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詩 「夜空に包まれて」

君と二人 少し離れて 夜空の下を歩く
少し涼しくなった風が 君の髪を揺らす
本当は 少し触れてみたい 手を取ってみたい
勇気の無い僕は ほんの少しの距離を諦める

ただ 他愛もない 心にも無い事を話して
気まずさを埋める事しか 出来ずに
そろそろ終わる 二人の時間に 焦りを感じた

ふと 見上げた夜空に 上弦の月が映っていた
僕は 思わず「つ、月が綺麗だね…」と呟いた

ふいに君は笑って 僕の手を取り
「ありがとう…」って 言ったんだ
首をかしげる僕に 君は
「それは 愛の告白でしょ…?」と微笑んだ

偶然にも 君が教えてくれたのは
かの 夏目漱石が 「I love you」は 日本人ならば
「月が綺麗ですね」
と 表現するだろう という事だった

そして 少し恥ずかしげに 俯いた君は
「ずっと前から月は綺麗でした」と告げたんだ
それは 君からの 愛の返事だったんだ

上弦の月が照らす中 
僕は そっと君を 抱きしめた



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