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勲章としの人生

   私の人生の時間は全て私のもの。
 社会の様々な影響を受けて体と心が縛られる時間もあるが、それを取り除いたら最初から最後まで私は全てのことを選択できる。
 
 私のこの人生は全て私のもの。
 生まれてから死ぬまで全てが思いのまま、自由気まま、自分勝手なまま。
 当たり前。私は多くの猛者を相手に勝ち抜いたチャンピオンなのだから。
だけどなんで?
 何で私は迷っているのか、苦しんでいるのか、悲しいのか……
 うん、難しい。人間としてただ生きているだけで難しい。
 たった一回の人生だと言われるが、そこまで大切には思えない。
 目標を持って臨めと言われるが、目標なんて思いつかない。
 平和が一番と言われるが、私の心の中は荒れ放題。
 この矛盾、私だけの矛盾?私の人生はこんなものなの?
 周囲に存在する連中の圧力に押し潰され、社会の情報量に押し潰され、恥ずべき私の心の薄っぺらさに押し潰される。
 これがチャンピオンの進むべき道なの?
 これなら敗者となって崩れ落ちていたほうがよっぽどましだったのかもしれない。
 私は敗者になれなかった。誰かに蹴落とされることもなく優勝した。
 故に私はチャンピオン。必死に競走した思い出もなく、優勝を勝ち取った喜びすら忘れてしまったチャンピオン。
 人間として生まれる前の記憶は全くない。ただ科学的にチャンピオンだと証明されているだけ。
 ただ生きている。何もこの人生には期待せず、前向きにもなれず……
 だけど、このチャンピオンの報酬として受けた私の人生、この中では私の選択で全てが動く。
 私にも生きる意味がきっと見つかると信じ抜いて前に進む選択肢もあり、チャンピオンとして敗者たちから託された願いを背負って歯を食いしばって頑張る選択肢もあり、チャンピオンの勲章を放棄して今から人生そのものにピリオドを打つ選択肢もあるだろう。
 何もかもに正解はなく何もかもが間違えじゃない。
 そこまで含めての人生。私のこの人生は全て私のもの。
 私は強く生きよう。強い意志をもって生きよう。記憶は全くないが、猛者たちを相手に勝ち抜いた時の必死の形相で人生を生きよう。
 それが私というチャンピオンの生き方、孤独なチャンピオンになった宿命。

 

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