部屋や机の整理度合いと成績の相関関係に関する考察-人生に活かせる受験勉強法-

1 はじめに 
 よく自己啓発本やライフハック的な記事、勉強法に関する本などで時折みられる一つの見識がある。それは、「部屋や机の周りを奇麗に整理整頓できる人ほど学業や仕事の成績が良い」というものである。この見識については「部屋が乱雑な方が独創的な発想力を発揮できる」だの「成績と部屋の整理具合に相関関係はない」だのといった意見も見られるので、一概にこうだと断言することはできない(それこそ「人による」としか言えないかもしれない)。ただ、個人的な経験と偏見から言わせてもらうならば、「部屋や机周りが乱雑な人ほど学業成績については受験勉強という文脈で好成績を出しにくい」ということはある種の真実を述べているのではないかと思っている。事実、司法試験に落ち続けてた私自身が実感していることでもあるからである。また、ロースクールの自習室を少し観察してみても、荷物の多い人は早期合格ができずに苦労している印象がある。そこで、今回は何故部屋や机周りが乱雑な人が受験勉強で苦労することになるのか、考察していきたいと思う。

2 自分の周りの整理ができない=頭の中の整理ができていない!?
 部屋や机の周りが綺麗に整理整頓されているということが具体的にどういうことかといえば、おおよそ①不要なものが自分の目につくところに置かれていない(ゴミはすぐに捨てられている)、②必要なものは適切に分類されている、③一度出したものは元の場所に戻す…といったことが挙げられるだろう。自分の手元にある物を適切にコントロールしているともいえよう。逆に整理整頓ができずに自分の身の回りが乱雑になってしまう癖のある人というのは、とりあえず自分が使っていたものを目の付いた空いている所に置いていき、それが気づかぬうちにどんどん積み重なって山のようになってしまっていることだろう。このような山を作ってしまうのは自分が使っている道具や資料を自分の中で適切にカテゴライズする癖が身に付いていないことが大きな原因と思われる。
 一方、部屋や机周りが煩雑な人が受験の成績も伸び悩んで苦しんでいる場合、頭の中で同じような現象に捉われているように思われる。効率的に受験で好成績を残せる者というのは、おおかた受験において合格に必要な知識というものを制限時間内に瞬時に引き出す訓練を十分に積んでいるものである。短期で合格する受験生は、まず合格に必要な知識というものを①合格するために絶対に落としてはいけない知識、②合否を分ける重要な知識、③合格するために必ずしも必要ではない知識、④受験勉強という文脈においては不要な知識、といった具合に知識を仕分けするものである。受験勉強でつまずく人はこの最初の知識を入れる段階で仕訳をせずに何でもかんでも順番に頭の中に入れようとするから、形式的な受験知識の量に圧倒されて挫折してしまうのである。また、合格する受験生は覚える量を実質的に少なくできるよう、体系的に・有機的に・立体的に理解して知識を使いこなす訓練をすることを忘れないものである。知識を入れられたとしても、それを受験の本番で適切に引き出せなければ最初から知識が無いのと同じである。あるいは、自分で基本書を読んだり講義を受けても、それだけで本番に通用する実践力が身に付くわけではない。受験というのは知識を備えていることを前提にその知識を使いこなせているかが試される場だからである。インプットばかりして成績が伸び悩んでいるのならば、自分の頭の中に入っていると思っている知識を本当に自在に引き出せるかアウトプットの訓練をしてみることをオススメする。アウトプットとしては問題集や過去問を用いて知識の確認をするというのが王道だと思われるが、個人的にはそれだけでは不十分だと思われる。こうした知識の確認の仕方というのはAの知識をAという方向から引き出すだけのものであるが、受験の本番というものはAの知識をBやCといった方向からも引き出せるかということが試されるからである。
 では、Aという知識をBやC…といった方向からも引き出せるようになるための、知識の引き出しを上手く整理整頓する実践的な方法は何かないのだろうか。

