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建設業界の人手不足を解消 〜なぜ橋本組は求職者から人気なのか?〜 | 株式会社橋本組 橋本社長インタビュー

会社に入社したころは、まわりから「宇宙人」なんて呼ばれていましたね。パソコンとかITとか、アナログな業界にない新しいものをどんどん取り入れていたから。

そう自身の過去を語るのは、創設100年を迎えた建設会社、株式会社橋本組の橋本真典社長です。

静岡県焼津市に本社を置く橋本組は、最近では千葉の会社をM&Aするなど、全国的に事業を拡大しています。

また同社は、採用や人材育成に力を入れており、毎年多くの定期採用をしています

橋本組は業界の人手不足解消のため、どのような挑戦をしているのでしょうか。そして、日本の抱える大きな課題、高齢化社会へ向き合った「はしもとの家」とは、どのような取り組みなのでしょうか。

橋本組が求職者から人気の理由

橋本組は創業が大正11年、今年で101年目を迎える老舗の建設会社です。弊社には地方の建設会社としては珍しい、ある特徴があります。

それは定期採用で多くの新卒社員を採用していることです。ここ数年、採用人数は毎年20人をキープしています。地方の建設会社としては珍しいのではないでしょうか。

女性社員の割合も非常に高いです。新卒採用で言えば、昨年は女性が12人男性が8人と、橋本組の歴史で初めて女性の採用人数が男性を上回りました

2023年度の新卒社員

なぜ、橋本組は求職者から人気なのか?」と聞かれることも時々ありますが、それは私たちの取り組み、業界への挑戦が花開いてきた証拠だと思っています。

私たちが今、力を入れて取り組んでいることは主に三つ。

建設業界における人手不足の解消土木と建築の間にある垣根の払拭、そしてDX化です。

魅力的な職場づくりが採用に繋がる

まず、建設業界において、人手不足は大きな課題です。

日本はどこの業種も慢性的な人手不足に悩んでいるのですが、建設業においてはそれが直接的に影響してきます。といいますのも、国家資格の保有者の数しか仕事が請け負えないという厳しい規制があるからです。

すでに全国的に技術者の数が足りず、公共事業の予算が翌年へ、翌年へと繰り越されているのが現状です。50年前までは考えられなかった緊急事態です。

しかし、人が生活するために建物はなくてはなりません。人々の豊かな暮らしを守るためにも、建設業界への入職者を増やしていく必要があります。

そのために私たちは、人々がこぞって働きたくなるような魅力的な職場づくりに力を入れてきました。

たとえば、完全週休2日制に加え、「クリエイティブ休暇」という名の9連休を導入しました。また、社員のスキルアップを後押しする目的で、資格試験合格時に合格奨励金を出したり、毎月の給与に取得資格ごとの技術手当を支給しています。

キャリアに関して言えば、女性社員には産休・育休の取得はもちろんのこと、休暇を取得してもキャリアが継続できるように会社全体で応援しています。おかげで、女性社員の産休・育休取得後の職場復帰率は100パーセントとなりました。

このような取り組みが、今の安定した採用に繋がっているのだと考えます。

▼橋本組の働き方についてはこちら▼

土木と建築の垣根を払拭する

次に業界の課題として、土木と建築の間にある垣根の問題があります。

海外だと、土木も建築もシビルエンジニア——文明をつかさどるエンジニアという形でひと括りになっているのですが、日本はなぜか、これが別々のものとして扱われているんです。

たとえば、コンクリート一つとっても両者で呼び方が違ったりして、キャリア形成やスキルを学ぶ上で大きなロスを生みます。

建設現場の写真

そういった日本独自の課題に挑戦するため、我々は建築と土木の垣根をとっぱらってしまおうと考えました。

たとえば、建築学科を卒業した学生さんが最初に配属されるのが土木の現場だったり、反対に、土木を出た学生さんが建築をやったり。文学部を卒業した女性がヘルメットを被って現場監督をやることだってあります。

こうして土木と建築の間を行き来しやすい環境をつくることで、土木にも建築にも精通したオールラウンドプレイヤーを育てる挑戦をしています。

パソコンアレルギーをゲームでなくす

最後にDX化についてです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは……
高速インターネットやクラウドサービス、人工知能(AI)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくこと。企業においてはITを活用したビジネスモデルの変革や、それに伴う業務、組織、企業文化などの変革も指す。

日本経済新聞より(https://www.nikkei.com/article/DGXKZO59953540T00C20A6EA2000/)

デジタルと建設って、少し遠いイメージがありませんか?

