shishi raizou

料理人、猫、映画、本

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最近の記事

前田弘二監督『まともじゃないのは君も一緒』(21)

( 前田弘二監督の新作『こいびとのつくりかた』公開にあわせて、過去エントリーの再投稿・その 2です。 ) * 車道に沿って伸びる、街路樹が繁った、ゆとりのある広い歩道。ああいうのは何と呼ぶんだろう。都会にありながら森林の気配を感じることのできるあの空間が何度も登場し印象深く、二人は噛み合わない会話をかわしながら、そこを幾度となく歩く。 冒頭とラストの森林の場面は、自然に溢れた山奥の設定なのかも知れないが、感触としては街からヒョイと入ったところに現れる、浅い林の空気。

    • 前田弘二監督『くりいむレモン 旅のおわり』(08)

      ( 前田弘二監督の新作『こいびとのつくりかた』公開にあわせて、過去エントリーの再投稿・その 1です。 ) * 90年のじんのひろあき版『櫻の園』(以下、じんの版)が嫌いでした。ひっくるめていうと、これみよがしなやり口に反発をおぼえてたし、女の子たちが素材としても描き方としてもちっとも魅力的に思えなかった。 で、リメイクとなった関えり香版『櫻の園』(以下、関版)を期待して観てみたら、当時じんの版を否定していたことをすこし反省した。関版は、冴えたところのないテレビドラマだと

      • [アルバム] 西口プロレス9月大会@新宿FACE 2023.9.26

        • 実写版『ドカベン』は続編ありきだったのか

          漫画が実写化されるたび、原作とイメージがちがうだの改悪だのと、何かと批判にさらされる昨今の狭量な風潮。 あの三池監督でさえ有名原作漫画の映画化を手がけるときは、ションボリとした、とけた冷凍食品みたいな精気のない映画を作ってしまいがちです。 かつて、80年代あたりまで、マンガの実写化だったら何でもござれだった鈴木則文監督が、今生きていてしかも現役だったとしたら、やはり批判を浴びていたのだろうかと、時々考えることがあります。 〈わたしが漫画原作の映画化に取り組んだのは七七年

        前田弘二監督『まともじゃないのは君も一緒』(21)

          今野勉『テレビマン伊丹十三の冒険』を読む 1961年の大江健三郎/1984年の黒沢清

          『テレビマン伊丹十三の冒険 テレビは映画より面白い?』は、俳優、エッセイスト、映画監督など多面的な顔をもつ伊丹十三の、テレビマンとしての側面にスポットをあてた、テレビでの仕事を多く共にした今野勉による一冊です。 当然ながら、テレビ仕事についての挿話はいろいろと興味深く読める反面、その他の分野については、ちょっとどうなのかと思えるところが、ありました。 *** 1.大江健三郎 〈ウォルター・ブリッジという橋()の袂にナショナル・フィルム・シアターというのがあって、()

          今野勉『テレビマン伊丹十三の冒険』を読む 1961年の大江健三郎/1984年の黒沢清

          いまおかしんじ監督『天国か、ここ?』@ケイズシネマ新宿8.28 トークショー内容

          18:40の回の『天国か、ここ?』上映後、いまおかしんじ監督特集上映の旧作『つぐない 新宿ゴールデン街の女』の上映前のあいだの時間にトークショーあり。登壇者は向かって左からいまおかしんじ監督、『つぐない』(14)の出演者3人、速水今日子、工藤翔子、貴山侑哉。 トーク内容はほぼ『つぐない』製作時のふりかえり。 まずは左からひとりずつ、いまおかとの関わり。 いまおかが速水を認識したのは女池充の『花井さちこの華麗な生涯』から。あれ、(現場に)いました?という速水に、イヤ、映画

          いまおかしんじ監督『天国か、ここ?』@ケイズシネマ新宿8.28 トークショー内容

          2023年の福間健二さん

          2023年5月1日、TLに訃報をつげるツイートが流れてきた。〈悲しいご報告です。4月26日に福間健二が亡くなりました。3月に脳梗塞で倒れて命をとりとめ、回復してもうすぐ転院というところでした。きのう近親者のみで見送りました。詩と映画と文学と大学、そしてわが町国立で、長きにわたりご厚意と友情をいただいたすべてのみなさまに感謝いたします。〉(福間恵子) 呆然とした。いろいろな感情、いろいろな言葉があった。その後、7月に「福間健二さんを送る会」がひらかれ、『現代詩手帖』『映画芸術

          2023年の福間健二さん