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【コラム】資本政策と財務戦略は違う?それぞれの目的やポイントを解説!

1. 資本政策と財務戦略の基本的な定義

企業経営者のなかには、資本政策と財務戦略という言葉は知っていても、どこか漠然としていてよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。

資本政策とは、資金調達や資本構成の最適化、利害関係者の利益調整および事業継承対策などの目的で、株式移動・資本の増減・組織再編などの手法を用いる際に必要な活動や手続き全般のことです。

一方、財務戦略とは、企業が経営目標の達成のためにおこなう資金調達や戦略的な資金運用のことです。

従って、企業が自社の利益を出すために資金調達や資金運営などの財務戦略を策定し、その達成のために株式数や資本の増減などの資本政策を策定するという相互関係にあります。

ちなみに、収益性の高い企業にするための施策や商品の利益率などを財務戦略に基づいて作成し、社内外への効果的なアプローチを可能にする文書が事業計画書です。

基本的に、資本政策は、事業計画を達成するために資金調達や株主構成計画を策定するものですので、財務的な内容に限定される財務戦略よりも広義であると定義できます。

1-1. 資本政策とは

資本政策とは、将来的に必要となるお金を事前に見積もり、計画的に資金を確保するための施策のことです。

資金が不足する度におこなう資金調達にくらべると、資本政策は資金不足のリスクを減らし、経営権の維持や企業価値の向上につながるというメリットがあります。

しかし、株価の変動との関係もあり、一度増資すると、募集株式を引き受けてもらった相手の合意なくして株式を取り戻すことは難しいため、後戻りができません。

資本政策を策定する際は、ミスを起こさないよう入念に立案することが重要であると覚えておきましょう。

1-2. 財務戦略の位置づけ

企業全体の金銭管理や資金調達など、財務上の中長期的な計画も、財務戦略の重要な要素です。

一般に、企業は、取引先との支払いや集金の日程を前後させたり、在庫や仕入れの数を見直したり、人件費や残業代を削減したりして、お金が不足しないよう調整しています。

状況に応じて金融機関からの融資や株式の発行などもおこないますが、投資先を選定して資産運用するなど、どの企業も同じ手法とは限りません。

このことから、財務戦略は、企業がタイミングを見計らって効率的に資金調達をおこない、その資金を管理しながら適切な財務上の運営を可能にするものとして位置づけられます。

2. 資本政策の目的とは?

資本政策の目的は、主に3つです。

1. 資金の調達
2. 持ち株比率の最適化
3. 事業継承や相続の対策

それぞれ順を追って、くわしく説明します。

2-1. 資金の調達

資本政策を目的とする資金調達は、第三者割当増資・株主割当増資・公募増資などの増資が一般的です。

第三者割当増資
新株発行増資とも呼ばれる手法で、特定の第三者を対象に新株式を有償で発行して資金を調達します。

公開会社の場合は、特に有利な発行額でなければ、企業株主からの同意を得られなくても買収できます。

ただし、資本金増資の増税リスクに加えて既存株主の保有割合が下がるため、会社経営の意志決定に影響を与える可能性もあり、注意が必要です。

株主割当増資
既存株主のみを対象に、株式の持ち分に応じて新規株式を発行する手法です。新規株式の引き受けの有無については、株主の判断になります。

自社への割り当てはできないものの、既存株主に買い取ってもらえる可能性が高く、不特定多数の株主に株式が分散されるリスクを回避できます。

注意点は2つで、同じ割合では既存株主に増資できないことと、大きな資金調達ができないことです。

公募増資
現在の株主や特定の第三者に限定せず、一般に不特定多数の投資家を対象として株式を新たに発行する手法です。価格は、既存株主の利益を損なわないよう時価に近い水準に配慮されます。

株主層を拡大し、株式の流通量を増加できる一方、低調な場合は株式がさらに下落するリスクがあります。

特に、スタートアップ企業の場合は、起業直後に複数回の増資をおこなうケースも少なくないでしょう。

資本政策の一環として増資する場合は、事前に増資ごとの金額や株式発行数をしっかり計画し、適切におこなうことが重要です。

2-2. 持ち株比率の最適化

資本政策を策定する際は、持ち株比率の最適化も考慮すべきポイントです。

増資の前後で各株主の持ち株比率を適切にするためには、株主総会の普通決議と特別決議に必要な決議権比率を押さえておかなければなりません。

普通決議
決議権を行使できる株主の出席者の過半数を定足数とし、出席した株主の決議権の過半数によって議決する手法です。

なお、普通決議の定足数については定款で別段の定めを設定でき、定足数を完全に排除することもできます。

特別決議
重要な意志決定に用いられる加重された要件によって議決する手法です。決議権を行使できる株主の過半数を定足数とし、出席した株主の所有する3分の2以上の決議権によって議決します。

