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ビルドアップの基礎項目(DFB指導教本より)

ドイツでは攻撃の組み立てにおける最初の局面は、「Spieleröffnung(プレーの開始。ゴールキックからビルドアップまでの過程を指す)」と「Spielaufbau(ビルドアップ)」の2つに分けられている。
この両概念は重なり合う部分が多く、媒体によってはほぼ同義として取り扱われることもあるが、DFBは「別々の異なるフェーズであり、分けて観察・トレーニングされる必要があるだろう」と述べている。

今回はドイツサッカー連盟(DFB)の指導教本に記載されている「ビルドアップ」について、基礎的な部分と後方の選手に求められる要素として簡単に紹介されている点に少しフォーカスしていく。


ビルドアップのポイント

ビルドアップで重要視される項目として、できるだけ確実に敵陣へと進入することを念頭に、
→相手選手(敵のライン)を越える
→攻撃方向を意識したプレーを次のパスの受け手が即座に実行できるようにする
ことが挙げられる。

『相手選手を越える』に関しては、2014年ブラジルW杯の時にPackingというデータの指標が注目を集めた。パスやドリブルによってどれだけ相手選手を越えてボールを攻撃方向に運べたか = 何人相手選手を越えたかというもの。
ドイツが準決勝でブラジルに7-1で圧勝した試合、試合データによればポゼッション率やシュート数ではブラジルがドイツを上回ったが、Packing(相手選手を越えた数)はドイツが大きく上回っていたという。
ビルドアップの際にも例外ではなく、「いかに相手の守備ブロックを無効化できるか」といった点がキーポイントになってくる。


ビルドアップ①

図を例としてあげると、簡単に言えば『ボールを受けた右センターバックのパスの選択肢として、BよりもAが優先』ということ。Bのパスだけでは相手の守備ブロックを崩せてはいないが、Aのパスでは相手2トップと中盤の列を越えることができている。
相手の左SBとの距離にもよるが、左MFを後ろ向きにプレーさせることもできる。勿論、パスの先にはボールを失わないという確実性・安全性が必要ではあるが。

周りの選手のポジショニングについては(ビルドアップ時に限った話では無い)、日本と同様に『幅と厚み』を取るという点がキーファクターとして挙げられている。ただ、『なるべく敵陣深くポジションを取るが、幅の取り方は「必要な分」だけ』という方針も示されている。
ただ闇雲に拡がって幅を取ればいいという事ではなく、どのスペースを利用すればいいか、どのスペースが最短で前進できるスペースなのか、どこに数的優位が生まれているのか…などの最適解を判断・認識することがボールを動かしている際に求められる。


ビルドアップの基礎的技術的・戦術的要素

ビルドアップで技術・個人戦術的な部分にフォーカスした際、特にGK、センターバック、サイドバックは例として以下の図のような状況で確実にプレーできる必要があると紹介されている。

GK:パスの正確性、SBやCBに対するサポートの角度、1stタッチ(によるボールの持ち出し)

ビルドアップ②

ビルドアップ③



CB:縦パス(長い距離のグラウンダーの縦パス)、ドリブルでの前方への持ち出し(スペースに運ぶドリブル)、斜めのフィードボール

ビルドアップ④

ビルドアップ⑤



SB:ボールの持ち出し(1stタッチ~運ぶドリブルへの一連の流れ)、縦パス、浮き球(主にサイドチェンジによる)の正確な処理

ビルドアップ⑥

ビルドアップ⑦


後方の選手に求められる、ビルドアップ時における技術的トレーニングの参考になれば。

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