力石 ドイツでサッカー指導者

指導者としての成長を目指し渡独。ケルン在住。SC フォルトゥナ・ケルンのU11~U15…

力石 ドイツでサッカー指導者

指導者としての成長を目指し渡独。ケルン在住。SC フォルトゥナ・ケルンのU11~U15年代で監督やコーチ。2022/23シーズンは同クラブのU13で監督とU23(成人5部)でコーチ。ドイツサッカー連盟エリートユースライセンス。ケルン体育大学に在学しています。

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【ドイツサッカー】3季ぶりに全日程を消化できた2021/22シーズンを振り返る(U23編)

今季だけでなく昨季(2020/2021シーズン)の出来事も含めながら、色々なことがあったU23のシーズンを振り返る。 ドイツの5部リーグに所属しているU23では、去年の2020/2021シーズンから研修に近い形で指導スタッフとして帯同させてもらっていた。だが、ドイツ全土が2020年11月からロックダウンに入ったことで全く活動ができなくなり、結果的にシーズン自体が打ち切りになってしまったため、実質今シーズンが成人カテゴリーを担当する最初のシーズンのような感じだった。 幸いとい

    • 【ドイツサッカー】3季ぶりに全日程を消化できた2021/22シーズンを振り返る(U12編)

      ドイツのアマチュアカテゴリーは過去2シーズン、2019/2020シーズンは残りの約2ヵ月半が、2020/2021シーズンはリーグ戦が開幕してから5~6試合消化しただけで、ともにロックダウンへ入ってしまったことが理由でトレーニングも試合もできなくなり、シーズンが強制終了してしまっていた。 2021/2022シーズンは多少のスケジュール変更があったりはしたものの、3年振りに無事に最後まで日程をこなすことができた。 所属クラブであるフォルトゥナ・ケルンでは今季はU12監督とU23

      • DFB(ドイツサッカー連盟)指導者養成 ~トレーニング構築のフレームワーク~

        トレーニングを構築する際にはチーム・グループ・個々の課題、テーマ、サッカースタイル、マクロ・メゾ・ミクロサイクル(ピリオダイゼーション)、次節の対戦相手などからトレーニング内容が決定されるが、主となる目的(その日のテーマ)に沿ったトレーニングを効率良く考え、尚且つ効果的なトレーニングを提供していくための手助けになるであろうフレームワークがドイツには存在する。 下の表はドイツでDFBエリート・ユースライセンス(2022年からB+(プラス)ライセンスに名称変更)の指導者養成講習

        • ビルドアップの基礎項目(DFB指導教本より)

          ドイツでは攻撃の組み立てにおける最初の局面は、「Spieleröffnung(プレーの開始。ゴールキックからビルドアップまでの過程を指す)」と「Spielaufbau(ビルドアップ)」の2つに分けられている。 この両概念は重なり合う部分が多く、媒体によってはほぼ同義として取り扱われることもあるが、DFBは「別々の異なるフェーズであり、分けて観察・トレーニングされる必要があるだろう」と述べている。 今回はドイツサッカー連盟(DFB)の指導教本に記載されている「ビルドアップ」に

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        • トレーニングノート
          2本

        記事

          コーチングやトレーニングの評価指標及び構築指標『KWICS』

          計画・実行・評価・改善。 継続的に生産性やクオリティを向上させることを目的としたマネジメント手法はPDCAサイクルとして広く認知されている。元々は生産管理や品質管理の改善のために提唱されたものらしいが、そのフレームワークの実用性から多岐にわたる分野で応用されている。 サッカー指導の勉強をしていれば必ず聞いたことがあるであろうこのPDCAサイクルだが、 これと似たようなフォーマットでサッカーのトレーニング・コーチングに焦点を当てたフレームワークが存在する。 KWICSという

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          TRメニュー:ヴォルフスブルクのシーン分析から

          ヴォルフスブルクvsブレーメンの試合におけるワンシーンをピックアップし、シーンのような状況を改善・向上させるための方法論をトレーニングメニューとして置き換えて考案してみる。 プレーシーン シーン① 右CB(図のA)から中央CB(図のB)へ。Bが右ボランチ(図のC)に配球(黒矢印)するが、Bは身体が完全に右方向に向いていてボディシェイプが悪い状態。逆サイドを見ずに配球しているため左サイドで数的優位を活かせる状況を逃している。 ※シーン①における修正点やプレーオプションとし

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          EURO2020のゴールデータ

          今大会のゴールに関する簡単なデータがDFBアカデミーのサイトにて掲載されていた。 総ゴール数は142ゴール(全51試合)、1試合平均で2,78ゴールという計算になる。 流れの中での得点は105ゴールにのぼり、FKやCKなどのセットプレーから直接生まれた得点はわずか17ゴールにとどまっているそうだ。 FK、CKからの得点率は12%であり、3年前のロシアW杯の44%と比較するとかなり減少している。これに関して、セットプレーにおける攻撃時のバリエーションは進化しているが、それに

          TRメニュー:少人数、ソーシャルディスタンスを保ったトレーニング

          5月31日に規制が緩和されるまで、ケルン市では1グループ最大5名の人数制限が設けられている中でのトレーニングが行われていた。 ソーシャルディスタンスを保つ事も義務付けられていた為、当然ボディコンタクトを伴った対人形式だったり通常のゲーム形式のトレーニングが行えない条件下だった。 パス系のトレーニングやシュート系、ドリブル系、コーディネーション系のトレーニングはそんなに問題ないが、人的制約や空間的制約のある状況での(対人トレーニングに近い)トレーニングセッションのオーガナイズ

