傾国のニュータイプ

中国の歴史などを見ていると、「傾国」と呼ばれる女性たちが出てくる。国が傾くほどの絶世の美女、という意味だ。コーエーの「三国志」でも、女性キャラの能力に「傾国」なんてものがあったりもする。

特に有名なのはやはり唐の楊貴妃だろうか。もともとは玄宗皇帝の息子の嫁だったが、親父がゾッコンLOVEとなってしまって、ついには皇后になっちゃうという女性だ。詳しくはWikiなんか見てみるとすごい。化粧代として毎月10万銭もらってたとか書いてある。中国の言う10万とかはまあ超すごい額くらいの意味だろうけど、とにかく寵愛を受けまくる。で、楊貴妃の働きかけで親族を重用させるなどしたため、反乱起こって唐はエライことになっちゃうという結末を招く、と。

もっと時代は遡って春秋戦国時代、呉と越の争いのエピソードにも「傾国」と評される西施が出て来る。田舎娘であった西施だったが、その美貌を見初められ、越の軍師・范蠡によって、越王勾践、ではなく、敵国の呉王夫差に差し出される。美人を持って夫差を堕落させちまおうという計略に使われたのだ。いろんな手練手管を学んで送られた美女・西施によって見事堕ちた呉王夫差、まんまと越に負けてしまう、というエピソード。こちら、呉には「孫子の兵法」でも有名な孫武や伍子胥といった名将が出てたり、臥薪嘗胆の言葉のエピソードがあったり、いろんな人間模様が描かれていて、物語としても面白い。

「傾国」だけでなくて、中国には「悪女」とされる皇后もいたりする。漢を建国した劉邦の妻・呂雉は漢建国に功績のあった名将・韓信を殺しちゃったり、旦那がなくなった後の跡継ぎ争いでのゴタゴタでは、ライバル側の母親をとんでもない仕打ち(これもwiki参照 )にしたりと、とにかくひどい。

まあ、こんな女性の存在や、それを取り巻く人間の権力争いやなんかで、中国の王朝が傾いちゃっうってのは結構あるわけで、政治権力の世界は恐ろしい。日本でも江戸時代の大奥を巡る物語なんかは、まあ中国の歴史に負けず劣らずドロドロしていたっぽい。

で、時代は現代。

21世紀になって、「傾国のニュータイプ」がよりにもよって日本に表れてしまった。懸命な読者であれば、誰のことかすぐにわかるだろう。

彼女は「傾国」という言葉が表すような絶世の美女では決してない。にも関わらず、国を見事に傾かせている。「ニュータイプ」というのは、まさにそこだ。

軽率などという言葉では表現しきれない無神経さ、そして悪意の無さ。これがお嬢様ゆえの為せる業なのかどうかは定かではないが、とにかく見境というものがない。

もちろん、彼女は彼女なりに、日本や世界が善くなるようにと頑張っているのであろうと推測されるのだが、それがとにかく裏目にしかでていない。

もはや才能とも言っていいほど、彼女が行動すればするほど、周囲に混乱、いや混沌をもたらしている。

何より恐ろしいのが、彼女に悪意が全く感じられないことだ。例えばその夫である人物やそのお友達の面々を見ればおわかりだと思うが、そこには確実に悪意がある。それは自分たちの都合をなんとしてでも押し通そうという意識だ。しかし彼らはどこかで自分たちのしていることは、悪いことだと理解している。もちろんそんなことは口に出して言えないが、だが、森友問題を見ていればそれは火を見るより明らかだ。

だが彼女にはそんな悪意がない。自分のしていることが悪いことであるという意識がないということは、非難されても「私なんで怒られているの?」というように、それが全く理解できないからだ。世のため人のため、頑張って活動する。そこには微塵も悪意がない。だから、それが世のため人のためになっていないとしても、それを理解することができないのだ。これは悪意がある人間以上に恐ろしいことなのではないだろうか。

彼女を「悪女」ではなく「傾国」にカテゴライズしたのもそれが理由だ。

スピリチュアルに傾倒したりとトンデモ評価も非常に高いわけだけれども、もはやそんなレベルではない。なにせ彼女の言動によって、国は1年という年月を無駄にしてきている。官僚は文書の改ざんを余儀なくされ、現政府は、存続を危ぶまれる窮地に立たされている。もはやこれは「国難」といっても過言ではない。

まさに彼女の属性は「傾国」なのだ。それも、歴史上類を見ない、新しいタイプの。

そういう意味で我々は今、傾国のニュータイプによって国家が脅かされるというという、歴史上の大きな転換点に立っている。

彼女の持つ「傾国」属性が勝って日本が滅ぶか、あるいは反安倍勢力が勝って、この混沌に終止符を打てるか。

私には生暖かい目で見守ることしかできない。


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