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この家どうするの?(38)葬儀屋さん今昔17・いよいよ

 明日は、父の火葬の日。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。個人の体験と感想文です。
孤独死の父。預金通帳と年金手帳が出てきた。貴重品のすべてでした。
(1475文字)



とにかく安堵

 親子の交流はなくとも戸籍は真実。父は離婚後、再婚はしていなかったようだが、今後は真実がポロポロと出てくるかもしれない。


うちは貧乏な庶民。投資や不動産その他なにも所有なし、金庫もなし。足腰も弱くなった父が「こねくった場所」に通帳類をかくすことも、なし。


 厚手の長靴下に入っていた預金通帳と年金手帳。災害時に持ちだしやすかろう小さなリュックの底にいた。もし、しぶんが入院しても、わたしに「リュックのなか」と指示しやすかったのだと思われる。

きのう、刑事さんに探すよういわれ、すぐ見つかったのでヨシ。助かった。何日もかかる人もいるだろう。
残る家族のために、引き継ぎの「エンディングノート」、やはり書いてもらった方がいいし、わたしも……。



警察に連絡

 刑事さんに【預金通帳の発見連絡】は、お葬式のあとでいいと言われていた。一般的に葬儀は親族でケンケンガクガク合戦のようだ。
が、放置するのもナンなので電話だけはしておこう。


区の警察署・刑事課【強行犯 係】に電話をかける。
実家の固定電話。もうすぐお役ごめんだから最後に働いてもらいます。


しかし【強行犯 係】こんな部署もあるのだ。「独居老人を金品めあての……」扱いになってたんでしょうね。
警察、緊張する……もう二度と連絡したくないなぁ……。


「葬儀の翌日ですね、はい。よろしくお願いします。」
あいさつもそこそこ。業務連絡だけで、通話はすぐ終了。


また刑事さんが来るって……。
通帳を見に来るという。

預金通帳は通帳記入をしておいてください

……先に書いてしまうと、
火葬の翌日、刑事さんが来宅。
「通帳を撮影させてください」
しかも報道陣みたいなストボロを光らせて。(こんな通帳、スマホでいいんじゃ……) 


パシャ、パシャッ! パシャ!
(ドラマじゃあるまいし。何ショットも必要ないがな……)
刑事さん、これも仕事。お疲れさまです。


そうか、ごっそり預金を引き出していないか、とか調べるのか。


父は年金生活者。
生前、あと三年ぐらいやと、しぶんの寿命を語っていた。
通帳記入をしたら、ほんとうに三年分くらいの生活費の預金額しかなかったのだ。


刑事さんは、すぐに帰りました。
「事件性なし」との判断だろう。
いろいろと、ありがとうございました。


つましい生活。父に何千万も預金があるわけない。かくし資産もない。家があるだけ。


あの世には手ぶらで。


わたしは布団にもぐり込む。今夜は、よく寝れそう。
こんなに実家に長くいるのは、はじめてだった。外を見る窓ごし。
夜空に橋が架かっている。わたしにはそう見えた。



わがまちの葬祭屋さん

 翌日、葬祭屋さんにむかう。家から徒歩10分の距離。近くでよかった。
黒い服を着るのは義母の葬儀以来。これでわたしたち夫婦の親は、すべていなくなった。


到着。個人の葬祭屋さんなので、受付は社長さんのお母さんだろう。自社ビルの部屋に案内されて、お茶をだされた。
「親戚が五人来ます、急にすみません。」
お母さんは、いつものことですよ、という顔をして退場。お茶の2Lペットボトルと、お湯のみがたくさん伏せておいてあったのだ。


祖母の葬儀もここだった。
最後の見おくり、人数がふくれた記憶がある。



そして……
父の棺桶と、わたしだけになった。



毎週金曜日は
「親の持ち家」の日


いつも こころに うるおいを
 水分補給も わすれずに


さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。


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