          TRメニュー:少人数、ソーシャルディスタンスを保ったトレーニング

          いつもとは違うシーズンイン

          ロックダウンの影響で2020/2021シーズンが早々に終了して以降、カレンダー的には普段とは異なるおかしな日程で新シーズンである2021/2022シーズンが始まっている。 基本的には欧州のシーズンは(少なくともドイツは)7月1日から始まり、6月30日で終わりという扱いだが、ロックダウンが緩和されてサッカーが少しずつ戻り始めたことで5月辺りから「新シーズン開始!」みたいな感じになっている。 公式戦やリーグ戦終了後のミニトーナメントやフェスティバルは開催されていないが、6月から

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          ゴールキックのルール改正に伴うリスタートの変化

          ここ最近サッカーのルール改正が多い。 キックオフの蹴り出す方向が自由になったり、審判に当たってボールロストになった場合はドロップ(マイボール扱い)、FK時に守備側の壁を邪魔してはいけない、ピッチ外では指示や分析目的で通信機器の利用が許可されるようになった...などの変更が毎年のように行われている。 とりわけルール改正が何度も行われ、プレーの幅が求められるようになったのがゴールキーパーのポジション。 古くは、味方のバックパスを手で扱うことができなくなり、その後スローインのボ

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          サッカーにおける「スピード」の基本的なカテゴライズ

          ドイツでサッカーの勉強をするようになって個人的に日本との違いを大きく感じたことの1つとして、サッカーに必要なスピードの能力をどのように捉えているかという点がある。 スポーツ科学の側面からサッカーの競技特性を学術的に見ていった際に、ドイツの方が細分化して定義付けしていたり、書籍などでもより詳細に取り扱われて説明されている。 最近では知覚機能に基づいた認知スピードといった要素等も取り上げられるようになってきているが、これらのスピード系の要素がドイツではどのように捉えられている

          サッカーにおける「スピード」の基本的なカテゴライズ

          欧州4ヶ国 トレーニングに関する特徴

          イングランド、ドイツ、ポルトガル、スペインの欧州4ヶ国の育成年代(U12~U16)において、各国のトレーニング傾向や特徴に関する調査報告がされている。 対象はそれぞれの国のトップリーグに属しているクラブのアカデミー合計16クラブで、内容として「練習時間内で判断が必要なトレーニングセッションと判断の必要無いセッションがどのくらいの割合で行われているか」を示したものとなっている。 まずこの調査におけるトレーニングセッションのカテゴライズは以下の通り 「判断を伴うトレーニング

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          現代の指導者に求められる「社会性」

          指導者としてチームを率いるにあたり必要とされる能力は主に ・(競技の構造、パフォーマンス特性に関する)専門知識(ドイツ語=Fachkompetenz) ・社会性(=Sozialkompetenz) ・オーガナイズ能力(=Organisationskompetenz) ・言語力(=Sprachkompetenz) ・統制、方向付け、サポート力(=Vermittlungskompetenz) といわれている。 更に、上記の各能力において必要とされている項目例としては 【専

          現代の指導者に求められる「社会性」

          ゲーゲンプレスの定義紹介

          今では馴染みのあるサッカー用語となったゲーゲンプレス。 ユルゲン・クロップがドルトムントを率いていた際に日本でも取り上げられることが多くなった戦術用語であるが、具体的にどのように定義付けされているものなのかをDFB(ドイツサッカー連盟)の指導教本に基づいて紹介していこうと思う。 ゲーゲンプレスの概念 DFBによれば、ゲーゲンプレスは『アタッキングサードでのボールロスト後、即座に奪い返すためにボールに近い選手が発動させるプレッシング』とされている。 基本的には「前線からのプ

          ゲーゲンプレスの定義紹介

          バイヤー・レバークーゼンvs E・フランクフルト (ブンデスリーガ2020/21シーズン 第31節) レポとか雑感とか

          成績不振によりペーター・ボシュが解任され、ハネス・ヴォルフが新たに就任して以降2勝1分1敗と少しずつ状況を立て直せつつあるレバークーゼンと、来シーズンからボルシアMGの監督に就任することが先日発表されたアディ・ヒュッター率いるフランクフルトの対戦。 前節終了時点で6位のレバークーゼンはCL圏内の4位フランクフルトとは勝ち点差9。今節の結果次第では来季CL出場の可能性はほぼ消滅。 対するフランクフルトは悲願のCL出場権獲得に向けて好調を維持していたが、監督やクラブ幹部の去就

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          青き名門の凋落

          ドイツの名門シャルケの2部リーグへの降格が決まった。 ブンデスリーガ第30節、ビーレフェルトのホームに乗り込んだシャルケは0-1で敗れ、クラブの歴史の中で4度目となる降格の憂き目にあうことになった。 財政危機やスタッフと選手の内部衝突などのような別の問題も散見されたが、それを差し引いてもあまりにもお粗末な印象を受ける。 CLやELなどのヨーロッパのカップ戦常連クラブだった頃の面影なくボロボロの状態で降格となったシャルケだが、今シーズンからではなく昨シーズンの後期からずっと