見出し画像

バイヤー・レバークーゼンvs E・フランクフルト (ブンデスリーガ2020/21シーズン 第31節) レポとか雑感とか

成績不振によりペーター・ボシュが解任され、ハネス・ヴォルフが新たに就任して以降2勝1分1敗と少しずつ状況を立て直せつつあるレバークーゼンと、来シーズンからボルシアMGの監督に就任することが先日発表されたアディ・ヒュッター率いるフランクフルトの対戦。


前節終了時点で6位のレバークーゼンはCL圏内の4位フランクフルトとは勝ち点差9。今節の結果次第では来季CL出場の可能性はほぼ消滅。

対するフランクフルトは悲願のCL出場権獲得に向けて好調を維持していたが、監督やクラブ幹部の去就問題でややチーム内に動揺もあったのか、監督の今シーズン限りでの退任発表後に行われたボルシアMG戦は0-4と大敗。前節は勝ったが今節はどうなるか。

両チームともに来季のヨーロッパのカップ戦(フランクフルトはCL、レバークーゼンは最低でもEL)出場を確保するために落とせない一戦になった。


レバークーゼンのフォーメーション

ホームのレバークーゼンのシステムは以下の通り。

画像1

前節のバイエルン戦からアランギス、スベン・ベンダー、フリンポン、ディアビが外れてデミルパイ、ドラゴビッチ、ヴィルツ、ベララビが入り、3バックから4バックに変更した。
CBが本職のNo4ターが右SBに入っていたが、縦への推進力がある相手の左WB(No10コスティッチ)をケアする狙いだろう。


フランクフルトのフォーメーション

画像2

フランクフルトはトゥタ、チャンドラー、ヨビッチ、ローデ(累積で今節出場停止)に代わり長谷部が先発復帰した他、バーコック、ドゥルム、イルサンカーがスタメンに名を連ねた。前節のヨビッチとシルバの2トップがほとんど機能していなかったからか、1トップ+2シャドーに戻してきた。


レバークーゼン(黒)のビルドアップとフランクフルト(白)の守備

画像3

システム的には4-2-3-1ではあるが右SBのNo4ターがフランクフルトのNo10コスティッチのケアを担当しているためほぼ上がらず、ボール保持時の両サイドバックの高さはアシンメトリーになる(左SBはボランチよりも若干高い位置取りが多いかなといったところ)。両ボランチはディフェンスラインでボール保持している際はあまり段差を取らずにだいたい横並び
No38ベララビはワイドに幅を取りながら相手No10コスティッチの背後のスペース及び相手の最終ラインの高さにポジション取りをし、中央ではNo14シックとNo27ヴィルツが縦のポジションチェンジを繰り返しながら後方からの縦への配球を促す

フランクフルトは3-2-3-2の陣形で対応。基本的にはMittelfeldpressing(ミドルプレス)の高さからプレスをかけ始める
No15鎌田がNo33シルバと2枚で相手CBに対応し、No27バーコックがやや中央気味にポジションを取る。やや上がり目の相手左SBに対して右WBのNo25ドゥルムが引いて対応し、左のコスティッチはずっと高い位置を取り続けている。この辺りはコスティッチとターの駆け引き
ハーフラインを越えてレバークーゼンがボールを保持している際は右のWBが下がって4バック気味、相変わらず左のコスティッチはWBとしては高い位置を保っている(=5バックにならない)ため、No20長谷部がコスティッチの背後をケアするシーンも割と多かった。


フランクフルトのビルドアップとレバークーゼンの守備

画像4

ゲーム序盤のフランクフルトは3バックの左CBのNo2ヌディカがNo10コスティッチの高さに呼応するような形で前目にポジションを取り、No13ヒンターエッガーとNo3イルサンカーの2枚のCB+ボランチのNo20長谷部の3人でビルドアップ(長谷部はヌディカが上がって空いた左のスペースに進入)。
No27バーコックがインサイドハーフからボランチの位置に下りてビルドアップに参加。

前半途中からはヌディカとイルサンカーの左右のCBがSBのようになり、長谷部かNo8ソウが最終ラインに入ってビルドアップ。鎌田とバーコック+ボランチの1人が中盤で三角形を作り、右WBのドゥルムはウィングの高さまで行くため4-3-3の形になる

