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この家どうするの?(44) 葬儀屋さん今昔・24「終のすみか」

ひとりで父をおくる。いずれは、この日が来るのだ。やっと来たのか、もう来たのか。斎場でのひととき走馬灯。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1163文字)


実感がない

あくまでも個人の体験です。不謹慎な内容がふくまれます。ご容赦ください。

2時間ほどの空白。白いテーブルとイス。天気もよく明るい斎場の空間にいる。あまり実感がないのは、父と交流がなかった……こころの。

昭和の父子家庭なんて。はずかしかった。恥という字は耳に心と書くくのか。いまごろ気づいた。
会話もなく、なにも聞こえない、心のない家。おたがいの……深いところはわからない。


どんな親子でも、この世での終わり・おわかれが来る。この図式は変わらない。


火葬場にひとりで。親戚づきあいもなく、もめごともない。娘も将来、同じ状況になる。あたふたしないよう「伝える」ことはしておこう。
わたしと父の失敗だったから。
家族の死。なんとも思わないわたしは、きっと鬼のような姿だ。

 



ワンポイント・リリーフ

「文庫本でも持ってくればよかったか」
火葬のあいだ、ひまをもてあます。缶ジュースもゴクゴク飲みほした。不謹慎さをまき散らしているとA葬祭・社長さんがやって来ました。


社長さんは、どこかで時間つぶしてたのかな? それともリモート業務とか?


聞きはしなかったが、要所要所で出てきてくれる。ワンポイント・リリーフ鹿取選手じゃないか (むかしの巨人の投手)


2時間ほど。いや1時間半ぐらい経ったのでしょう。社長さんと、また火葬炉の前にもどる。職員さんも立っています。


父を銀河に送った職員さんは、また父を迎える。おかえりなさい、声なきアナウンス。
両手に力を込める、ふたたび重い扉に向かい。


「お骨上げ」とよばれるシーンだ。
これは祖母のときと変わらない。どんなにお葬式がコンパクトになっても、ここは変えようがないのでしょうね。


遺族によっては涙に暮れ、すべての動きが止まる。さきへ進めない。家族葬などで少ない人数だと時間もかかる……それで社長さんも同席するのだろうか。無言の効率化。



ついのすみか

父もびっくりしただろう。葬儀屋・社長さんに事前に申告、いや注文した「白い陶器」に入ってしまった。いちばんちいさな骨壺。ハクション大マ王のように。クシャミ注意や。


自分の持ち家から骨壺へ、すみやかに引っ越し。
終の棲家って「骨壺」だったんだ。


この「骨壺」を見た、のちに家に来た近い親戚がコメント。
「ちいさくて可哀想。もっと大きいのにしたら良かったのに」
たいへんだ親戚ってのは。葬儀でモメる世間の一端を感じた。


心のなかで勝手に名言。
わかるかなぁ、わっかんねぇだろうなぁ。


「断舎利」



毎週金曜日は
「親の持ち家の日」
つづきます


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに 

さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

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