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声を電波に載せるということ・・・Ep1

半世紀前の頃・・・
ダイアル式の黒電話が
ジリーンジリーンと鳴る

商売している我家は
早くから
電話が引かれていた

向こう三軒両隣
そちら宛ての電話であれば
「電話ですよ」と
走って
呼びに行くのは
子どもの仕事

隣の人が
電話をかけに来る時は
3分タイマーをかけて
話し始める

そんな頃もあった

四半世紀前の頃・・・
電話機は
モスグリーンの
プッシュ式になったけれど
かかってくる電話は
受話器を取るまで
誰からかかってきたのかは
わからなかった
だから
「もしもし」と
話し始めて
ガッカリしたり
ドキドキしたり・・・

そして
かける時は
「〇〇です」と
名告る必要があった
かけたい相手が
電話に出ることは少ない
「〇〇さんいらっしゃいますか?」と
問う必要があった

とりわけ
恋しい相手への電話は
呼び出し音を一回聞いて
一度切る
二回聞いて
もう一度切る
三回聞いて・・・
モヤモヤと
ドキドキのエンドレス
それくらい
電話一つに
「勇気」が必要だった

そんな頃もあった

だから
私は
ずっと
「電話」が苦手だ
キライだった

声を電波に載せるということ

・・・そのことがよくわかない
何がなんだかわからない

「声」は
思いを
考えを
苦しみを
救いを
愛しさを
表す・・・乗り物

その乗り物を
また
電波に載せてたりして
「真実(ほんとう)」は
伝わるのか

現在(いま)手にしているスマホを
見つめながら
考えている
何かを
自分から
取り出そうとしている