レバークーゼンはそれに対し4-2-3-1からスタートし4-4-2へ、フランクフルトのビルドアップのやり方に合わせて適宜リアクションという感じ。基本的にはNo27ヴィルツが中央で相手ボランチを監視し、No9ベイリーがNo3イルサンカーに対して目を光らせる。イルサンカーがNo13ヒンターエッガーと同じ高さでボールを受ければベイリーがアタックに行きヴィルツが中央へのパスコース規制しながらベイリーの背後を埋めるし、ボランチが下りてきて組み立てようとすればヴィルツがプレッシングに行きベイリーがその後方。


光る鎌田とヴィルツの受け方の上手さ

今更言及することではないが、両チームのゲームメーカーである鎌田とヴィルツの「パスを引き出すポジショニング」が本当に上手い。下の図のような感じで、味方が横パスなどで縦への配球をうかがっている際の両選手のアングルの微調整は秀逸だと思う。

画像5

相手中盤選手の背中を取りながらライン間で横移動して門の隙間に顔を出すタイミングが絶妙であるため、相手守備がコースを塞ぎきる前に縦パスもしくは斜めのパスを引き出してなおかつファーストタッチが安定しているから前を向ける


試合を決定付けたレバークーゼンの右サイド

先発した右のベララビは確かに縦の推進力はあるが、ボールを持ったら突っ込んで行ったりすることが多く、多様性にやや欠ける印象。
後半途中からベララビに代わりNo19ディアビが投入されたが、それによって明らかに右への展開や右でボールが落ち着くシーンが増えた。(前半しか表記されなかったが、攻撃エリアを左サイド、中央左、中央右、右サイドの4つに区切った時の攻撃エリアの割合は前半は左サイドでの展開が64%だった。残りの36%を3エリアでほぼ均等に分けていた感じ)

画像6

もちろん監督の指示があっただろうとは思うが、ディアビはベララビに比べてやや低いポジション(図参照)を取り、最終ラインとコスティッチの背後の中間スペースで受けることが多かったし、無暗にドリブルを仕掛けずに味方中盤選手とのコンビネーションでの打開を図ろうとしていた
これによって、SBが上がってこないために厚みが生まれていない状況が続いていた右サイドも少し余裕をもってボールを預けられることができるようになり、起点となるシーンが前半に比べて増えたと思う。現にディアビは2アシストを記録している。この試合に関してはプレーインテリジェンスの面ではベララビよりディアビの方が上だった。


まとめ

試合は3-1でレバークーゼンの勝利。
レバークーゼンは監督交代後やや守備的な戦いが多く、レバークーゼンらしい攻撃的な感じが薄まっている印象も受けるが、スコンスコンやられていたボシュ政権末期に比べれば守りは今のところ改善されていると思う。
前節のバイエルン戦は早い段階で2点先行されて結局黒星となったが、失点直後に守備のやり方を変更したりと無策で敗れたわけではなかったし、フランクフルト戦は直近のvsケルン、vsバイエルンに比べて全然良かった。
交代で入った選手の活躍も好材料。アラリオが2点目を奪い、ディアビが1点目と3点目をアシストした。

フランクフルトは思ったより左のコスティッチにボールを入れられなかった。マンツーとまでは言わないがターが付きっきりで監視していたから効果的に左サイドを活用できず、得点源であるコスティッチ-シルバの関係性が希薄になってしまった点は次節に向けた修正ポイントか。


最後に

フランクフルトは来季のCL出場権獲得に向けて正念場。今節、5位のドルトムントが3位のヴォルフスブルクに勝ったため、それぞれ勝ち点1差でヴォルフスブルク(3位、勝ち点57)、フランクフルト(4位、勝ち点56)、ドルトムント(5位、勝ち点55)と並んでいる。
やや離れているがレバークーゼンも6位、勝ち点50であるためCL出場権獲得の可能性は残っている。

バイエルンはCL確定で優勝もほとんど決まり。ライプツィヒの2位もほぼ固いかな。
ヴォルフスブルク、フランクフルト、ドルトムント、レバークーゼンのCL争いは残り3試合で面白くなりそう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?