3 片付けの前提となる頭の使い方の訓練紹介
 そこで、個人的にお勧めしたい知識の整理・確認の仕方として、以下のような方法を紹介したい。
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<用意する物>
・白紙の紙(サイズは基本的に何でもよいが、慣れればA4サイズがオススメ。慣れないうちはサイズの小さい紙で試してみるのも良い。用いる紙はノートでも裏紙でも可)
・ペン(色は基本的に2色。黒や青など最初に書き込む色と、赤など修正用の色を用意するといい)
・教科書、基本書、参考書、テキスト、問題集、過去問等(適宜)
<具体的な方法>
①紙の真ん中にメインテーマとなる単語、概念、用語、論点を書き込む
②メインテーマに関係する(類似するもの、反対・対立するもの、具体的なものあるいは要約したものなど)別の単語や具体的な論述、場合によっては図表やイラストなどを放射状に自由に書き連ね、メインテーマとどのようなつながりがあるのか自分で矢印など分かるように結びつける
③自分が思いつく限り②を繰り返す
④思いつかなくなった時点で基本書や解説などで上記①~③の知識に漏れや間違いがないか確認する。間違いや記載漏れがあれば最初に書き込んだ色とは異なる色のペンを用いて修正する(この修正部分が受験という文脈で自分が重点的に学修すべき分野である)
⑤後日、上記④の修正部分まで正確に再現できるかもう一度①~③の作業を行う
⑥修正や追記が必要でなくなるほど①~⑤の過程を繰り返す
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 上記の方法は「メモリー・ツリー」や「A4白紙法」といった名称で取り上げられていたりするので、そちらの名前で検索するか関連書籍の該当箇所を読んでいただければ私の説明の良い補足になってくれると思われる。

4 必要十分が分かれば自然と不要なものの断捨離もできるようになる
 上述したような訓練を積む等して受験合格に必要な正しい努力を自然と身に付けることができれば、自ずと合格に必要十分な知識の量が皮膚感覚で分かるようになっていくはずである。逆に言えば、合格するために必ずしも必要ではないテキストや課題といったものが浮き彫りになってくるものである。こうした不要なものを思い切って断捨離することで物理的にも精神的にも余裕が生まれたり、新しく必要になったものを保管して置くスペースを確保できるようになるのである。こうした頭の使い方・発想の仕方を知り実践を重ねることで自然と身の回りの整理整頓の仕方にも応用していただけでば幸いである。

5 受験勉強を通して人生や生活が向上する訓練を、逆に整理整頓術を受験勉強で応用できるように
 長かった司法試験の浪人生活を経て実感したことは、受験生という社会的身分を有している期間は長い人生の中でもごく一部ということである。どうせ受験生という身分になるのならば、その短い期間で得た者はその後の長い人生においても役に立つものを身に着けたいというのが人情というものである。もちろん、目指す試験に合格できればそれ自体が成功体験として自信につながったり受験勉強を通して身に付いた知識がその後の進路や仕事で役に立つことは言うまでもないが、仮に試験に合格できなかったとしても正しい努力の方法論を身に付けることができたのだとすれば形を変えてその後の人生に役立つことはしばしばある。今回は受験勉強における知識の整理の仕方と整理整頓の話を絡めて持論を展開してみたが、受験に限らず「学び」において何より重要なことは「何を学んだか」というよりも「学習の姿勢がどれだけ自分の血肉となり使いこなせるようになったか」であると思っている。時間が経過し一度記憶した知識自体は忘れてしまったとしても、知識を定着させる過程で身につけた方法論自体は体に染み込むものである。それに、正しい方法論が身に付けば忘れた知識をもう一度思い出し、それを忘れないようにすることも最初のころに比べるとずっと容易になるものである。
 現在受験勉強に勤しんでいる人も、これから受験勉強を開始する人も、そしてかつて受験勉強で苦労した人も、自分の経験を通じて今後の人生がより良い方向に進むことをささやかながら願っている。
 
 

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