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青き名門の凋落

ドイツの名門シャルケの2部リーグへの降格が決まった。


ブンデスリーガ第30節、ビーレフェルトのホームに乗り込んだシャルケは0-1で敗れ、クラブの歴史の中で4度目となる降格の憂き目にあうことになった。
財政危機やスタッフと選手の内部衝突などのような別の問題も散見されたが、それを差し引いてもあまりにもお粗末な印象を受ける。

CLやELなどのヨーロッパのカップ戦常連クラブだった頃の面影なくボロボロの状態で降格となったシャルケだが、今シーズンからではなく昨シーズンの後期からずっと不振は続いていた。


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まず昨シーズンを見ていくと、前期(表の左)は8勝6分3敗の勝ち点30で5位。この時点ではCL圏内の4位ドルトムントと勝ち点で並んでおり、悪くない位置につけていたと思う。

ところが後期(表の右)は冬季中断明け初戦のボルシアMGに勝利して以降は勝ち星ゼロ。後期日程だけの順位表を見ると1勝6分10敗の勝ち点わずかに9であり、断トツの最下位で降格したパダーボーンの後期日程の勝ち点8に次ぐ2番目に悪い成績だった。
ちなみに後期日程における「得失点差-28」は昨季のリーグワースト。17試合で挙げた得点は勝ち点と同じたったの9点という有り様。

前期日程で得ていた貯金があったため残留争いという感じは無かったが、調子の上がる気配はあの頃からほぼ皆無だった。


16戦未勝利と低調なままフィニッシュし、かつ改善の兆しが無さそうにも関わらず、クラブは当時の監督であるヴァーグナーの20/21シーズンの続投を決める。
確かに19/20シーズンの前期はある程度結果を出せていたが、17/18シーズンでリーグ2位の成績を収めてCL出場権を獲得し、そこでも決勝トーナメント進出を果たすなど、目に見える結果としてはヴァーグナーよりは上だったと言っていいであろうテデスコを切っておきながら(18/19のリーグ戦の成績は確かに悪かったし、テデスコ解任は別に不思議ではなかった)、それと大差ない悲惨な結果しか後期は残していなかったヴァーグナーをなぜ新シーズンも続投させるのかは正直謎だった。


迎えた20/21シーズン開幕戦はバイエルン・ミュンヘン相手に0-8(これはブンデスリーガの歴史の中で開幕ゲームの最多失点記録)で惨敗。続くブレーメン戦も1-3で落とし、2連敗したことで結局ヴァーグナーは解任された。後期あんなにダメだったのに続投させるのだから相当信頼関係があるんだろうなと思っていたのに、結局切るんかい。こんなにさっさと見切りつけられるなら昨シーズン終了時点で解任しろよと思ったものだ。


その後もバウム、ステフェンス(後任決定までの暫定監督)、グロス、グラモジスと次々と指揮官が変わっていった。

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迷走を続けるチームは攻守ともに崩壊。30節終了時点で2勝7分21敗、得点18、失点76というひどい成績だ。
この失点76という数字は既にブンデスリーガ過去10年で最多失点を喫したクラブの年間総失点数を超えてしまっている(11/12シーズンのケルン、13/14シーズンのHSV、15/16シーズンのシュツットガルトはそれぞれシーズンの総失点数が75)。
ブンデスリーガは95/96シーズンから勝ち点3の制度が導入されたらしいが、それ以降では04/05シーズンのフライブルクの年間勝ち点18と得失点差-45がワースト記録とのこと。残り4試合で現勝ち点が13、得失点差が-58のシャルケは2つのワースト記録を更新してしまう可能性もある


列挙した数字だけで見ると弱小クラブのようにしか見えないが、シャルケは2部にいていいクラブではない。ゲルゼンキルヒェンという小さな街に似つかわしくないくらいの大きな規模のクラブである。
かつて内田篤人さんが所属していて日本人にも馴染みがあるし、今でも現地のシャルケファンにとってはレジェンド的存在。
昨シーズンまだドイツ国内がロックダウンになる前にシャルケvsライプツィヒの試合を現地で観戦したが、0-5で大敗した帰りの電車内で「俺たちにはウチダとファルファンが必要だ!」とか「ウチダは本当にワールドクラスの選手だった!」と叫んでいたファンがいた。退団して数年経ってもなおそういった発言があるのは凄いことだなと思ったし、日本人選手を愛してくれているファンのいるクラブはやっぱり応援したくなる。


復権への道のりがどうなるのかは分からない。
シュツットガルトのようにすぐに1部復帰できるのか、HSVのように時間がかかるのか。
現状ではこれといったタレントはいないが若い選手も多いし、経験を積んで早めに1部に返り咲いてほしいと思う。

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