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サッカーで走れるようになるための体内変化

前回の記事で、

 オーバーロードのトレーニングが行われることで

⑴肺容量が効果的に活用される    ⑵赤血球の数が増加     ⑶心筋が強くなる ⑷ 血管が増加・太くなる 

上記のような現象が身体の中で起き、段階的に身体は同じ負荷を与えられても、ダメージを受けないように強くなっていくと述べました。

 でわ、何故サッカー選手はこのように身体にダメージを与え、身体を強くしていかなければいけないのか。この部分をもう少しサッカーと結びつけながら、生理学的(身体の内部の変化)に掘り下げていきたいと思います。

筋肉が酸素不足になるとアクションの質も頻度も下がる

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 サッカーフィットネスの重要な要素に、"アクション間の回復速度の維持"があげられます。

このアクション間の回復速度の維持を制限する最大の要因が、筋肉が酸素不足になることです。

1つの現象としてプレーをしていると終盤には、筋肉へ運ばれる酸素の量が減少します。

この酸素が効率よく運ばれなくなると、他のエネルギーを作り出す部分の働きも遅くなり、さらに酸素が運ばれる時間が遅くなります。そうなると、酸素が足りない時に筋肉内に貯えていたエネルギーが使われますが(ホスファゲン機構)、そこもいくらでも使えるわけではないので、そこへのエネルギー補給もしなければいけません。しかし、酸素が不足している為、補給する時間も長くかかります。

この為、試合終盤の選手のアクションの頻度が下がってしまうという現象が起きます。

"サボり"ではないのです。だからこそ、この現象を理解して指導者はコーチングやトレーニングメニューを工夫する必要があります。


一流選手は肺容量の利用が効率的


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 外から取り込まれた酸素は、肺と血液を通して、心臓の働きで筋肉まで運ばれます。筋肉により多くの酸素を届ける為には、肺・血液・血管・心臓のこれらの機能が向上する必要があります。

ハイパフォーマンス、高頻度のアクションを繰り返したいと思うサッカー選手は、トレーニングを繰り返し、効率よく酸素が肺から筋肉へと運ばれるように、身体を変化させていかなければいけません。

  酸素を含んだ血液が血管を通って、肺を経由して、そこで酸素を血液が取り込んで、身体の中を巡ります。問題なのは、肺に血管はあるにも関わらず、酸素は肺全体に充分に行き渡っていないと言う点です。そうなると血液が肺を通った際に、酸素を充分に乗せて筋肉に届けることが出来ません。

 一流の選手では肺容量の80〜90%を利用できるように、酸素が肺の細部まで行き渡っています。

しかし、トレーニングをしていない人の身体では肺容量の40%程度しか利用されていません。ただ、残りの60%の血管にも血液は流れている為、この血液は酸素をあまり持っていない状態で筋肉に到達します。この状態では、筋肉にとってあまり役立たないということになります。

その為、肺容量を効率的に利用できるようにトレーニングをすることで、体内に入った酸素が肺の60〜80%にまで行き渡るような状態にすることができるようになります。肺の細部まで酸素が行き渡ると、そこを通る血液は充分な酸素を肺から乗せ、筋肉に届けることが出来る様になるわけです。

運び屋が増加するとアクションの頻度は向上する


赤血球=酸素の運び屋

 血液の大部分は赤血球で構成されており、赤血球は酸素を運ぶ役割を持ちます。血液が肺に入ると酸素を乗せ、そこから筋肉へと運んで、また肺へと戻ります。

簡単に考えると、筋肉に酸素を運ぶ為には、運び屋(赤血球)の数が多い方が良いことがわかります。

運び屋(赤血球)が増えると、その分通るスペースが必要となるので、身体は血管を太くしたり、本数を増やすという変化を起こし対応します。

これで筋肉への酸素を効率よく運ぶことができるようになります。

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 赤血球の増加と心臓の筋肉の強化が繰り返されることで、強い心臓(スポーツ心臓)となっていきます。

このように、血液中の赤血球の増加が、アクション間の回復速度の維持を目的としたトレーニング効果です。だからこそ、考えられたトレーニングプログラムを実施して、身体の内部の変化を適切に引き出す事が重要になります。

走った分強くなる。単純に考えればそうです。

ただ、走れるようになるのは、体内でこのような変化が起こっているからなのです。

その他にも、糖の貯えを増やしたり、体内の水分量の損失を減らしたりすることも大切ですが、複雑になるのでここまでにしておきます。

まとま

 いろんな要素がサッカーに関わってきますが、今回はトレーニングで起こる身体の内部の変化について、2回にわたりまとめました。

 ここまで学生が知る必要があるのかと考えましたが、僕が学生の頃にこの情報が有れば頑張り方が変わったかもしれません。

近年は科学的に証明されたものが数多くあります。我々現場にいる者は、目の前の選手のために最適なものを提供できるように努めなければいけません。また、選手自身も若いうちに自分の身体の知識は持っておくと、この先の選手生活に役立つと思います。

 身体の内部の機能を上げるために、ただ走れば良いというわけではありません。チームや選手に合った負荷量、タイミングなどが存在します。

考えられたトレーニングによって、(無駄な罰走や無計画なランニングでは選手の状態を把握できませんし、障害リスクも増加します)"サッカー"をしながら選手のパフォーマンスが上がっていければ良いなと思います。

 本来の最終目的は、身体の機能が上がることではなく、サッカーが上手くなることだという事は忘れないように。全てはそれを助ける手段です。


参考 レイモンド・フェルハイエン(2016)「サッカーのピリオダイゼーション パート1」相良浩平訳,WorldFootballAcademyBV.








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