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現代の指導者に求められる「社会性」

指導者としてチームを率いるにあたり必要とされる能力は主に

(競技の構造、パフォーマンス特性に関する)専門知識(ドイツ語=Fachkompetenz)
社会性(=Sozialkompetenz)
オーガナイズ能力(=Organisationskompetenz)
言語力(=Sprachkompetenz)
統制、方向付け、サポート力(=Vermittlungskompetenz)

といわれている。

更に、上記の各能力において必要とされている項目例としては


【専門知識】
・パフォーマンスの構造的知識とスポーツ科学やトレーニング科学の知識
・トレーニングのプランニングとトレーニング構築の能力
・チームを築き上げ、チームを正しい方向へ導くためのコーチング
・技術的、戦術的な分析能力

【社会性】
・調和力と集団能力
・人間的な成長を促すこと
・ストレスマネジメント
・コミュニケーション能力
・責任感

【オーガナイズ能力】
・トレーニングのシステマティックな運営
・ピリオダイゼーション
・プラン構築(トレーニングマッチ、合宿など)

【言語力】
・適切な言語化(言語学的能力)
・正確に伝える能力
・論理的思考の発話への落とし込み

【統制、方向付け、サポート力】
・学習内容の構造化
・目標設定
・モチベーションのコントロール
・タレント育成(適切な援助)


などが挙げられる。

指導者として活動するにあたり、競技に対する専門知識が必要であるのは当然だが、最近では「社会性」の能力の重要性が注目されている。



監督に必要な社会性

一般的概念として社会性(または社会的能力:Sozialkompetenz=Social competence)は『社会への適応に必要な、社会的、情緒的、認知的、行動的なスキルによって構成される。ある状況に関して他者の視点に立ち,過去の経験から学び,その学びを社会的相互作用の変化に適用する能力を有すること。また、他者との関係性を築くための基盤であり、自己の言動に対する認識を深めるための基盤でもある』(一部Wikipediaより引用)と規定されている。

サッカーのような団体スポーツにおいて、監督のそれはベクトルが個人・グループ・チームに向けられるものである。
密なコミュニケーションを取り、様々なパーソナリティに理解を示して相互的な信頼関係の構築をしつつ、押し付けすぎても裁量の自由度を与え過ぎてもいけない。
集団やグループに発生し得る問題点のマネジメントや解決、リスクファクターの除去といったような組織のインターナルな点に注意を向けながらも、自己観察を通して自身を客観視し、チームを映す鏡として模範的な存在であるということを組織内だけではなく外部に対しても示す必要性がある。


そんなことが重要なのは何となく分かるが、何故今更取り上げるのか。

こんなインタビューを目にした。


CLベスト8進出クラブのドイツ人監督について

ドイツ国営放送内の「Sportschau」でのインタビューでドイツサッカー連盟のスポーツ部門責任者とアカデミー責任者が、20/21シーズンのチャンピオンズリーグでベスト8に残ったクラブを率いるドイツ人監督であるハンジ・フリック(バイエルン・ミュンヘン監督)やユルゲン・クロップ(リバプール監督)らについて以下のように語っていた。

「フリックはチームや周囲の人間に対して家族のような雰囲気を作り出せるし、そこから信頼感を生み出している。(チームに対して)誰かが助けを必要としているときにはいつだって手を差し伸べるだろう。クロップはものすごい情熱と野心を併せ持っているが、落ち着きがありユーモアを忘れない」

彼ら以外にもトーマス・トゥヘル(チェルシー監督)やエディン・テルジッチ(ドルトムント監督)を含んだ4人の監督について「皆、サッカーの専門知識以外にも信頼感、共感性、人間性が非常に優れている」と答えている。


このインタビューではドイツの指導者養成が今後、カリキュラムの変更をしていく予定だという点に触れているが、近年は戦術面などに重心を置きすぎていたことを反省し、「社会性」に優れた指導者を輩出していくために舵を切っていくということについても語っていた。

最新のテクノロジー利用やデータ、戦術面の分析に長けている指導者を「ラップトップ(=パソコン)監督」と皮肉を込めて呼称されることがあるが、その部分を変えていくのも含めて、より人間や人間性といった点にフォーカスを当てていくのだという。人と人とが接する指導者という仕事において、監督やコーチとしての能力を最大限発揮できるように人間としての内面的な能力を養っていくのが狙いだろう。



監督のことを英語ではmanagerとも表記する。その言葉通り人的-、グループ-、チーム-、組織マネジメント及びその他の様々な面のマネジメントを正しく行えることが指導者として次のレベルに到達するために必要な要素になっているんだと改めて感じた。

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