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「情報I」の学習指導要領解説に記載されている“ISOで規定された人間中心設計”とは。

更新:2021.1.8

ISOで規定された人間中心設計のプロセス

2022年度から高等学校の科目「情報I」が必修科目となり、「情報I」では、学習項目として「情報デザイン」が取り扱われます。

2018年に文部科学省から公開された高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説(情報編)では、「ア 社会における情報デザインの役割」にて、ISOで規定された人間中心設計のプロセスと記載されていますこのISOについて紹介します。

ア 社会における情報デザインの役割 (P.145)
ここでは,情報デザインの具体的な事例として,インフォグラフィックス,ピクトグラム,アプリケーションソフトウェアの画面のデザインなどを取り上げ,情報デザインには社会における情報伝達やコミュニケーションについての課題を合理的に解決するという役割があること,合目的性があることを扱う。その際,ISO で規定された人間中心設計のプロセスなどを取り上げ,情報デザインの作業の流れが,デザインを考えながら評価,改善を常に繰り返すことで,目的にかなうデザインに仕上げていくことを扱う。
※引用:高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説要領解説(情報編)

ISOで規定された人間中心設計のプロセス」は、内容的に ISO 9241-210(Elgonomics of human-system interaction -- Part 210:Human-centred design for interactive systems)が該当します。

日本語版(JIS規格)について

このISO 9241-210の記載は英語またはドイツ語ですが、日本産業規格化(JIS規格化)されているため、日本語でも読むことが可能です。このJIS規格名は、JIS Z 8530(人間工学--インタラクティブシステムにおける人間中心設計)です。※筆者は、このJIS Z 8530:2019の原案作成委員会委員でした。現在はNPO法人 人間中心設計推進機構の評議委員を担当しています。

JIS Z 8530は、日本工業標準調査会(JISC)のWebページにて無料で閲覧可能です。もちろん、紙面版やPDF版を購入することもできます。

規格書は、一人で読むと解釈が難しい場合もあります。複数人で輪読することもお薦めです。筆者はISO 9241-210がJIS規格化されたことを切っ掛けに、読書会を開催しています(次回7/18で一通り読み終える予定です)。

参考情報について

・ISO 9241-210のポイント(スライド)
※ISO 9241-210は、2019年に改定(ISO 9241-210:2019)されましたが、本スライドは、規格の概要を知るために有用です。

・人間中心設計の推進団体について

・人間中心デザイン基礎知識体系について
ISO 9241-210/JIS Z 8530は、コンピュータやスマートフォン等のインタラクティブシステムを対象とした人間中心設計の規格ですが、行政、教育、医療等の現場における人間中心デザイン(※)の拡がりを背景に、非専門家(人間中心の考え方について各領域にて自ら活用を試みる人、ならびに人間中心デザインの専門家・実践者との橋渡しをする人)の教育カリキュラム作成を目的とした人間中心デザインの基礎知識の体系構築も始まっています。

※領域の拡がりに伴い、設計の範疇に収まらないため人間中心デザインと表現

おわりに

今回ご紹介した ISO 9241-210 /JIS Z 8530については、高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)でも触れられていますが、規格書を読むことで、より具体的な人間中心設計の内容や特長を知ることができます。

おそらく、指導要領解説を読んだ先生方が「このISOとは何ぞな」と思われる予感がしたため、本記事を書きました。もし、どなたかが「情報I」の授業の準備で、情報デザインや人間中心設計について調べている際に、この記事が役立つことができたとしたら幸いです。

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