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母の日に帰ったら

この前、母の日の前日に帰省しました。
母と妹が、祖父母の家に引っ越してから、帰るのは初めて。
その帰った日というのは、付き合っている彼のご両親に、同棲のためのご挨拶をした日でした。

扉を開けて「ただいま~」と入ると、
「おかえり~挨拶どうだったー?」と二階にいた母が降りてきました。
彼のご両親が明るい方だったとか、手巻き寿司をご馳走になったという話をしていると、寝室にいた祖父やお風呂に入っていた祖母が出てきます。

私の話にうんうん頷いたり、時折笑ってくれたりして、
ふと祖父母に自分の彼氏がどうとか、そういった自分の話を詳しく話したことってなかったよなと、気付きました。

次は妹が会社の研修から帰ってきて、
五人で喋りながらリビングで過ごしていました。
私からすると、なんだか新鮮。
今までだと、祖父母の家に行くと叔父叔母夫婦や、従妹もいたりするものでした。
私、妹、母、祖父と祖母の五人で喋っていることって今まであったかなあ。マグカップに入ったお茶をちびちび飲みながら、そんなことを考えて。

時折、妹が祖母に突っ込んで笑っている様子を見ていると、
じわっと嬉しくなります。
母と妹は新しい生活にきちんと馴染んでいるのだと、安心したというか。別に心配していたわけではないですが、純粋によかったと、そう思いました。

次の日は母と、妹の研修先のスーパーに行き、自社製品の缶詰を売っている妹のもとへ。妹は試食用に、トレーの上に切り分けられた缶詰の桃が入っているカップを載せて、立っていました。
私と母が近づくと、気恥ずかしそうにします。
売れ行きはあまり好調ではなかったみたいですが、
近くにあった妹の手描きのポップはとても上手。
フルーツミックスの缶詰はフルーツポンチにすると美味しいことや、
桃に顔を描いた、可愛らしいイラスト。
字と絵が上手な妹の手作りのポップを、わたしはスマホのカメラで収めました。

母はその缶詰を10個買い(!)、私にそのうちの2つをくれました。
「自分の食べる分くらい、自分で払うよ!」と言ったのですが、
「いいわよ~」と母は首を振りました。

帰りの歩道橋を渡りながら「この後、売れるといいね」と母と話しながら、
どんどん遠くなっていく妹の研修先のスーパーを見ました。
少し風の強い中を歩いて、「妹、頑張っているな」と思うと、心の奥がきゅっとなります。

夕飯は妹が初給料で買ったという神戸牛をすき焼きにしていただきました。
一枚一枚が分厚くて、柔らかい。
研修で妹は一緒に食べられないのが残念でしたが、お腹が膨れるまで食べさせてもらいました。
時折、壁にかけてある時計をちらっと見ては
「これ食べ終わったら帰るのか」と、お腹が満たされていくにつれて、
違うところが少しずつ、重くなっていきました。

帰りはいつものように、色々と食料を貰って、荷物はいっぱい。
母が駅まで送ってくれました。
夜、外に出て話すと、自分の声がぽっと出ては、すぐに消えていくように感じます。
これからの仕事どうするかとか、同棲の話とか、歩いて5分かかるかも分からない駅までの道で話すのは、そのようなこと。

母に駅まで送ってもらうのはもう何回かあるけれど、
でもいつも、私の心はどこか落ち着かないです。特にこの前帰った時は尚一層、そう感じました。

それはきっと、これから彼と同棲することだとか、
祖父母は家族であることは前から分かっていたけれど、今回帰って強く実感したこととか、
これから先の自分の仕事について悩んでいることとか、
そういったあらゆることに対する感情と、
母が隣にいることが、
空気の細かな粒を感じさせる夜の湿り気と作用して、
私の心を柔らかくするんだろうと思います。

「また帰っておいで」
母は送ってくれた駅のエレベーター前でそう言ってくれました。
頷いて、手を振って、自分の家に向かいました。

ちなみに今年の母の日はAesopの、ハーブの香りがするボディースプレーと、リップをプレゼント。
落ち着く香りのするものなので、寝る前にでも使ってもらえるといいな。
帰りの電車で母や妹にラインをして、窓から見える街並みをじっと見つめていました。

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