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『3月のライオン』羽海野チカ

『3月のライオン』を1巻から14巻まで読了。絶対泣くから、と避けていたのに読み出したら止まらなかった。ゴールデンウィークだからいっか。

読んだけど、将棋のことは全然わからなくて、ただひたすら過去の自分と、今の自分と向き合ってしまった。

読書が苦痛になったのはいつからだろう。もっともっと前は、かくまってくれるただひとりの友人で、本を読むことも、本を読んで泣くこともひどく安心する行為だった。

多分それだけ、わたしが人生を右往左往してしまったんだろうと思う。桐山くんが「正論をふりかざす神の子」と作中で何度も呼ばれていて、わたしはどちらかと言えば正論をふりかざしてしまう方なのでよくわからない。大人になってやっと「よくわかっていないことがわかった」というのが正しい。のめり込むタイプなのだ。

今の仕事も、新人研修をしているが、桐山くんが悪口のように言われているのを見て、「どうも同じことをしているようだ」と気がついた。研修相手がよく泣く。話が伝わらない。妙ちきりんな持論を持ち出したり、楽をしようとしたり、意見を述べなくなったりする。面倒だなぁと思っていた。

でも気がついたんだけど、多分わたしの研修は、ことばを使った殴り合いなのだ。そしてどうやらわたしはかなり腕が立つらしい。おそらく、おそらくっていうかほぼ確定なんだけど、一方的にタコ殴りにしていたのかも知れない。例えば自分が、そういった研修や勉強会で殴られても、全然じゃなく普通に泣いたりしていたけど、でも平気だったから。それよりも知識を吸収したかった。知っていることが増えて、知りたいことが増えるのが本当に楽しかった。みんなそうじゃないらしいと気がついてはいたけど、実感としてはよくわからないのだ。夢中になると周りが見えなくなるのはいいのか悪いのか。

もうひとつ思ったことは、今年結婚をして本当によかったなぁということ。わたしは前述の通り、他人を理解する能力に乏しい。ということはあまり他人からも理解されにくい。学生時代は桐山くんのようにいつもひとりだったし、でも漫画みたいに無理やり手を差し伸べてくれる人はいなかったし、いても振り払ってしまった。桐山くんよりも、もっとずっと心を閉ざしてしまっていた。

わたしは彼のように頭が良くないので大人になってもずっと迷子で、本当に随分遠くまで旅をしたりして、そこでやっと、やっと世界が広がった。それは感動だった。生きていることが楽しい、とわかったのは、本当に素晴らしい出来事だった。うまく受け入れられなくて、「わたしはわたしのことが好きだ。なぜならわたしの好きなひとたちがわたしのことが好きだから」と泣きながら自分に言い聞かせた夜も、何度もあった。そして今年結婚し、わたしは初めて、ひとりじゃなくなったのだった。頼ったり頼られたり、困難に一緒に立ち向かってくれる、そういう信頼に足る、得がたいひとを得た。嵐のファンクラブに長いこと入っているんだけど、母や妹にはチケットが当たるのにわたしのアカウントでは当たったことがない。商店街のくじ引きも、忘年会のビンゴも。わたしはくじ運がからっきしだなぁと思って日々生きてきたけれど、これが運命だというなら、今後一生何も当たりがなくても構わない。そのくらい幸運なことだったと思っている。惚気。

たくさん読んで、もう朝方なのでシャワーを浴びて眠ることにする。

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今年から久しぶりに読書を再開しました。本を読んで、考えたことや思い出したことを書きます。ネタバレは多分ときどきします。なんでも読めるようになりたいです。