たしかに、少し前まで業界は世間のデジタル化から取り残されていました。しかしそれも今は昔、現在は先頭ランナーに追いつけ、追い越せのところまで迫っています。

たとえば、パソコン上で建造物を設計をし、それをタブレット端末上でモデリングするといったことも当たり前になってきました。弊社では、全社員にスマホとノートパソコンを支給することでペーパーレス化も進んでいます

ちょっと自慢になってしまうのですが、弊社は20年ほど前にはすでにDX化に取り組んでいました。社員一人ひとりに最新のパソコンを支給し、業務の効率化を始めていたんです。

ただ、今でこそ珍しくないパソコンですが、当時はまだまだ“パソコンアレルギー”が根強く残っていました。

そこで弊社が何をしたかというと、「手隙の時間にパソコンゲームで遊んでも良い」という社内ルールをつくりました。たとえば、テトリスとかゴルフのシミュレーションといったゲームを遊ばせることで、自然な形で抵抗感を取り除いていったんです。

同時にパソコンのインストラクターさんにソフトの使い方を指導していただくなどして、徐々にデジタルを普及させていきました。

今後も建設業界に限らず、全世界のデジタル化が進んでいくはずです。この流れに乗れるかどうかに会社、ひいては業界の運命がかかっていると私は考えます。

人が育てば会社が育ち、業界が育つ。そして業界が育てば、また優れた人材が生まれていく……私たちの取り組みは、そんな循環づくりのために行っています。

▼デジタルソリューション開発「ERTHBRAIN」との協定の記事はこちら▼

「面倒」と思うより「面白い」と思う

私は「仕事だからやっている」というより、そういった仕組みをつくったり、業務を効率化したりするのが好きな性分らしくて。

新たな課題を見つけると、「面倒」と思うより先に「面白い」と思ってしまって。まだまだできることがあるじゃないかって、楽しくなってしまいます。もしそれが「面倒くさい」って感じるようになったら引退を考えようと思っています(笑)

新しい取り組みを導入する際、最初にやるのは「見える化」です。

たとえば、先にあげたDX化を例にして説明します。

私は元々IT関係の会社に勤めていたので、パソコンやインターネットの便利さをよく知っていました。だから、現場で社員たちが電卓を叩いて測量計算しているのを見て、「パソコンを使えば30秒で終わるぞ!」と思ったんです。

30分かかる仕事が30秒に短縮されると、これだけコストが削減できて、それが一年だと……みたいに、数値として削減できるコストを見える化して、十分に採算が取れると思ったので導入を決めました。

今でも、新たな機器を導入する際は、必ず見える化しています。

人材育成の見える化

見える化は人材育成の場でも用いられています

たとえば、一昔前のOJTといえば、「俺の背中を見て覚えろ」みたいなものが多かった。しかし、それだと基準が曖昧で、社員がどこまで成長したか客観的に判断ができません。

そこで、業種ごとに教育シートをつくりました。研修生は、各現場で上司から客観的に成長具合を見てもらい、習得できた技能の部分にチェックをもらうという形です。

研修を受ける前にも、社員の個性を知るためのインタビューシートをつくります。

面接をしながら「何がやりたいのか?」を明確にした上で、こちらの期待している働きを提示し、すり合わせていく形です。加えて、ベンチマークとして「国家資格の取得」があるので、資格を取るためにやらなければいけないことを洗い出していきます。

社員の育成では、一人ひとりにカスタマイズした研修を心がけています。どこを切っても同じ金太郎飴みたいな社員を量産することではなく、個性が際立つ形で活躍してくれるのが理想です。

オフィスに施した働きたくなる仕掛け

話は戻りますが、じつはこのオフィスにも各所に生産性向上の仕掛けがあります。オフィスのコンセプトは「出社したくなるオフィス」です。

橋下組社屋

たとえば、オフィスの構造的な特徴として、どのフロアに行くにも建物中央の吹き抜けの階段を通らないといけないようになっています。

すると、出社・退社・休憩時など、ここを通る社員同士が自然と顔を合わせることになります。これは小さなコミュニケーションを生む仕掛けです。

コミュニケーションは、心の病(やまい)の抑制に繋がります

社屋を通る吹き抜け

また、このオフィスでは完全フリーアドレス制を採用しています。つまり、社員はオフィスのどこで仕事をしてもいいというわけです。

営業や設計、現場のスタッフなど、部署の垣根を越えて一緒に仕事ができるため、ミーティングのためにわざわざ遠くの会議室や部署まで移動して……みたいなロスがなくなって作業効率が上がりました

同時に、派閥や集団の対立といった弊害を生むセクショナリズムもなくなり、組織の健全化にも繋がりました。

他にも、夕方になると自動的に照明が暗くなって帰社を促すようにしたり、ゲーミングチェアやバランスボールチェアを取り入れて健康を促進したりと、オフィス内に大小さまざまな仕掛けがしてあります。

