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🇨🇳#15 長春でラストエンペラー溥儀のお宅にお邪魔する

4月15日、遼寧省・瀋陽。
この旅で初めての土砂降りの朝を迎えた。
さて、困ったぞ。
「都会では…じさつする…若者が増えている…」つまり、「傘がない」
いや、実はわたし、数日前まではお気に入りのドラ⚪︎もんの日傘を持っていたのだ。
しかし、あまりに荷物が重いので、また、完全なる日傘なのに、3年間むりやり晴雨兼用として使ってくたびれてしまっため、この傘を思い切って山西省の地で手放したのである。
また、自分の頭の上にだけは雨が降らないような、謎の自信もあった。

しかし、わたしはまだツイている。
瀋陽のホテルの真向かいに地下通路の入り口があるのだ。
そして、その通路は鉄道駅に繋がっている。
手放したばかりの傘を買うのは癪なので、わたしはダッシュで地下通路に潜り込んだ。

吉林省・長春までは遼寧省・瀋陽から新幹線で1時間半。
これまでの経験でいけば、省を跨いだら天気はガラッと変わるはずだ。
長春は晴れに違いない。
下車してみると、
うん、相変わらず土砂降りである。
こうしてついにわたしは観念して200円のビニール傘を購入したのだった。

めちゃくちゃ広い敷地

さて、本日、長春でのお目当ては、ラストエンペラー・溥儀が住んでいた宮廷である。
2歳で皇帝になり53歳で戦犯になった、時代に翻弄され続けた男だ。
18歳で国鉄職員になり、21歳でチェッカーズのリードボーカルになった藤井フミヤにもびっくりだが、溥儀はその比ではないと思われる数奇な人生を送っている。

わたしが語るまででもないが、簡単に溥儀の人生を5つのタームに分けて振り返ると以下のようになる。

1️⃣紫禁城時代

顔が龍に似てるといわれていたそう

親戚の西太后に指名され、2歳で清朝皇帝に即位。
しかし3年後辛亥革命で中華民国ができたので引き摺り下ろされる。が、たぶん本人子どもなので気にしていない。なんならもう一回皇帝になって、また辞めさせられる。
一応軟禁状態とはいえ、紫禁城で優遇され、ワガママ・贅沢放題で暮らす。
16歳で2人の女性と同時に結婚する。

2️⃣天津時代

スポーツが好きだったみたい

中華民国からの優遇が取り消されて、ついに北京を追放される。
とはいえ、自分もお付きの人達も今更よい暮らしをやめられないので、日本に相談、天津の日本人疎開地に身を寄せる。
ちなみに奥さんを雑に扱っていたら、不倫されて他所の男の子どもを産まれ、さらに彼女はアヘン中毒になってしまう。
もう1人の奥さんも放っていたので、離婚される。

3️⃣ 満洲国時代

ちょっとわるそう

なんかいろいろ世の中の雲行きヤバそうなので、こっそり天津を脱出。
関東軍が起こした満州事変によって誕生した満洲国で、清朝の復活を夢見て、皇帝に返り咲く。
しかし実際は自分の思い通りにはならず、日本の傀儡皇帝としてお飾り状態になる。

4️⃣戦犯時代

15年の勾留生活で彼は何を思ったか

ソ連が攻め込んできて満洲国崩壊。
日本に逃げようとするが、戦犯として捕まってソ連に送られる。ソ連で5年抑留生活を送る。
その後、中国に引き渡されてだいたい10年間収容所に入る。
ついに本当の「辛酸を嘗める日々」を過ごす。

5️⃣一般市民時代

よかったね

特赦によって解放され、北京植物園で庭師になり、一般市民を楽しむ。
しかし、67歳、腎臓ガンから尿毒症になって他界。
ちなみに、満洲国時代にまた2回若い女の子と結婚したがうまくいかず、最後は看護士さんと結婚して余生の数年を幸せに暮らした。

人生いろいろね

決して正義のヒーローとはいえないが、幾多のピンチを乗り越えて器用に生き延びたのがすごい。
皇帝の血によって苦しみ、また皇帝であったがゆえに生かされた感がある。

さて。皇宮博物館の中はというと、このようになっている。

わざわざ設けたというピアノ室

傀儡皇帝としてのやり切れない日々の中、溥儀はストレス発散のため、北京時代に覚えたピアノを弾いていたらしい。

ビリヤード場

また、溥儀は暇な時、宮廷の学生たちとビリヤードをし、学生たちはいつもわざと溥儀に勝たせてあげていたそうだ。
こんな恥ずかしい話を、あとから暴露しないであげてほしい。

日本にも大量に持っていった金平糖

溥儀は金平糖がお気に入りだったという。
部下や客人によく配っていたそうで、関西のおばちゃんが事あるごとにくれる「あめちゃん」的感覚だったのかもしれない。

でも、日本語があってありがたい

日本語翻訳にだけ翻訳者の個人的な感情が見て取れるのは気のせいだろうか。
一文字でニュアンスが変わるのだから、やはり、日本語という言語は難しい。

ちなみに溥儀は死期を迎える際、「チキンラーメンが食べたい」といったそうだ。
わかる、わたしも今、なぜか無性にシーフードヌードルが食べたいから。

人間、命のためにはうそもつくのかもしれない

わたしの溥儀に対する感想としては、人間に権力を与えて甘やかすとどうなるか、命の危険にさらされると何をするか、苦労をするとどう考えるか、壮大な人体実験を、一人の身で受け止めたような男である。

そしてそんな色濃い思い出全部吹っ飛ばして、最後に心に浮かんだのが「チキンラーメン」というのも、やけに人間らしい。

こうして、ラストエンペラー・溥儀に妙な親近感を抱いた、生まれも育ちも平民のわたしであった。

昼ご飯編

今日も朝鮮料理の牛肉スープ

ついに東北最終省、ハルビンへと向かう。

現在の総移動距離 約13510km
現在の33地域クリア率  33分の13
降り立った都市 17
①上海②新疆ウイグル自治区(カシュガル/ウルムチ/トルファン)③甘粛(敦煌/蘭州)④青海(西寧/海南チベット族自治州)⑤寧夏回族自治区(銀川)⑥陕西(西安)⑦山西(平遙)⑧河北(石家庄)⑨内モンゴル自治区(フフホト/ウランチャブ)⑩北京⑪天津⑫遼寧(瀋陽)⑬吉林(長春)
飛行機  3回
新幹線  7回
寝台列車 4回
普通列車 0回


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