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少子化対策に教育予算の増額で効果はあるのか、東京一極集中の負の側面


教育予算の増額

今年も国会は予算委員会の時期に入り、次年度の国家予算について喧々諤々の議論がなされています。

毎年ですがこの時期になると教育予算の増額が話題になるのが教育業界の常です。

そしてこの教育予算の増額の理由として上げられているのが少子化対策です。

要は少子化対策の根本的な治療は子供を増やすこと、子育ての金銭的な負担が下がれば子供は増えるだろう、という考えなのでしょう。

一見するとこのロジックは十分に妥当なもののように見えます。

しかし実際には日本における夫婦一組あたりの子供の数はそこまで減少しておらず、実は婚姻数の減少が現在の少子化の主原因であると言われています。

教育費補助で子供を産む人は少ない

この内容に関しては1年前に私自身も記事に書きました。

実際のところ、教育費補助で子供を産むことを決断したり、あるいはもう一子増やすことを決める夫婦はどれぐらいいるでしょうか。

私の知る限りのおいて、教育費が不安だから結婚しない、子供を作らないというケースは見たことがありません。

むしろ教育費に不安がありそうな経済状況の家庭ほど子だくさんのイメージすらあります。

逆に子供を作らない選択、DINKs(Double Income No Kids)の選択をする人の大半がその理由の中に入れるキーワードは「時間」や「自由」という言葉です。
(そして結婚をしない人にもその傾向が見られます)

要は子供ができることで失う自由な時間、経済的ゆとり、目指すキャリア、気ままなライフスタイルを捨てることができない、生活を変えたくないがゆえに子供を作らない人が多い、ということです。

そしてその原因こそが過度に一人世帯の快適性に特化した都市、東京とそこへの一極集中ではないかと私は考えています。

東京の出生率

令和4年の全国の合計特殊出生率の平均は1.26となっています。この中で最も低いのが東京都の1.04です。

合計特殊出生率(ごうけいとくしゅしゅっしょうりつ、英: Total fertility rate、略称: TFR)とは、人口統計上の指標で、15~49歳までの既婚・未婚問わない全女性の年齢別出生率を合計したもので、女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の出生率」を意味する。年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの子供の人数に相当する。

Wikipedia

これと比べて沖縄の出生率は1.70となっています。また、九州各県は比較的高い数値を維持しています。

こうしたデータの読み方は難しく複数のパラメータに依存するため、一概に何が原因かと分析することは困難です。

ただ、所得が最も高い東京都が最も出生率が低いという事実こそが教育費の補助が出生率上昇に寄与しないことを示唆しているように感じます。

少なくとも教育費がいくら高いとはいえ、東京と九州の収入格差を考えれば東京の共働き家庭は九州の同条件の家庭と比較して1.5倍近い収入があるでしょう。

教育費が高いといっても、小中高を公立に通わせれば東京と地方ではほとんど金額の差はありません。また、一部の層において教育が課金ゲーム化し過熱していますが、マス層においては全く異なる状況です。

東京でさえ、8割は中学受験をしていないのです。

結局は東京で子供を産む場合の住宅事情、互いの両親から離れた環境でサポートが無い、といった条件面での不安こそが少子化の原因となっているのではないでしょうか。

それに加えて一人世帯と家族世帯向けの家賃格差や、自動車を使用しない生活、繁華街や歓楽街の充実など独身者が家庭を持つ必要が無い理由、あるいは晩婚傾向となる理由が地方と比較してはるかに多いのです。

子供が生まれない、結婚する人が少ないという問題は、東京という世界有数の超過密都市が持つ特徴の発露そのものでしょう。

自分のこととして

私は九州に生まれ育ち、そのまま進学、就職をしたため比較をするのは難しいのですが、自分が首都圏に出て生活をしていたら結婚をするかどうかはかなり微妙です。

社交的なタイプではない私が外に出て結婚相手を探すことがなかなかに難しいでしょうし、そもそも趣味や遊興費でそうしたことを考えにくいと感じます。

まして子供をあの環境で育てるのは…正直厳しいでしょう。

東京に行った知人や首都圏に進学した生徒の話を聞くたびにそう感じます。

もちろん仮定の話でしかないため、あくまでも個人の感想でしかありませんが。

とはいえ、東京のような一極集中した都市と過度に一人世帯に特化した快適で自由な街において、配偶者や子供という「枷」を自らにはめるにはよほど大きなきっかけが必要なのではないかと感じてしまうのです。

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