定款で別段の定めを用いた要件の変更は可能ですが、3分の2以上の決議権にのみ設定でき、3分の1を下回る割合の定足数には変更できません。

また、特例有限会社の株主総会の場合は、特別決議の要件は総株主の半数以上で、当該株主の有する決議権の4分の3以上とされています。定款で総株主の半数以上を上回る割合を定めた場合は、その割合以上の変更が可能です。

資本政策は、会社を設立した時の創業者の持ち株比率や株主構成によって、大きく左右されます。

特に、起業した直後の企業の場合は、どんな増資をどの程度どのようにおこなうかの事前計画が不可欠です。

持ち株比率の高さに比例して意志決定の影響力も強くなるため、下がりすぎないようバランスを想定しておきましょう。

2-3. 事業承継や相続の対策

いわゆるオーナー経営者として創業者が社長に就任している中小企業などの場合は、社長のカリスマ性によって経営が成り立っているケースも珍しくありません。

このような場合は、オーナー経営者の引退後に自社の業務を存続できず、会社存続の危機に陥るリスクを伴います。

というのも、現在の株主が死亡した時点で相続によって株式が分散する可能性があり、新たな株主が後継者の方針に賛同するとは限らないからです。

そこで、最も重要な財産である自社株の外部流出を防止するため、事業継承や相続の対策を講ずる必要があります。

後継者以外の人が、ストックオプションや新株引受権などの新株予約権を行使した場合も、外部に株式が流出する可能性があり、持株の割合は変動しますので注意しましょう。

新株予約権は、原則的に取締役会の決議によって発行できますが、譲渡制限株式や第三者に有利な価格で発行する場合は、株主総会の特別会議による決議が必要です。

また、オーナー経営者の場合は、自己の個人資産を会社に貸し付けて運転資金を捻出している企業も少なくないでしょう。

その場合は、会社が第三者割当増資をおこない、それを引き受ける形にすると、オーナー経営者の手元に自社株が増えて支配権を確保できます。

一方、オーナー自身が引き受けられない場合は、後継者が何らかの方法で払込資金を確保できれば、割り当てを受ける形で後継者の持ち株の割合を直接増やすことも可能です。

このような事業財産の継承には、次の4つの方法があります。

1. 法定相続
2. 遺言
3. 贈与
4. 売買

いずれにせよ、事業財産の承継は課税対象となるため、資本政策として自社の実態に適した節税対策の検討も重要です。

3. 財務戦略で留意すべきポイント

財務戦略は、資金運用や資金調達などお金に関する策定であり、無理のないよう立案しなければ意味がありません。

特に留意すべきポイントは、次の3つです。

1. 現在の財務状況を把握する
2. 自社を取り巻く経済環境を注視する
3. 経営陣の移行を確認する

3-1. 現在の財務状況を把握する

1つ目のポイントは、自社の財務状況や改善の必要性などをしっかり把握し、適切な戦略を立てることです。

一般的に、財務状況は、次の5つの手法から多角的に財務分析することで判断できます。

・収益性分析:どの程度の利益を出しているか
・効率性分析:資産を効率的に使っているか
・安全性分析:所有する資産が十分あるか
・生産性分析:付加価値を効率的に生み出しているか
・成長性分析:前期と比較して成長しているか

「ただ儲かっている」という状態で安心するのは早計といえます。さまざまな観点から俯瞰的に見て、自社における財務の現状を正しく判断することが重要です。

3-2. 自社を取り巻く経済環境を注視する

財務戦略を策定する際は、自社を取り巻く経済環境を注視するのも大事なポイントです。

実際、ここ数年のコロナ禍によるパンデミックや長引く物価高騰に加え、業界によっては恒常化している人材・後継者不足、競合他社の存在に頭を抱えている企業も少なくないでしょう。

昨今は、需要の変化の激しい時代ともいわれ、企業の経営状態は時間の流れと共に、さまざまな経済環境によって大きく左右されます。

財務戦略では、設備投資ひとつにしても、このような経済環境に注視しながら状況を客観的に判断し、社内状況にも意識を向けて適切なタイミングを見定めることが重要です。

3-3. 経営陣の意向を確認する

財務戦略を立案する際は、経営陣の意向も確認しましょう。

企業経営は、経営陣が決定するものですが、経営陣も保守的な安定志向や、新しいことにチャレンジしたい刷新的なタイプなどさまざまです。

たとえば、保守的な経営陣の場合は、経済環境を注視したうえで収益の維持に重点を置き、刷新的な場合は、若干のリスクがあってもリターンの多い戦略を盛り込むでしょう。

このように、各企業の経営に関する指針や戦略が同じとは限りません。

そもそも財務戦略は、経営戦略に基づいて立案するものですので、経営陣の意向に沿った内容にすることが重要です。

4. まとめ

企業の成長度合いにもよりますが、資金調達や事業承継対策などの実現化を目的とする資本政策は、その目的や手法も多岐にわたります。

一方、財務戦略が効率よく資金を調達し、財務運営を円滑にするものであるとすれば、どちらが欠けても会社運営はうまくいきません。

自社における資本政策の目的を明確化し、注意すべきポイントをしっかり押さえて財務戦略を立案しましょう。


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