座りながらトレーニングのできるバランスボールチェア

老いと向き合う「はしもとの家」

我々のような現役世代は一日のうちで会社にいる時間が一番長い。だったら、その会社の環境を快適にしようと、このようなデザインのオフィスをつくりました。

ただ、定年を迎えた後は、家で過ごす時間がぐっと長くなります。とくに高齢化先進国の日本では、老後を豊かに過ごすための家づくりは無視できません

今までも高齢者向けの家づくりは、たくさんのハウスメーカーが取り組んできました。想像しやすいところですと、室内の段差を減らし、手すりをたくさんつけるとかですね。

現在日本では、高齢者の交通事故で亡くなる方より、室内での転倒事故で亡くなる方のほうが多いというデータも出ているくらいです。身体的な衰えが避けられない以上、手すりは必要だし、段差は少ないにこしたことない。

しかし、これで十分でしょうか? 私たちにはそう思えませんでした。

老いた後の生活に真正面から向き合い、それを踏まえた設計や設備を十分に施した家をつくろう。それはただ表面的な設備の話だけではなく、家を手放す最後の瞬間までオーナーに寄り添えるような家でなくてはいけない。

そうして橋本組が取り組み始めたのが、老いと真摯に向き合った住宅「はしもとの家」です。

はしもとの家外観

きっかけは、三重県に建てられた一軒の平屋でした。

ここを設計したのは、建築デザインの研究者であり、建築家でもある名古屋工業大学の伊藤孝紀先生です。先生はご自身の研究の成果を活かし、ご両親のために老後を過ごしやすい家をデザインされたのです。

老後をこんな家で過ごせたら絶対に幸せになれるはずだ!

私たちは伊藤先生協力のもと、はしもとの家の設計に取り掛かりました。

はしもとの家には、インテリアとしても機能する手すりや、窓を開けることなく換気のできる空調システム、車椅子がピッタリと収まるように調節のできる机など、機能とデザインを併せ持つ設備が詰まっています。

中でもこだわっているのは、「光」です。室内にいながら太陽の動きを感じられ、四季の移ろいを喜べる空間づくりを意識しました。

さらに、はしもとの家は「住んで終わり」の家ではありません

もし将来、オーナーさまが家を売って老人ホームに入るようになった時のためにも、資産価値のある家であり続けたいと考えています。そのためにも、はしもとの家のブランド力を高めていくことも、私たちの使命でもあると考えています。

実際に住まわれている方からは、「家にいる時間がとてもくつろげるようになった」と、お声をいただいています。そんなお声を静岡だけでなく、全国、全世界からいただけるようにしていきたいです。

面接では⚪️⚪️を見る

じつは、新社屋の設計にも伊藤先生に関わっていただきました。

そのデザインが響いたのか、今年は建築学科の学生さんからの応募が非常に増えました。学部不問で募集しているので、「こんなに偏らなくてもいいのにな」と思いましたが(笑)

せっかくなので、採用面接のお話も少しだけさせてください。

私が社員を採用する際、一番見るのは「機転が利くかどうか」です。これは面接の場でも少しだけ確認させてもらっています。

面接を受けられる学生さん方は、みなさん対策をたくさんされています。中には面接で「自己紹介をしてください」と言うと、履歴書に書かれている自己PRを一字一句違わずに喋ってくれる方もいるくらいです。

でも、それでは学生さんたちの本質が見られないと感じています。なので、ちょっと申し訳ないかなと思いつつも、「履歴書は事前に拝見しているので、ここに書かれていない自己PRをしてください」とお願いしています。

それを言った途端にしどろもどろになってしまう方もいらっしゃいますが、臨機応変に対応してくれる方もいらっしゃいます。咄嗟の時にこそ、人の本来の能力が発揮されると私は考えます。

もしかしたら、「面接の要になるような情報を記事にしてしまっていいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん大丈夫です。ネットの情報を集めて対策をしてくる方は、もっと優秀ですから(笑)

最後に

建設業といえば、いわゆる3K——きつい、汚い、危険といった、ネガティブなイメージが付きまとう職種です。

現在でも多くの建設業者が旧来のイメージによって採用に苦しんでいますが、実際の建設業界は、女性・男性を問わずに活躍できる業種になってきています。

なんといっても、ものづくりの魅力がつまった仕事です。

つくるものも一つ一つ全部違う。それも巨大で、ずっと残るものです。そういった世界でものづくりをする楽しさを、ぜひ味わってもらいたいです。

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