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この家どうするの?(36)葬儀屋さん今昔14「収納ケースとワイヤーラック」

押し入れ、たんす、本棚。家具らしきものは開けて中身を出して、さがしました。ちっちゃい一軒家の亡父の家。預金通帳と年金手帳は、いずこ。
(1040文字)


収納ケース

父にとって貴重品の「預金通帳と年金手帳」。家の1階には、ないはずだ。2階にアタリをつけてさがす。


押し入れ・洋服タンス・和ダンス・本棚。家具はこれだけ。出てこない。あとあるのは、ワイヤーラックと、収納ケース。


収納ケースは、半透明のコロコロがついた大きいもの。10個ほど。
大きいから「個」の単位でいいのか、わからないが。ワイヤーラックに、ごそりと置かれていた。


5個はカラで重なって積まれている。フタも重なっていた。日焼けなのかホコリなのか、きな粉みたいに黄色かった。


たぶん……だけれど、昭和の人間がプラ容器に「預金通帳と年金手帳」を入れているとは思えない。
でもまあ、確認。残りの中身入り5個を開けてみる。


古いシーツ・バスタオル・いたんだカーテンなど。セーターやシャツの古着類。洗車用に集めていたのか? それとも処分を忘れていたのか。パパッと見て終了。


ワイヤーラック

シルバーにかがやくワイヤーラック。昭和には、なかったと思う。会社用の棚・重いスチールラックならあった。それのオシャレな平成版の家具といったところだ。


整理・収納で使い勝手がよいのかスチールラックは、もうひとつあった。こちらも、ちいさなケースに電球やら、電池やらホームセンターで買った小物がさびしく収まっていた。


これぐらいしか見るところはない。
あとは、畳をめくるとか、額縁のウラとか……。いやそんな凝ったところや、めんどうなトコロにはない。


父が、むかし持病の心筋梗塞で入院したときだ、
「裏庭の工具箱の下の土を掘ったところ、ビニールでつつんで封筒にいれた現金がある」


マンガみたいな面倒なところに「土中貯金」をしていた。さすがに、手も汚れるしお金も傷むし、やめてくれと苦情を出した。
たとえ、ジップロック(密閉袋)があっても、なかっても。


タンス貯金みたいな現金は、あざやかに刑事さんが回収と返却。なんで預金通帳と年金手帳は見つからなかったのか?
交流のない娘と父の孤独死の顛末てんまつがこれ。

87歳の老人が取りやすいところはどこだ?


忘れないところは、どこ?


もう、土を掘るしかないかな……
ワイヤーラックから声が聞こえた。

ワイヤー……わいや……。


毎週土曜日は
「親の持ち家」の日


いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに

さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。

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