泣いても笑っても今日から新学期
もう深夜の2時をまわってしまった。
日が昇れば、春学期が始まる。
再履修でいっぱいの時間割を見ながら、深呼吸をする。
空気を吸っているはずが、肺に溜まっていくのは重い重い何か。
夕食後に飲んだ薬もまだ効いてこない。
わたしはこの半年間、大学に行けなかった。
一日中ベッドの上で、窓の外を季節が流れていくのを見ていた。
自分がわからなくなったし、何がこうさせているのかもわからなかった。
寝て、起きて、お腹が空いたら買いだめの缶詰を食べて、また寝て。
何も考えたくなかった。何も考えられなかった。
大好きなダンスを泣きながら辞めたこと。家から出ると過呼吸になったこと。LINEや学内メールを開くのが怖くて放置したこと。人に迷惑をかける自分が嫌で自分を傷つけたこと。病院に通うようになったこと。薬が増えたこと。
半年間で、いろんなことがあった。でも、親友にすら言えなかった。自分が何で悩んでいるのか、そもそも悩んでいるのかすらわからないから話のしようがなかった。
そのせいか、人との話し方がわからなくなって、最近人と話すたびに
「あれ?今の相槌おかしいよな?」「こんなカタコトの標準語で話す人間だったっけ?」と頭の中がごちゃごちゃする。自分が、怖い。
実は、後期試験の時期も過ぎた2月、受けたかった集中講義があり、わたしは久しぶりに大学に行く覚悟を決めた。
明日の準備もして、目覚ましをセットして早く寝た。
当日。家を出ようとすると過呼吸になった。
また、行けなかった。
絶望と、後悔と、自分への怒りが腕に向かった。
起きていると苦しくて、とにかくずっと寝ているしかなかった。
その1週間が、キツかった。
ようやくこの2、3週間で薬が少しずつ合ってきて、生活習慣が整い始めた。
裏切られるのが怖くて持ちたくなかった希望が、少しずつ見えてきた。
日付がまわって、今日から新学期。
朝、予定通り起きられるかな。家を無事に出られるかな。
教室に入って、席に着けるかな。90分、座っていられるかな。
友達に会った時、うまく話せるかな。家に、ちゃんと帰ってこられるかな。
本当は、今にも泣きそうなくらいに不安だ。
半年間眠っていたわたしが、退学まで考えたわたしが、新学期から毎日大学に通えるんだろうか。秋には実習に行けるのだろうか。
まずは明日、教室に行けたらそれだけで自分を褒めてあげたい。
家に帰ったら大好きな野球を見て、アイスを食べて、あったかいお風呂に入ろう。
そして、どうなったとしても、今度は自分を抱きしめてあげたい。
新学期が、わたしの春が、始まる。
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