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「大学生の生活保護認めない」厚労省の前時代的認識

先日、厚労省が生活保護を受けながら大学に進学することができないという方針を継続するという報道がありました。

これは60年前から続く規定であり、今回もそれを踏襲したということです。

60年前の大学進学率

1960年代の大学(短大含む)進学率は25%を切っており、国民の4人のうち3人は大学に進学していません。

この数値が示すように、60年前には高等教育を受けることは明らかに「贅沢」といっても良い状況だったと言えるでしょう。

さすがに1950年代の中卒の集団就職ほどではないにしても、高卒での就職が国民の生活水準の平均であり、大学進学者は一部のエリート層であることがうかがえる結果です。

そうみると、その時代においては確かに生活保護を受けての進学を認めないことに妥当性が十分にあったと言えるでしょう。

2020年代の大学進学率

60年たった現在、2020年の大学進学率は58.6%です。

専門学校を含む高等教育機関への進学率は83.5%となっており、進学をする人が大多数を占め、進学をしない選択は5人に1人以下となっています。

これは明らかに社会における大学や高等教育へ進学する意味が変化したことを示しています。

高卒での就職はどちらかと言えば少数派、例外になりつつあるということです。

にもかかわらず、厚労省は認めないとしているのです。

その理由に関して以下のように記事にあります。

厚労省は一般世帯でも高校卒業後に就職する人や自分で学費を稼ぎながら大学に通う人もいて、大学進学を「最低生活保障の対象と認めるのは困難」としている。

確かにそうした苦学生がいることは事実です。しかし、「自分で学費を稼ぎながら大学に通う人」という特殊な例を根拠に上げて排除するのは無理筋ではないでしょうか。

大学進学率の国際比較

では国際的な大学進学率を他国と比較した場合、日本は相対的に高く「贅沢」であるといえるでしょうか。

出典:産業競争力会議 発表資料「人材力強化のための教育戦略」

これを見る限りでは、先進国の中で大学進学率が決して高いとは言えないようです。

むしろ、他国と比較した場合もっと大学進学率を上げ、多くの国民に高等教育を受ける機会を増やし、国民全体の知のベースを引き上げることが必要であるとさえ言えます。

欧州では学費無料の国がある

ちなみに、欧州では大学の学費は無料であるケースが多いようです。これは高等教育までが権利として認識されていることが理由のようです。

アメリカの場合、学費は極端に高額ですがその分奨学金制度や免除制度などが充実していることで低所得者への配慮を行っているようです。

学生への補助の充実は福祉ではなく、投資

大学生に生活保護を認めることが絶対に必要であるとは思いません。

本人のみの世帯であれば、奨学金とアルバイトを駆使すれば十分に食費や雑費などを賄うことは可能だからです。

大学を通しての学費の補助や免除であれば、不正受給などを防ぐことも可能でしょう。

また、家賃なども大学の寮や指定住居に対しての補助とすれば同様でしょう。

こうした補助や支援は貧困層や学生に対する福祉政策であると考えている人が多いようです。

しかし、これは国民の知的レベルを引き上げ、経済力や国力を高めるための投資であるという認識へと変える必要が補助をする側だけでなく、受ける側にも必要なのではないでしょうか。

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