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ママ、お母さん、母、

まだ お昼には早いころ 
おめかしし合って集ってる。
賑やかを越えた話し声と
山盛りの皿たち。 
テーブルの前で立ったまま
慌てるように坊やを揺らす若いママ。
透き通った髪に くっきりメイク、
流行りの服とキラリとピアス。
とってもオシャレでキレイだね。
食い込んだ抱っこ紐と
せわしなく動く 右手の背中のトントントン。
左手には何回目のお代わり?
すり切りの氷にピンクのフレーバーティー。

「2人目は どうするの?」
「旦那さんは何て言ってる?」
「理解あるから助かるよね。」
「サポートもしてくれるし。」
座って話すキミもママ。
今日は身軽でよかったね。
ベージュの髪に 上がった まつ毛、
流行りの服と艶やかリップ。

彼女たちは笑わない。
自由の後の不自由は、
そのあと何になるのかな。
何かのために
何かのために
誰かのためにの ほんの隙間に
無理やり自由を詰め込んで
気が付いたら何になる?

胸に抱いてる貴女の坊やは
眠りそうで眠らない。
食い込んだ抱っこ紐で
首元の襟が乱れてる。
テーブルの料理を立ったまま
頬張りながら また慌てるように坊やと揺れる。

ママ、お母さん、母、
あなたは何になる。


隣の小さなテーブルに 小声で子どもに声をかけ
人目を避けるように 静かに座るひと組の親子。
暗めのコートにグレーのカバン、
黒と茶色が入り組んだ髪と 慌てて束ねた無造作なポニー。
微笑んだ顔に応えるように 子どもは だんだんマイペース。
会話が続く頃には ママの言葉は聞こえない。
小声が 徐々に金切り声に。
血色のない無表情な顔と かさついた指先で
子どもが汚した床を拭く。

周りの人が 振り向くくらい大きな声で
後悔の言葉を繰り返す。
「こんな所へ来るんじゃなかった。」
「あなたと来るのは無理だった。」
と 半鳴き声がこだまする。

かき集めるように荷物をまとめ
後退りする子どもの手を引き
髪振り乱し 慌てて去ってく 貴女もママ。

こんなはずじゃなかったのに。
自由の後の不自由は、
そのあと何になるのかな。
何かのために
何かのために
誰かのためにの 時間を使い
自分のことは置いてけぼり。
気が付いたら何になる?

小走りで歩くうちに
取り乱した自分に気付き
今日は何度目の後悔?

ガラスに映る自分の姿に
大きなため息をつきながらも
ごめんねと言いながら
彼女は我が子を抱きしめる。

ママ、お母さん、母、
あなたは何になる。

ママ、お母さん、母、
あなたはこれから何になる。








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