見出し画像

栄螺鬼考(エイラキコウ)-サザエは鬼となり得るか-


図1 鳥山石燕の描いた「栄螺鬼」


図2 「百鬼ノ図」に描かれたサザエとハマグリの妖怪

※引用文中のルビは当該漢字直後()中にひらがなでつけ加えました。

サザエの鬼、栄螺鬼

 サザエをモチーフとしたキャラクターといえば、日本で一般に有名なのは「サザエさん」かもしれません。しかし、僕はまず、「栄螺鬼(さざえおに)」というお化けを思い浮かべます。水木しげるの漫画「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場するので、ファンの方ならご存じかもしれません。作中では鬼太郎を食べようとする悪の妖怪ですが、シリーズによっては味方になり、敵妖怪を(なぜか)薪ざっぽうでぶん殴ったりしていました。栄螺鬼は、江戸時代の絵師「鳥山石燕(とりやませきえん)」が描いたものです(図1)。サザエに目玉と体がつき、海藻を首のあたりから飾りもののように垂らしている、といった姿をしています。そして、砕け散る荒波をバックに、サザエの殻から「ぬうっ」と飛び出しているのです。その奇妙奇天烈な風貌に、僕は心を惹かれました。

ここから先は

3,958字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?