。

こんな絵を描きたいとか、
頭の中のイメージを吐き出したい、
そんな思いで描いちゃいない。

なので、新しい絵を生み出すことがそんなに好きじゃない。
ただ手を動かすことが好きなだけだから。

そもそも何かを生み出すってエネルギーをとても使うし、疲れること。
(世の中の創造主様は本当に凄いし尊敬してる)

だから私は新しいものを生み出し続ける事が出来ない。

けど、絵を描いたり、手を動かすこと自体は好き。
どうやって手を動かしているのか想像することも好き。

絵を見てどんな風に描いているのか想像するのが好きで美術館で絵を見ていた。

自分では生み出せないから、
作者を想像する事で自己投影をしているのかもしれない。

私は絵を見て想像するのが好きなんだと思う。
だから、私は絵を見に美術館へ行く。

美術館で得る想像は私にとって新しい発見だった


ここで振り出しに戻ろう、
私が美術館に行く理由は新しい発見を得られるから。

美術館ほど、自分以外の思想が語られる場所は無いと思う。

例えば、本屋は自分で他者の思想(という名の本)を選びに行く場だとする。

なら、美術館で開催される展覧会はこの作者(この絵)はこんな人(絵)です!という主張を見に行く場だと思っている。

映画とか演説会のように、その作者(絵)の物語を見るために(体験するために)行っている。

その主張を色々想像しながら見る。
そうすると、色や形、作者の背景、はたまた人間関係なんかにまで思いを馳せることになる。
だから、新しい発見が得られる。

展覧会を見る前と後では、
同じ作品だとしても同じ感情で観ることが出来ない。
新しい発見を得てしまっているから。

これを得たくて私は美術館に行くのだと気づいた。
観察したくて行っているとも言えるかも。

新しい発見を記録する(アウトプットする)


本書では展覧会を観た後にチケットを手帳に貼る、
図録を購入するといった行動が出てくる。
出てきた瞬間ものすごく「わかる!」と思った。

私は自分が行った展覧会のチラシとチケットをファイルにまとめている。

後から振り返るとこんな展覧会も行ったなぁとか、
いろいろ思い出に浸れるけど、
それだけで終わってしまう。

この展覧会に行った時に感じた感情は確かにあったはずだが、思い出せない。

「凄い」とか「面白い」といった作品と向き合って生み出された自分の感情があったのは確かなのに言語化できない。

そして何がそんなに面白かったのか、なんて詳細な事は一切覚えていない。
なぜなら、記録してないから。

どこかに記録しておけばよかったなぁと
最近常々思う。

感情が動かされた覚えはあるのに、
その詳細が思い出せないことがすごく悔しい。

昔は日記を書くとか、SNSで発信するとか、自分の思いを言語化することが恥ずかしかった。

心に残ったことや、感動したこと、感情が大きく動いたときというのは
自分の成長につながるもので、大切なもの。

そんな自分にとって、宝物のような感情は記録する事で初めて形になる。

別に忘れてしまっても、大きな弊害は無いんだろうけど。
でも、どうせなら未来の自分に、こんな素敵な感情が生まれたんだということを残しておけたら良いのではないかと気づいた。

本書では展覧会レポートを「人に読ませるつもりで書くこと」を推奨していた。

その方が続くから。
本当にその通りだと思う。

人に読ませる前提で記録しておくと、
未来の自分が振り返る時に分かりやすくなる。

さてまずは本書を読んで考えたこと、
(得たこと)を書き綴ってみた。

こういう出会いがあるから、美術館に行く事、本を読むことってやめられないなぁと常々思う。


以下、本書を書かれた作者様。
どのnoteも読み応えたっぷりで、
ついつい読み耽ってしまう!

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