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ある晴れた日 【詩/幻想詩】

その日
あわてて飛び乗ったバスが
今日は経路を変えるという
前方の横顔が心なしか
蒼ざめて見える

うつらうつらしてる間に
見たこともない橋をわたる
丘を這いのぼる
ハンドルとアクセルは自由に動き
運転手は眠っている
こんなお日柄なら仕方がないと
行き先を変えてしまった
前脚がむずむずする

もう
なすがままに
カエルのうたが聞こえてくる
ありのままに

かれらの胴体はずいぶん膨れていて
畦道に入っていくと
瞳の色が変わっていた
次々に飛び込んでいく音
水の音

飛び込む音
水の音

飛び込めないでいる
僕らは緑色に染まり
いつのまにか
どの座席も
さみしい水底のように
揺れている

(2024.2.13 修正)

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