『九月が永遠に続けば』沼田まほかる

今年から、毎月一冊本を読んでいる。10年ほど読書から遠ざかっていたのだけれど、あまりにも無趣味なので再開することにした。今まで読んだことがない作家の、知らない題名の本を読む、がルール。もともとサスペンスは好きだ。テレビドラマでは「臨場」が好きすぎて、内野聖陽にめろめろだったこともある。ニュースで聞くと心が痛くなるようなことも、フィクションという枠組みの中でエンターテイメントにしてしまう人間は本当に好奇心、いや、もっとどろどろしたものが旺盛だと思う。

前半は平坦でなかなか展開しなかったので、途中で一回読むのをやめた。もう読まなくてもいいかな、と思った。週末、夫が漫画に夢中で相手をしてくれなかったので暇つぶしにまた読んだ。

結果として、夫が漫画が読み終わるのを待っていたはずなのに、ふと顔を上げると、夫はとっくに読み終わり、布団に入ってすやすや眠っていたのだった。

ふーん、という読後感だった。ふーん。なんかわたしの倫理観にそぐわないし、途中とかよくわかんないし、え?息子おかしくない??というか犯罪の言い訳が、わけわかんないな。ご都合主義。

夫が電気を点けっぱなしで眠っていたので、毛布にくるまって電気を消した。真っ暗になった。急にぞわぞわと何かに取り囲まれているような気持ちになった。目を閉じることができなかった。暗闇にだんだん目が慣れてきて、カーテンの隙間から表の街灯の光が細く見えた。明日のために眠らなきゃ。何度か瞬きをして諦め、夫に「くっついてもいい?」と小声で聞いて、答えを待たずに布団に潜りこんだ。

眠っている夫の腕にぴったり体をくっつけたまま、犯罪を被害者のせいにする、このご都合主義を知っている、と思う。
えっ、それ本気で言ってるの?と思ったセリフも知っている。痴漢に合った知人に言った、わたしの、あのひどいセリフも、10年ぐらい経った今でも覚えていて、ずっと後悔している。
話し手の女の息子が作中で「でも、セックスはしてないよ」と彼女に言い放つシーンがある。
そのセリフの違和感。父親の後妻と駆け落ちして、見つかって、母親に、まるで言い訳みたいに。

得体のしれない、どうしようもない、自分ではコントロールすらできない、劣情。

わたしは、この理不尽なご都合主義を知っている、と思う。
街中で、電車の中で、会社の飲み会で、大学のサークルや、高校の教室で。

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今年から久しぶりに読書を再開しました。本を読んで、考えたことや思い出したことを書きます。ネタバレは多分ときどきします。なんでも読めるようになりたいです。