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サン=テグジュペリ「夜間飛行」

最近、サン=テグジュペリの「夜間飛行」を読みました。
今は併録されている「南方郵便局」を読み進めている最中。

母からもらった文庫本。
現代の本屋で売っている本より、母が当時読んでいた海外小説の訳は少し堅い印象を私は持っています。
それは私自身の語彙力の問題であったり、時代の流れも影響しているのかと思うのですが。
だから母からもらった海外の本を読み進めるときには、腰を据えて読みます。自分自身が、物語の中で迷子になってしまわないように。

サン=テグジュペリの本は、小学生の頃に読んだ「星の王子さま」以来。
「夜間飛行」は随分前に母から随分前にもらっていましたが、
他の本を読んでいて、なかなか手をつけていませんでした。

読んでいく中で、この物語のテーマである人間の尊厳とは何だろうと、考えました。

当時、夜間飛行は危険な、でも人々の郵便を届けるには必要な仕事でした。
物語に出てくる操縦士は、ある夜、悪天候の中、任務に当たります。
その中で、もう命が助かる見込みのない中でも、彼は微笑をたたえ、
「光の牛乳」が流れる雲の上を飛ぶのです。

そして彼の上司に当たるリヴィエールという人物は、
その悲劇に打ちのめされ続けることなく、次の夜間飛行の続行を命じます。
ひるむ様子を周りに見せることないシーンで物語は終わります。

自分の命がいつ失われるか分からない、その任務に当たる操縦士たちの覚悟と、誇り。
命の危険と隣り合わせだからこそ映る、空から見た地球の美しさ。
それをありありと描いたこの物語。

冷徹に思える上司リヴィエールは、夜間飛行の続行を命じることで、
その操縦士たちの覚悟を、無駄にしたくなかったのかもしれません。
人間の尊厳というのは「命」や「権利」を尊重することだと、
今まで私は勝手に思っていました。
でも、もしかしたらそれだけではないのかもしれない。

人の「意志」や「覚悟」。それらを確証し、尊ぶことも、その「尊厳」に当たるのかもしれないと、今回読んで感じました。

作者であるサン=テグジュペリも、操縦士でした。
最後は第二次世界大戦末期、ナチスの戦闘機に撃墜されて地中海上空に散ったといわれています。
常に、命の瀬戸際にいた作者だからこそ、描けた物語。
そして、ところどころに、美しい描写が散りばめられています。それも、自身が実際に目にしてきたからこそ、選べた言葉たちなのでしょう。

今度、もう一度「星の王子さま」も再読したいです。
今度はまた違った角度で読めるような気がします。

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